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仁と義 14章 仁侠短編小説抗争編 9(シリアスコメディ)



膝織刺客、マヌケな5人組

パブスナックレインボーに、膝織一家から最初の刺客がきた。

若くチャラい男達5人のうちの一人が、ランの尻を触り店で一番高い酒を持ってこい、とランに注文した。

一番安いドンペリを50000円、チャージ料一人30000。私達のドリンク代は一杯7000と、ランはカウンター内に居るメッチに男達への特別料金を設定を伝えた。

ティップは、5人の相手を始めた。

『皆さん地元の方ですか?』

『関係ねぇだろ、そんなこと。地元だったら何だよ?何か気持ちいいことしてくれんのか?』

『勿論んです。初めてのお客さんなら気持ちよく飲んでもらいたいですからね。それにお兄さんたちお若いですから話が合いそうって思ったので…』

『ティップってどういうこと?変な名前だな?何でそんな名前なの?何か意味あんの?外国人?てか幾つよお前』

ティップという名

赤い髪の男がティップの名刺を指でつまみ、ティップを見ながら名刺をヒラヒラと扇ぐ仕草を見せた。

『お兄さん気になる?ソフトとハードがあって硬さや長さ、粘り強さとサイズも私にジャストフィットじゃないと満足できないの。何だと思います?』

ティップは右手の親指に、人差し指と中指を付けて丸を作りダーツの矢を持つ仕草をして、気持ち上下に動かした。

『やっべ、俺もちょっと気になるぞ?その手の動きが…』

スキンヘッドの男もティップの話しに食い付いた。

『お待たせしました。当店で一番高いお酒用意しました』

ランが氷とグラス、お酒とお通しをボックス席に運んで、グラスに氷を入れてお酒を注いだ。

ランとティップは男達の前にグラスを置いた。

『アタシたちもジュース頂いていいですか?』

『構わねぇよ。ジャンジャン飲めや。金ならここにたっぷりあるからよ。俺、酒よりティップが欲しいんだけど。硬くて長くておまけに太くて粘り強いぜ』

赤い髪の男とスキンヘッドの男が、中腰で腰を動かしはしゃぎだした。

『やらしい腰の動きだねぇお兄さん。ボトル空けてくれたら硬くて太くて長いので試してみる?その前に、みんなで乾杯しよ。ジュースいただきます。初めてのお客さんにかんぱーい』

ランとティップが、ジュースのグラスを持ち上げると男たちもグラスを持ち上げ乾杯をした。

男たちは一気にグラスの酒を飲み干した。

『おー、高い酒はやっぱ美味いなー。これ何て酒?』

スキンヘッドの男がグラスの酒を一気飲みしてランに酒の名前を聞いた。

『ドン・ペリニヨンです。当店で一番高いお酒です。ドンペリ飲むなんてイカしてますね。お兄さん、お仕事儲かってるんですね。これからもパブスナックレインボーをご贔屓に』

そう言って、ランの尻を触ったテーブルに財布を投げ出した男の横に座り、分厚く膨らんだ財布をわざと物欲しげに見つめた。

『まぁな、そこそこ金回りは良い方かな』

財布を投げ出した男は、若いランに自慢するように言って鼻を膨らませた。

『すごいですねー。ドンペリたくさん飲んでも大丈夫ですね』

『おぅ、ドンペリだか○ンパリだか知らねぇーけどじゃんじゃん持ってこい』

既に二杯目一気飲みして、ランの言葉に若さゆえの「俺スゲー」をひけらかす男。

『お兄さん、○ンパリって言葉を人前で使っちゃダメですよ。NG ワードだから キヲツケテネ』

最後は男の耳に唇が触れるほどの距離で囁いたラン。

『はい、気を付けまーす。早くボトル空けちゃおうぜ。俺の硬くて太くて長いやつをティップにぶちこむんだからよ!』

『お前俺より短けぇだろーが!』

『短くてもテクニックで泣かしてやるぜ、なぁティップ』

『うんうん、後で私を負かしてみて。ほら、もうすぐドンペリ一本空になりますよ。5杯目一気ー!お金は沢山あるんだからボトルもう一本良いよね?ジュースももう一杯良いですか?』

『泣かしてみて、だってよー、おぃおぃヒィヒィ泣かしてやっからなー!! ギャハハ! のめのめー、ボトル持ってこーい! この店飲み潰してやる。そうすりゃ頭も納得すんだろ。俺のテクニックでここのホステス拐ってくぞ』

お喋りな男達

ラン、ティップ、メッチ、ナッチ四人は顔を見合わせた。

『やっぱ膝織の奴等だね。一応確かめてみよう』

ティップはべらべら喋る男に鎌をかけるのである。

『ねぇ、お兄さん。頭って誰?この辺ヤクザ多いからさ。膝織一家っていうヤクザに上納金取られてるんだけど、お兄さんなら何とかしてくれるかな?お礼はたっぷりしてあげる。ティップを的にぶっさしていいからさ』

