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撃攘の盾… 弐拾



イージス艦「はぐろ」に迫るミサイル


国後から飛来したウルオロシアナ軍、長距離誘導ミサイル13機をイージス艦「まや」護衛艦「しらぬい」が全て迎撃した。

ウルオロシアナ、サリハンスークからの長距離誘導ミサイル10機は、イージス艦隊「はぐろ」「きりさめ」「さみだれ」の迎撃ミサイルと「やはぎ」「なとり」の短距離防空ミサイルにより6機を迎撃。残り4機がイージス艦「はぐろ」へ襲いかかっていった。


『敵ミサイル、距離5000!』

「はぐろ」CIC 内に防空レーダー監視班の声が響いた。

『全艦チャフ発射! 機関最大戦速ヨーソロー! 機関砲、 主砲迎撃ち方め!』

『敵ミサイル距離3000!』

『全艦チャフ発射、面舵いっぱい!』

「きりさめ」「さみだれ」「やはぎ」「なとり」の機関砲と主砲がウルオロシアナ軍長距離誘導ミサイル3機を撃墜した。

『敵ミサイル1距離1000!』

『総員、衝撃に備え!』

イージス艦「はぐろ」艦長は数秒後に襲いかかるであろう目の前に迫った敵ミサイルに対して、最後まで諦めることは無かったが万が一の為の総員へ衝撃に備えるよう指示を出した。

全艦機関全速のまま、船体を大きく左に傾けていた。

艦内では各隊員が硬い柱等に掴まり身を固くして成り行きを見守っていた。

数秒後、船体を揺さぶる大きな衝撃波の後に爆発音が響いた。

爆発音と衝撃波が立て続けに船体を襲った。

しかし、船体は面舵のまま機関全速で大きく傾いてはいたが、それ以上の衝撃は無かった。

『千歳202飛行隊真田よりイージス艦隊へ。敵ミサイル撃墜。引き続きイージス艦隊護衛任務に入る』

イージス艦隊艦内では安堵の息が漏れていた。

『イージス艦「はぐろ」より千歳202飛行隊へ。ミサイル撃墜了解した。艦隊護衛に感謝する!』

「はぐろ」艦長の感謝の言葉が千歳202飛行隊の士気を一層高めるのだった。

士気向上、意を決する飛行隊


『早期警戒幾より紋別飛行隊へ。国後から敵戦闘機多数離陸確認。国後上空で編隊を組んでいる模様、これまでに無い大編隊となる可能性あり。各飛行隊は警戒を厳にされたし』

『紋別飛行隊長、小林了解した』

小林は、そのまま無線を各飛行隊へ繋がる無線に切り替えた。

『紋別飛行隊、小林より各飛行隊全機へ。
これより総力を挙げて敵を迎え撃つ。
各飛行隊の全機帰還を信じている。
以上』

『千歳202飛行隊了解』

『千歳203飛行隊了解した』

『紋別302飛行隊了解。この戦闘で終わりにしたくなるように敵の戦意を喪失させてやろうぜ』

『202飛行隊伊上だ。加藤、俺もそのつもりだ。この戦闘で終わりにしてやろうぜ』

『俺もそのつもりだ加藤、202飛行隊の士気は高いぜ』

岡部二等空佐が割って入った。

『ぶちかまそうぜ!』

千歳202飛行隊の真田も気合いを入れた。

『おう、その意気だ!伊上、岡部、真田 ! 戦闘終えたら後で基地で会おうぜ』

『おう、必ず会おう』

『あぁ、必ず会おうぜ』

『早く片付けて眠りてぇ』

『ほんとだ、、、』

それぞれのパイロットに疲れは見えていたが、各幾パイロットの緊張感の中で、闘志の士気が一層高まった。

『敵戦闘機レーダー捕捉。紋別飛行隊、これより戦闘に突入する』



『第3護衛艦隊、イージス艦「まや」「しらぬい」2分後に戦闘域へ突入する。
各編隊戦闘機、イージス艦隊「はぐろ」「きりさめ」「さみだれ」「ひゅうが」「やはぎ」「なとり」全艦へ。本艦「まや」の防空戦闘システムへのデータリンクを開始する』

