撃攘の盾… 弐拾参 現代ミリタリー小説
自衛隊 撃攘の盾
サリハンスーク コルサールフ港湾から出港したサロマ湖上陸艦隊は、日本の領海ギリギリに航行しながら、自国空軍と航空自衛隊の空戦域を避け、日本の領海に侵入しサロマ湖へ向けて艦対地ミサイルを撃ちながら、サロマ湖まで50㎞の所まで来ていた。
ミサイル対艦、対空、駆逐艦 2
ミサイル対地、対空、駆逐艦 2
ミサイル原子力巡洋艦 1
揚陸艦 4
対潜コルベット艦 4
大型対潜巡洋艦 1
ハルキロ級潜水艦 2
補給艦 2
各艦、熟練乗員の練度と装備により、攻撃は基より防空、対潜能力共に優れた防衛能力と攻撃力を発揮していた。
とは言え、日本の最新鋭潜水艦を捉えることは難しかった。
海上自衛隊、潜水艦「やまぎり」は、単独でサロマ湖沖30㎞の海底深度800㍍で静止、ウルオロシアナ軍サロマ湖上陸艦隊の待ち伏せをしていた。
イージス艦「まや」艦隊は補給艦「とわだ型」1艦「ましゅう型」2艦が待機停泊している枝幸港に向かいたいが、ウルオロシアナの戦闘機群がそれを許してはくれなかった。
本土から増援のこんごう型イージス艦「みょうこう」むらさめ型護衛艦「あきづき」「いかづち」も駆けつけてはいるが、海上自衛隊余市防備隊のある余市港を経由して礼文島へ向かっていた。
航空自衛隊は稚内空港臨時基地、千歳201 202飛行隊。
紋別飛行隊が交代でウルオロシアナ空軍と交戦していた。
サロマ湖空戦は、日本航空母艦艦隊の巡航ミサイル攻撃により破壊された国後と択捉島飛行場から飛び立った二十五機の地上攻撃機と戦闘機は離陸は出来たが、着陸不可能となった国後、択捉島空港には戻らずサリハンスーク飛行場へと飛び去っていった。
一方、釧路から侵入した二十五機の地上攻撃機と戦闘機は釧路空港の破壊、根室中標津空港の破壊任務で、釧路空港防衛で配備展開されていた陸上自衛隊による、防空ミサイルで二機を失い、一機が低空飛行で鉄塔の高圧線に引っかかり空中爆発を起こし、炎上墜落した。
根室中標津空港には対戦車ヘリが集結していたため、空港灯火を全て消灯してウルオロシアナ空軍パイロットの視覚から闇夜に紛れた。
北海道釧路空港、発見できなかった根室中標津空港を経由したウルオロシアナ空軍は女満別空港を目視、攻撃態勢に入った。
女満別空港から、陸自の短距離地対空ミサイルと連射高射砲の閃光弾による弾幕がウルオロシアナ空軍編隊を崩した。
そこへサロマ湖防衛からミサイルを使い果たした先頭のF3が、機関砲を撃ちながらウルオロシアナ空軍戦闘機と交戦に入った。
後方のF3には、ミサイルを温存していた機もあり、陸自の地対空ミサイルと「いつくしま」航空隊F3によりウルオロシアナ空軍Su27戦闘機と地上攻撃の半数が撃墜された。
残りの戦闘機、地上攻撃機はサリハンスークへ向かい飛び去っていった。
夜の女満別空港周辺には、航空機墜落による火災が発生していた。
幸いにも空港周辺は畑が多く、住宅への延焼は無かった。
後にウルオロシアナ戦闘機、地上攻撃機合わせて十三機の撃墜と、パイロット5名の軽傷、3名の死亡が確認された。
潜水艦の駆け引き
一方、サロマ湖防衛、陸自機動戦闘車中隊本部2両、各小隊4両の3個小隊編成で14両、4個小隊編成で18両という機動戦闘車中隊。
第二、第三野戦特科隊 及び地対艦ミサイル、地対空ミサイル、多連装ロケット中隊、自走榴弾砲など対空防衛に加わった。
サロマ湖沖30㎞の海底深度800㍍でウルオロシアナ艦隊を待ち伏せしている海上自衛隊潜水艦「やまぎり」のソナーにウルオロシアナ潜水艦「ハルキロ級」「モノマルフ級」のスクリュー音を探知した。
『ウルオロシアナ潜水艦、ハルキロ級、モノマルフ級スクリュー音探知。こちらに向かっています』
ソナー水測員が落ち着いた口調で敵潜水艦情報を伝えた。
『探知そのまま』
「やまぎり」艦長の言葉のあと、ウルオロシアナ潜水艦は「コーン」というピンガ音を出した。
跳ね返る音波で海底の地形を読み取った。
「前方200,海底の地形に変化あり、深度800」
「機関停止、深度400。暫く様子を見る」
ハルキロ級潜水艦艦長は、海底地形変化に日本の潜水艦を疑い様子を見ることとした。
ハルキロ級潜水艦がピンガを打ったことで、ハルキロ級潜水艦の位置がハッキリと読み取れた潜水艦「やまぎり」も動かずにいた。
