見出し画像

撃攘の盾… 弐拾陸 現代ミリタリー小説 (終)


最後の思い

ウルオロシアナ副大統領ミリヤコフは、自国の日本北海道侵攻と核ミサイル使用を止める為、その根源てあるウルオロシアナ大統領Sロマーノフ暗殺を実行した。

ミリヤコフは、その後の自決を決意していた。

サイレンサーの付いたトカレフを持ったまま、大統領執務室のデスクに置いてある水差しからグラスに水を注いだ。

そしてグラスを持ち上げた時、エリガノフ補佐官が慌てて入室して、ミリヤコフに水を飲むなと告げた。

エリガノフ補佐官もまた、ロマーノフ大統領の暗殺計画を実行していた。

水差しの中に猛毒を仕込んでいたのである。

ミリヤコフ副大統領がロマーノフ大統領暗殺を、隠しカメラを通して見ていたエリガノフ補佐官は、水を飲もうとするミリヤコフ副大統領止めるため、急いで執務室に駆け込んだ。

エリガノフ補佐官は、自分の大統領暗殺実行計画を全てミリヤコフ副大統領に明かした。


『‥‥そうだったのか‥』

『はい。私は大統領が水を飲んだら、生死を確かめて警察へ行くつもりでした。たったの2日、いえ、もう3日になりますが、この僅かな3日でウルオロシアナをここまで落とし込む大統領など居ないほうが国のためです。
 大統領が居なくなった今、副大統領が大統領になっていただきたい。ロマーノフの死体は私の方で処理します。我が国の暗殺は多く行われています。この大統領なら暗殺されたところで誰も泣きも悔やみもしないでしょう。
 副大統領には内戦を速やかに止めていただきたいのです』

『人殺しの私には大統領の資格などないが、内戦は今すぐ止める。ロマーノフ暗殺は私がすべてやった事だ。
 エリガノフ補佐官は大統領殺害には関わっていない。君はそのまま補佐官でいてくれ。次期大統領は地上軍アレクサンドル大将に立候補してもらうつもりだ。
 内戦を起こさせたのは私だ。君には大統領補佐官として、次期大統領の力になってほしい。これは私からの最後の願いだ。ロマーノフは私が殺した。君は関係ない。いいね?アレクサンドル大将に連絡するから待っててくれ』

ミリヤコフは、エリガノフ補佐官に対し、大統領殺害は副大統領の一存でやったこと、と言い聞かせた。

それからミリヤコフは、友人である地上軍大将アレクサンドルに執務室から電話をかけた。

『ミリヤコフ副大統領、何でしょう?』

『アレクサンドル大将、国民に向けて大統領立候補の声明を出すんだ。一度君は大統領選に出ている。支持は多かった。君が次期大統領に相応しい。
 国民を味方に付けろ!国をたてなおしてくれ。私のやるべき事は済んだ。大統領を殺した。私は大統領殺害で警察に行く。
 エリガノフ補佐官に君の大統領立候補を伝えておいた。友としての願いだ‥‥頼む‥‥』

ミリヤコフの電話は一方的に切られた。

『ミリヤコフ‥‥一人で責任を負うのか‥‥。君がその覚悟であるなら、君の言う通りにしよう』

とは言え、ロマーノフ派の上級大将ニコライ•コブァレーノフが停戦に応じるかどうか‥‥。
しかも反乱を起こしたのはこちらの方だ。

アレクサンドルは考えた末、上級大将ニコライ•コブァレーノフの地上軍部隊へ行った、元部下のアナトリー•カルボノフ大尉を自分の方へ呼び込もうと考えた。

ダスヴィダーニャ

ちょうどその時、ミリヤコフ副大統領がSロマーノフ大統領殺害の罪で、ウルオロシアナ国家法執行機関により拘束されたというニュースが、ウルオロシアナ全土に伝えられた。
反ロマーノフ派国民は安堵の表情を浮かべた。
一方でロマーノフ派国民は怒りの声をあげた。
だが、その比率は反ロマーノフ派が圧倒的に多かった。

ミリヤコフは拘束さるながらも、最後にニコライ•コブァレーノフ上級大将に対し、国民への攻撃を今すぐ止めるように告げた。

そして、次期大統領に相応しい人物で地上軍大将アレクサンドルの名前を出した。

『アレクサンドル大将なら、国民の意に添う政策をするだろう』

ミリヤコフは、そう言って大統領執務室のデスクに置いたままだった、水を注いであるグラスを顔の位置に上げて『ダスヴィダーニャ』と言い、一気に飲み干したあと、水差しを掴み床に叩き付けた。