戦闘機群、イージス艦隊全艦の兵器をイージス艦「はぐろ」の姉妹艦であるイージス艦「まや」の防空システムへとリンクさせた。

衛星と早期警戒幾の情報共有を開始した各艦艇、戦闘機群の兵器はイージス艦「まや」に託された。

各航空機のミサイル割り当てと202飛行隊 F 15のアウトレンジ空対空ミサイルの各幾ターゲットを「まや」の防空システムが瞬時に割り当てた。

『各飛行隊は日本領空に入る敵戦闘機へ警告の後、更に領空に入る航空機に対して威嚇射撃は無効だ。躊躇ないミサイル攻撃による撃墜も已む無し。尚、「いつくしま」空母艦隊より、間も無く四島の国後と択捉の飛行場攻撃を行う。敵機分散も少なくなるはずだ。皆の武運を祈る』

稚内基地司令、神田一成から各戦闘機編隊へ指示が出された。

その間に、国後、択捉、サリハンスークからウルオロシアナ軍戦闘機が編隊を組みながら、次々と日本領空に侵入してきた。

紋別飛行隊隊長である小林が領空侵犯をしているウルオロシアナ軍戦闘機へ警告を始めた。

そのすぐ後に、敵戦闘機から機関砲が紋別飛行隊隊長の小林幾へと襲いかかった。

『敵戦闘機機関砲発砲、紋別飛行隊、これより戦闘に突入する。敵機は我々より遥かに多いが訓練を思い出して冷静な対処を各幾に望む。皆の無事を祈る、以上!』

小林は僚機と共にサリハンスークから飛来した敵戦闘機群へ飛び込んでいった。

『202飛行隊、敵機攻撃体型に入っている! アウトレンジステルス空対空ミサイル、発射体制完了』

『イージス艦「まや」から202飛行隊、了解。射程に入り次第何時でも発射よし!』

『202飛行隊了解! 202飛行隊F15全幾へ、30秒後にアウトレンジ空対空ミサイルを全基発射する。
ミサイル発射後はイージス艦に任せて稚内空港基地へ戻り兵装を短距離ミサイルに換えて再び出撃してくれ。
俺達20幾と入れ換えに本土からの応援機十五幾のF2が向かう!
ミサイル発射10秒前、…3、2、1発射』

20幾のF15から40機のミサイルが発射された。

それぞれのF15はミサイル発射後に、ふわりと機体が浮き上がった。

身軽になったF15のジェットエンジンは排気口からアフターバーナーを吹き出し音速を越えるスピードで稚内空港基地へと向かうのだった。

F15の射ち出したアウトレンジ空対空ミサイルは、イージス艦「まや」の防空システムと衛星、早期警戒機による三点からなら正確な敵機位置情報でにより誘導されて、ある程度の距離まで近付くとミサイル本体のレーダーが敵機を追いかけていくもので射ちっぱなし高性能誘導ミサイルだった。

