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仁と義 8章 仁侠短編小説抗争編 3(シリアスコメディ)

ラン、メッチ、ナッチ、ディップの四人は、坂下のタクシーを降りて膝織一家の倉庫前の物陰に隠れた。

それほど明るくない街灯で、四人は辺りを見回した。

入り口の横に電柱があり、電柱を上れば倉庫の上の窓から中が覗けそうだった。

『あの電柱上れば中見れそうだね』

ティップが言った。

『よし、じゃあ俺が登るよ』

『ヒィッ』
『うぉおぉぉ』
『誰っ?』
『んあっ?』

すぐ後ろに坂下がいた。

『何してんの坂下さん』
『車で待っててって言ったじゃん』

ランとティップが小声で言った。

『いや、俺も中にいるかもしれない二人が心配だからさ。俺、電柱に登って見てみるよ』

坂下は、そういうと倉庫のシャッターに横に脚立が立て掛けてあるのを見つけて電柱に立て掛けた。

『ちょっと誰か脚立押さえてて』

『オッケー』

ティップが脚立を押さえた。

電柱を登る坂下。

倉庫内の明かり取りであろう高い位置にある窓から中を覗く坂下の目に上半身裸のミオが見えた。
ミオから少し離れたところに背中を血に染めた男が一人俯せに倒れているのがわかった。

坂下は電柱を降り、脚立を使わず静かに飛び降りた。

『ミオがいた。上半身裸だった。男も一人倒れてる。背中が血だらけだった』

レインボー四人は自分の体の毛が逆立つのを覚えた。

『すぐ飛び込もう』

そう言って動こうとしたメッチを坂下が止めた。

『メッチ待った。俺がそこの車でシャッターぶち破るからさ。そこの車鍵付いたまんまなんだよ』

『坂下さん、そんなことして大丈夫なの?』

ティップが心配そうに坂下を見た。

『任せろ。俺、タクシー始める前はスタントの仕事してたんだよ。こんなシャッターぶち破るのなんか問題なし』

『おぉー凄い、なんか坂下さんがトム・クルーズに見えてきた』

そう言って、ナッチが目をキラキラさせた。

『じゃ、ちょっと待って。頭に連絡入れとく』

ランがそう言って少し倉庫から離れて電話をかけた。

『もしもし、レインボーのランです。頭お願いします』

『おぅ、新島だ』

『あっ、頭、寝てたとこすみません』

『気にすんな。それよりミオと立石さん見つかったか?』

『はい、膝織のシマの中の○○工業団地の一画です。膝織の倉庫の中にいます。まだ中に何人いるか分かりませんがこれから突入します』

『まてまてラン、焦るな。俺達が行くまで見張ってろ』

『いや、頭。ミオが裸にされてるのと男が独り倒れてるみたいで、背中が血だらけなんです。もしかしたら立石さんかもしれないのですぐに助けに入ります』

『そうか、、わかった。すぐに皆連れて行くからな』

『はい。それから倉庫の場所は工業団地に入って一つ目の路地を右に道なりに進んで左側に白いワゴン車が止まっているところです』

『うん、わかった。それから……』

『はい、何ですか?』

『…無茶すんなよ』

『は、はい』

新島の妙な溜めと男らしい頼りがいのある声に、ランは何故か頬が熱くなった。

「完全に女に目覚めちゃったかな…最近、頭(かしら)を見るとドキドキすんだよな…あの溜めは何だ…」

ぶつぶつ言いながらランは皆の所に戻った。

『頭が分家の皆とすぐに来てくれるって。ミオと立石さん助けよう』

『オッケー』
『いっちょ暴れたるかい』
『あたしスタンガンでぶっ倒すからさ』

ナッチとメッチが言ったあとのランの顔を見ていたティップが、不思議そうにランの顔をじぃ〜〜っと見ていた。

『どしたのティップ?』

メッチが呟いた。

『うん、ランの顔が何かやけに赤く見えるのは気のせい?』

『えっ?』

とまどうラン。

『あー、わかった。今頭に電話したからだ。最近ランの頭を見る目と態度が女っぽく変わってきたもんね』

『なるほど、やっぱそういうことか。アタシも最近思ってた。何かラン、女っぽく変わってきたなーって思ってたけど、頭が原因なのね』

ティップがランの頬を指でツンツンした。

『違うよー、これから一暴れだから気分が高揚してるんだよ』

『わかったわかった、そういうことにしといてあげるよ』

そう言ってナッチがランの頬をツンツンした。

『だから違うってば』

『はいはい、ムキに否定しないの、ランちゃん』

四人のやり取りに呆然とする坂下だった。


続く。。。 


illust ac


関東頭鬼組   組長 頭鬼洋次郎(48)
       
        若頭      阿久津龍一(38)

        舎弟頭     新島浩二(37)

        相談役     相田真二(38)


 構成員    荒巻和幸   通称カズ(23)
        三澤謙二   通称ケン(25)
        須藤弘道   通称ヒロ(23)
        小林幸弘   通称ユキ(23)
        


パブスナック レインボー組メンバー💕

メッチ 木ノ内健(20)(きのうちたけし)
(めんちきることが多い。何でも武器にする) 

ナッチ  中沢義男(20)(なかざわよしお)
(よくナイフをちらつかせる) 

ティップ 榊枝真二(20)(さかきえだしんじ)
(ダーツの矢を数本いつも太股に隠している)

ミオ 安桜芙美乃(20)(あさくらふみお)     
(アイスピックを両足太股に6本常時備えている)

ラン 一之江将一(20)(いちのえまさかず)
(通販で買った伸縮警棒とスタンガンを持つ)

タクシードライバー
坂下一雄(さかしたかずお)


石頭一家の相談役

相談役  立石尚樹(たていしなおき) (ミオの恋人)


膝織一家 

代表 膝織忠義(ひざおりただよし)

若頭 安曇孝信(あずみたかのぶ)

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