その直後、ミリヤコフは激しい呼吸困難に襲われた。

苦痛に歪み遠のく意識の中で『エリガ‥‥ノフ‥あ、後を‥‥たの‥‥』と、最後まで言えないまま息絶えた。

ウルオロシアナ国家法執行機関は、エリガノフ補佐官の証言から、ロマーノフ殺害はミリヤコフ単独の犯行とされた。

エリガノフ補佐官はミリヤコフ副大統領の意志を継ぎ、心苦しくも嘘の証言をしたのである。

ウルオロシアナ内戦はアレクサンドル地上軍が武器弾薬、戦車を押さえ確保していた事で、内戦は2日後に幕を閉じた。

ウルオロシアナ大統領暗殺と副大統領の自決は瞬く間に世界に広がった。

そして、闇の世界では一流の女スナイパーである「アンジェリカ」も、愛国心から大統領演説を狙い、ロマーノフ大統領暗殺を企てていた一人であった。

老婆を装い、射程は短いが高性能ライフルの照準性能を仕込んだ杖をつき、大統領府演説広場を後にしていた。

指導者の居なくなったウルオロシアナ連邦は、エリガノフ補佐官が大統領代理として暫く職務に就いた。

和平への道

大統領代理、エリガノフ補佐官は、日本総理大臣木嶋雄一宛に改めて停戦協定を打診した。

『木嶋総理、2ヶ月後には新政権発足となる予定です。その後に正式な紛争中止及び四島領土問題を含めた日本、ウルオロシアナ連邦平和条約を申し出たいと思います』

『分かりました。エリガノフ大統領代理、その時に、より良い関係と安全保障に関する協力を我が国は惜しみません』

『ありがとうございます。その時には、我が国も友好的に、前向きで平和的な関係を望みます。前副大統領もその意向を示していました。ては、大統領選が終わるまで暫く時間を下さい』

『分かりました』

木嶋総理はホットラインを切った。

『総理、今までのウルオロシアナとは月とスッポンですな』

官房長官  大泉悟は、そう言って驚いたような顔で木嶋総理を見た。

『そうですね。亡くなった副大統領が次期大統領に推したのが、軍人ではあるけどロマーノフのやり方に真っ向から対立していたそうです。今回のウルオロシアナ北海道侵攻は平和的に解決したいものです』

命令違反と軍備増強

一方で、日本の防衛省は重大な命令違反をした、稚内基地司令、神田一成の処分を国会による審議が行われた。

敵地攻撃という積極防衛により、自衛隊員、航空機、艦船の被害を抑えた結果、また自衛隊発足初の有事を鑑みれば、命令違反とした敵地攻撃もやむなしとされ、神田一成の処分は無かった。

しかし、海上自衛隊、航空自衛隊の殉職者は海上自衛隊、護衛艦「ゆうだち」轟沈による殉職隊員100名、艦船損傷による殉職隊員10名、航空自衛隊殉職、行方不明合わせて20名であった。

木嶋総理は何とも言えない哀しみに包まれた。
行方不明者の捜索は未だに続いている。

護るため、攻めるために命を落とす理不尽な戦争に自問自答する木嶋雄一。

職務を全うして殉職した自衛官に、木嶋総理は感謝と哀悼の誠を捧げた。

航空自衛隊では、今回の有事を切っ掛けに第六世代の無人戦闘機を本格的に、急ぎ研究、生産を始めることとなった。

海上自衛隊では、全てのイージス艦にレールガン搭載を決めることとなった。
更に「いつくしま」級航空母艦の設計、施工に着手することになった。

更には、憲法9条見直しが国会で議論されることとなった。

南北鮮半島は北鮮共国の放射能汚染が南鮮民国の首都まで汚染されてしまった。
事実上、北鮮共国は亡国となり、結果南北統一国となった。

ウルオロシアナ本土、グリャナストクでも北鮮共国の核ミサイルのグリャナストク上空迎撃で放射能汚染が広がっていた。

新大統領アレクサンドル


そして、ウルオロシアナ連邦新大統領アレクサンドル新政権が誕生した。

ウルオロシアナ連邦アレクサンドル大統領は、早速来日して、日本、ウルオロシアナ連邦平和条約にサインをして、木嶋総理とアレクサンドル大統領は固い握手を交わした。

『木嶋総理、国後と、択捉の二島について話をしたいのとサロマ湖の視察に同行をお願いしたい。あと、北海道にいた、平和を訴えていたウルオロシアナ人の若い夫婦の日本への帰化、どうか望みを叶えてあげてほしいと切に望みます』

『あの若い夫婦ですね。日本を愛してくれるなら大歓迎です。実はその若い夫婦は、嬉しい事にめちゃめちゃになったサロマ湖を修復するための募金活動を既に始めているのです』