この誘導ミサイルにより敵機大編隊は、あっという間に散り散りに散開。ステルスミサイルの標的以外は、航空自衛隊の短距離空対空ミサイルに追いかけ回されていた。

この攻撃により、敵機16幾の撃墜に成功した。

散り散りになった敵戦闘機を202飛行隊、203飛行隊、紋別飛行隊、302飛行隊が暗い洋上でドッグファイトに突入した。

二日目の夜の空戦はウルオロシアナ、航空自衛隊、両パイロットの神経を磨り減らしていった。

航空自衛隊戦闘機の幾数を遥かに上回るウルオロシアナ軍戦闘機は圧倒的な数による入れ替わりで途切れることがなかった。

だが、幾数で圧倒されながらも、イージス艦を持つ自衛隊は正確な攻撃で対等に戦っていた。

それでも夜間の空戦は神経がすり減り、計器を見ないと機体の上下感覚が分からなくなるものもいた。

それは敵戦闘機パイロットも同様で、空も海も暗い戦闘は強靭な精神力と恐怖を押し退ける自分との戦いでもあった。

航空自衛隊のF2 二幾、 F35 一機、 F15 二 機が撃墜されていた。

撃墜されたパイロットの脱出を確認できるものもいなかった。

ウルオロシアナ軍戦闘機は既に40幾の撃墜が確認されていた。

ウルオロシアナ軍は、海上自衛隊のイージス艦一隻の盾を破ることができないまま、航空機とパイロットを多数失っていた。

この自衛隊の完璧と言ってよいほどの防空戦力は米空母打撃群も目を見張るほどの見事な防衛だった。

イージス艦の持てる機能を全て使いこなしている自衛隊の戦闘に見入ってしまうほどだった。

自衛隊、国後島、択捉島飛行場破壊

航空母艦「いつくしま」航空母艦主力艦隊マルチ攻撃型護衛艦、「やましろ」「むつ」「かねしろ」「ふそう」4艦より巡航ミサイルトマホークを国後と択捉に向け発射準備を終えた。

イージス艦「いせ」と衛星、早期警戒機の三点からピンポイントで国後と択捉の飛行場をターゲットに発射準備を終えた。

『やましろ、巡航ミサイル準備よし!ターゲット択捉飛行場確認』

『むつ、ミサイル準備よし!ターゲット択捉飛行場確認』

『かねしろ、ミサイル準備よし!ターゲット国後飛行場確認』

『ふそう、ミサイル準備よし!ターゲット国後飛行場確認!』

『いせ  より各艦へ。準備確認よし!これより一斉攻撃初め !』

イージス艦「いせ」からの合図により、各艦から艦対地ミサイル4機が発射された。

十秒後、各艦より再び4機の艦対地ミサイルが発射された。

合計32機の巡航ミサイルは、国後と択捉に分かれ飛行を続けた。 
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数分後、国後飛行場に到達したミサイルは、飛行場滑走路に16個の穴を開けた。

続けて択捉島の飛行場滑走路に全弾命中。択捉飛行場滑走路にキレイに端から端までキレイに抉った。

択捉飛行場では離陸待ちの航空機十数機が破壊された。

ウルオロシアナは、まさか日本が北方四島に攻撃をするとは思ってもいなかったため油断していた。

国後島、択捉島の飛行場は航空機の火災と、いくつもの滑走路の穴で使えなくなった。

そしてジェットエンジンの爆音とフレアによるミサイルの爆発音が炸裂している海上の下では、静かな戦闘が繰り広げられようとしていた。

3つの大統領暗殺計画


また、国連では日本とウルオロシアナ両国に停戦を絶えず呼びかけていた。

ウルオロシアナ大統領Sロマーノフも日本も、既に簡単には停戦できる状態ではなかった。

日本総理大臣 である木嶋総理は、聞き分けの無いウルオロシアナに対話を呼びかけるも、既に核ミサイルを使ったウルオロシアナは無法国家に成り下がり、各国から非難の嵐だが、ロマーノフは北海道奪還に自分の正当性を訴えていた。
 

そしてウルオロシアナ本土でも、Sロマーノフ暗殺のために反政府勢力と、元副大統領が翌日の大統領演説前を実行時間として準備を整えつつある中で、更なる人物が明日の大統領演説にSロマーノフ大統領の暗殺を企てていた。

大統領暗殺を計画している者の共通しているところは、全ては自国ウルオロシアナの為、という自国愛を強く持っていた。

前回のウグリャーノ軍事進行で、世界から悪者にされ制裁を受けて経済がガタガタに崩れ去った自国を嘆き、前回の政党から何も学んでいない今の大統領を消すことで自国を変えようとしているのであった。



続く…

表紙画photoAC

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