『敵潜水艦、3時方向深度400にて機関停止。敵艦隊スクリュー音12時方向、距離10km』
『ウルオロシアナ艦は対潜ロケットを積んでいる。誘導弾ではないか、すぐに動けるようにしておくんだ』
『了解、ソナー探知続けます』
『艦長、我軍ハルキロ潜水艦、前方10kmでピンガ打ち停止』
『対潜ロケット用意。何時でも撃てるようにしておけ』
大型対潜巡洋艦ソナー要員の報告に艦長は敵潜水艦の存在を疑い、対潜水艦ロケット弾の発射準備の命令を下した。
自走榴弾砲の戦果
サロマ湖陸自防衛各隊は、対艦ミサイルを尽く迎撃されていたが、サロマ湖に押し寄せる艦対地ミサイルは全て撃ち落としていた。
更に自走榴弾砲の射程に敵艦隊が入ったことで地対艦ミサイルより安価な榴弾砲に切り替えた。
99式自走155㍉榴弾砲52口径とFH70 155㍉榴弾砲で総攻撃を始めた。
一分間に6発の正確な砲弾攻撃は、対空連射砲ファランクスでも落とされにくく確実に船体にダメージを与えていた。
ウルオロシアナ艦隊は二手に分かれた。
ミサイル対艦、対空、駆逐艦 1
ミサイル対地、対空、駆逐艦 1
揚陸艦 2
対潜コルベット艦 2
揚陸艦2艦を含めた上陸艦隊は湧別漁港へ向かう事になった。
残りは引き続きサロマ湖に向かった。
「いつくしま」空母艦隊は能取岬と常呂港北防波堤灯台の中間を航行していた。
ウルオロシアナ潜水艦 モノマルフ級
常呂港北防波堤灯台沖5kmの深度350㍍にウルオロシアナ潜水艦「モノマルフ級」が魚雷発射管扉を開けたまま「いつくしま」艦隊を待ち伏せしていた。
『日本空母艦隊、多数のスクリュー音確認、距離前方5km』
『魚雷1番から6番、全弾発射!』
『1番から6番魚雷発射!』
モノマルフ級潜水艦艦長の命令により、「いつくしま」空母艦隊に向けて魚雷6発が発射された。
『12時方向、敵魚雷6、距離5000!待ち伏せです!』
『全艦、魚雷回避行動!デコイ発射!護衛艦、潜水艦は魚雷戦始め!』
『いつくしま』空母艦隊潜水艦「じんげい」から、ウルオロシアナ潜水艦モノマルフ級に向けて魚雷6発が発射された。
護衛艦「やましろ」「ふそう」から敵魚雷前方へ発射され、敵魚雷直前で自爆させた。
敵魚雷3発が迷走、「いつくしま」艦隊を追えなくなった。
残り3発はデコイにより爆発、消滅した。
ウルオロシアナ潜水艦「モノマルフ」級は、一万トンを超える巨体の潜水艦であるため、回避行動も鈍かった。
デコイで「じんげい」が放った魚雷6発のうち2発を破壊した。
「モノマルフ」級潜水艦は、更にデコイを5発発射したが、残り魚雷4発が艦尾至近距離で爆発した。
モノマルフ級潜水艦の大きな船体は激しく揺すられた。
艦内の衝撃も凄まじかった。
『ダメージ報告急げ!』
『艦尾全体に亀裂、浸水あり。原子炉放射線漏れ無し!スクリュー破損、航行に支障あり!艦尾乗員避難完了!後部隔壁ハッチ全て閉鎖完了!深度徐々に降下中。現在深度380』
『メインタンクブロー急げ』
ダメージ報告の後、艦長はメインタンクブローで浮上を試みた。
『急速浮上、メインタンクブロー開始!降下止まりました。少しずつ浮上、現在350、340,330.尚も上昇中』
『海上に出たら総員退艦!総員退艦!』
『海上まであと30秒!』
『20、10,海面浮上ハッチ開け速やかに退艦』
艦橋上部ハッチを開けると艦内内圧が下がり、閉鎖した後部ハッチの歪みから浸水が始まった。
『後部再び浸水、退艦急げ!』
艦橋上部ハッチから飛び出した乗員は、そのまま海に飛び込んだ。
7分後、最後に艦長がハッチから出てきて上部ハッチを閉じた。
艦尾は通常よりかなり沈んでいた。
ウルオロシアナ潜水艦艦長は艦橋を一撫でして夜の海に飛び込んだ。
「いつくしま」空母艦隊から瞬時にエアーで膨らむ救命ボートを数隻海面に浮かべた。
自衛隊網走駐屯地にウルオロシアナ兵の見張りと救助を任せ、「いつくしま」空母艦隊はサロマ湖へ向かった。
サロマ湖陸自野戦特科部隊は、ウルオロシアナサロマ湖上陸艦隊に向け、99式自走155㍉榴弾砲とFH70 155㍉榴弾砲、地対艦ミサイルを絡めて撃ち込んでいた。
続く。。。
病院で検査や用事があって
ちょっと更新遅れてしまいました💦
続いて【仁と義】を書いていこうと思います。