『そうでしたか、国後と択捉の返還について私から話があるので、その後でサロマ湖視察の同行をお願いします』

『なんと!本当ですか?大統領!』

『はい、私は日本の歴史も認識しています。国後、択捉に日本人の墓地があるのも知っています。ただ、返還について反対するのも当然いるのでそういったところを総理と話をしたいと思っています』

『そうですか。分かりました。じっくり協議しましょう』

『ありがとう、木嶋総理』


こうしてウルオロシアナ連邦と和平の道が拓かれた。


しかし、その和平を嘲笑うかのように、尖閣諸島に不穏な空気が流れていた。


戦士の休息

【主な登場人物、艦船、航空機、兵器】

わりと大雑把です💦

根室中標津空港  たんちょう釧路空港
女満別空港 

三沢、千歳、稚内、札幌、各基地
対戦車ヘリ部隊
装輪戦闘車
ペトリオット
巡航ミサイル
大型自走榴弾砲
対艦ミサイル     12式地対艦誘導弾
高射砲部隊、    03式中距離防空誘導弾
12式地対艦誘導弾

青森三沢基地 ドローン戦闘機 
第5世代日本国産戦闘機 F3

千歳202飛行隊      F15  岡部 二等空佐
同202飛行隊           F15  真田 二等空佐
同203飛行隊           F35  伊上編隊 二等空佐
千歳203飛行隊      F2(改)小型電子戦機
千歳203飛行隊    F35 沖田
三沢302飛行隊長 F3   加藤 斉藤、大崎

日本総理大臣              木嶋雄一
官房長官                      大泉悟
稚内基地司令              神田一成
千歳基地航空司令     小坂部宏樹
機動戦闘車中隊長        一等陸尉、石田栄二

佐藤和幸 無線愛好家

イージス艦  「はぐろ」
護衛艦       「ひゅうが」「さみだれ」「きりさめ」 「なとり」「やはぎ」
ミサイル艇   「はやぶさ」「くまたか」
補給艦        「ましゅう」

第3護衛艦隊 旗艦イージス艦「まや」
護衛艦 「しらぬい」「ゆうだち」
補給艦「とわだ」

潜水艦「やまぎり」

艦名である「いつくしま」は「かが」「いずも」共に神に纏わる艦名から、神の島と崇められている広島県の「厳島」を由来とした。

排水量68,350㌧
満載排水量88,400 ㌧
全長328.0 ㍍
最大幅76.5㍍
水線幅40 ㍍
吃水12 ㍍
主機 高出力蒸気タービン 4機、4軸出力 295,000 shp

最大速力 35㌩

乗員 4,650名
いつくしま501空自飛行隊50名
いつくしま502空自飛行隊50名

兵装 RIM162シースパロー発射機2基

ファランクスCIWS 2基

自動追尾短距離防空ミサイルSeaRAM 2基

搭載機最大 80機

「いつくしま」(総数75機)
       (予備機5機)

F3  50機
P-2 艦載哨戒機 3機
対潜ヘリ SH60Jシーホーク 5機
救難ヘリ UH60J 5機
F3 予備機 5機
電子戦闘機 2機 F3-E

艦隊編成
海上自衛隊航空艦隊

旗艦                    「いつくしま」
イージス艦         「いせ」
もがみ型護衛艦 「やましろ」
もがみ型護衛艦 「むつ」
もがみ型護衛艦 「かねしろ」
もがみ型護衛艦 「ふそう」
補給艦      「いなわしろ」
潜水艦               「じんげい」2艦

米国空母打撃群は、日米安保条約に基いて、後方支援として日本の有事に後方支援で加わった。

Sロマーノフ大統領
ミリヤコフ元副大統領
エリガノフ補佐官
ニコライ•コブァレーノフ地上軍上級大将
アレクサンドル地上軍大将

航空母艦

ウルオロシアナ原潜、モノマルフ級2, ディーゼル艦、ハルキロ級2

ロプチャニクス戦車揚陸艦

サリハンスーク コルサールフ港湾から新たな脅威となる艦隊が動き出した。

ミサイル対艦、対空、駆逐艦 2
ミサイル対地、対空、駆逐艦 2
ミサイル原子力巡洋艦 1
揚陸艦 4
対潜コルベット 4 
大型対潜巡洋艦 1 
ハルキロ級潜水艦 2
補給艦 2

【あとがき】


長い文章に誤字脱字、そんな作品にお付き合い下さり本当にありがとうございました。
そして誤字脱字、申し訳ありませんでした。
私の自衛隊に対する認識も素人レベルで不快に思われた方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでくださり感謝しかありません。
ちょっとラストは意味深ですが、皆様のご想像にお任せします(*^^*)

ありがとうございました☺️

著 安桜芙美乃






いいなと思ったら応援しよう!