『的にぶっさして良いってよぉ!おい聞いたかコノヤロ! 頭の頭ひっぱたいてやろうぜ。
 膝織一家?たち悪いヤクザだよね。頭にこの店潰してこいって言われてるんだけど、俺がティップのために頭の頭……カシラの頭だってよ駄洒落じゃねぇんだよ! ぷぷっ。
 いつもいつも偉そうに怒鳴りやがって。俺が組を立ち上げて肘折り一家出来たら膝織何てぶっつぶしてやらぁ。なぁ、お前らもそう思うだろ?俺の肘折り一家に入れてやるよ…』

『お前、べらべらと不満ぶちまけてんじゃねぇよ。でも肘折り一家もいいかもな』

『なら俺んちの猫にあやかって八割れ一家にしねぇか?かわいいヤクザになろうぜ、なぁティップ、ラン、どうよ?杯交わそうぜ』

『そ、そうだね。そう言えばさ一昨日ダンプの事故あったの知ってる?』

ティップは何となく男達に聞いた。

『あぁ、うちの組と繋がりのある三下がタクシーに突っ込んだやつだろ?ダンプは俺が盗んできたんだ。頭の指示でな。危なく捕まるとこだった』

『タクシーの運転手死んじゃったんだよな?
あいつ手加減しないで突っ込んだんだな。
まぁ、務所出てくりゃたっぷり金貰えるらしいからな』

その言葉を最後に、男達は酔い潰れてテーブルに突っ伏したり、ボックス席に寝転んだ。

レインボー四人の顔色が変わった。

ティップは男の財布を掴み取り中を調べた。

札は40万あった。

代わりに色々な銀行カードが束になって入っていて名義もバラバラで、それが財布を膨らませていたのだった。

ティップは3人にそれを見せた。

ティップは殴り倒してやりたい気持ちをグッと抑え、警察に電話をした。

泣き崩れるティップ


『はい、お客さんの財布に現金と色々な人の銀行のキャッシュカードが入っているんです。お客さんが酔いつぶれちゃって…料金払ってもらわないと、こちらとしても困るので、お客さんが出した財布の中身をみたら現金40万とキャッシュカードが入ってたんです。ちょっと怪しいので来ていただけますか?』


『警察すぐ来るって…。これで膝織の仕業だって分かったね』

『こいつらホントにバカだな』

『お酒に度数の強いカクテル混ぜてみた。口当たり良いから、こいつらボトル5本も空けちゃったよ。ついでに奴等の声録音しといた。料金は次に来たやつから徴収。あのお金からは流石に取れないからね』

『おぉー、メッチさすが。後で頭と叔父貴に聞いてもらおう。ただ、奴等がこんな状態で警察にパクられるんだから膝織の報復は間違いなくエスカレートするだろうね』

『うん、間違いない。ラン、警察来る前に叔父貴と頭に電話しとこ』

『うん、そだね』

メッチ、ナッチはニヤっと笑った。

ティップは涙を溢しながら男たちを見ていた。

ダーツの矢を太もものベルトから取り出すティップ。

『待って待ってティップ。手は出しちゃダメだよ』

それを見ていたランが慌ててティップを止めた。

『やっぱりこいつら許せないよ。ダンプ盗んだのこいつなんだよ?こいつがダンプ盗まなきゃあの人死なずにすんだんだよ?こいつが生きてるのなんてアタシは許せないよ…』

ティップはダーツの矢を落とし、ランに抱きついてわんわん泣き出した。

ランはティップを抱き締めた。

メッチとナッチもティップを抱き締めた。

ミオを助けた日の坂下を思いだし、四人は涙に包まれた。

そして警察が来て、ティップは警察に男の財布を渡し、警察は男5人を連れていった。


続く。。。

表紙、挿入画 illust ac






主な登場人物
関東頭鬼組  
組長    頭鬼洋次郎(48)
       
若頭    阿久津龍一(38)

若頭補佐  石垣正樹(36)

舎弟頭   新島浩二(37)

相談役   相田真二(38)


 構成員    
荒巻和幸   通称カズ(23)
三澤謙二   通称ケン(25)
須藤弘道   通称ヒロ(23)
小林幸弘   通称ユキ(23)
    他 30名


パブスナック レインボー組メンバー💕
メッチ 
木ノ内健(20)(きのうちたけし)
(めんちきることが多い。何でも武器にする) 

ナッチ  
中沢義男(20)(なかざわよしお)
(よくナイフをちらつかせる) 

ティップ 
榊枝真二(20)(さかきえだしんじ)
(ダーツの矢を数本いつも太股に隠している)

ミオ
安桜芙美乃(20)(あさくらふみお)     
(アイスピックを両足太股に6本常時備えている)

ラン 
一之江将一(20)(いちのえまさかず)
(通販で買った伸縮警棒とスタンガンを持つ)


タクシードライバー
坂下一雄(さかしたかずお)


石頭一家
代表   石頭博 (49)(いしずひろし)

舎弟頭  水谷雄一(38) (みずたにゆういち)

若頭   三浦翔吾(37)(みうらしょうご)

若頭補佐 小澤誠 (36)(おざわまこと)

相談役  立石尚樹(35)(たていしなおき) (ミオの恋人)
     組員40名

膝織一家 
代表 膝織忠義(ひざおりただよし)
膝織一家舎弟頭 八木亮一(やぎりょういち)
若頭 安曇孝信(あずみたかのぶ)


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