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撃攘の盾… 拾 現代ミリタリー長編小説


自衛官


白々と明けていく夜の中、女満別空港、紋別空港に撃ち込まれたウルオロシアナ長距離通常ミサイルに破壊された傷跡が露になっていった。

しかし、専守防衛の名の下に防衛に特化した陸、海、空自衛隊の防衛力は、他国に類を見ない強力な組織であることを知らず、ウルオロシアナのように甘く見ている諸外国は少なくないのである。

その強固な防衛力により、弾道ミサイル、長距離巡航ミサイルを尽く撃ち落とし、僅かに1発の巡航ミサイルが紋別空港に落ちただけであった。

しかし、その裏では戦闘機パイロット、護衛艦、ミサイル防衛、防空の陸自各連隊の国民の安全と命、領海、領空を護る強い使命感の下、領空、領海、国民の安全と平和に職務を遂行する国防に命をかけた自衛官なのである。

新たな脅威


女満別空港にミサイル着弾は無かったが、破壊されたミサイルの破片が空港内の建物のガラスを割り、自衛官の負傷者は数名の軽傷で夜明けを迎えた。
女満別空港では、建物の数ヶ所にミサイルの破片で弾痕のように抉られた跡があり、ガラスもいくつか割れていた。
紋別空港では、滑走路脇にはミサイルが着弾して抉られた地面がミサイルの破壊力を物語っていた。

幸い紋別空港、女満別空港での民間機、民間人の被害はなかった。

一方、オホーツク海沖のウルオロシアナ連邦国家、ミサイル駆逐艦4艦のうち2艦から再び放たれたミサイルは紋別空港と女満別空港に5機ずつ、合計10機のミサイルが立て続けに撃ち込まれた。

その時、サリハンスーク コルサールフ港湾から新たな脅威となる艦隊が動き出した。

ミサイル対艦、対空、駆逐艦 2
ミサイル対地、対空、駆逐艦 2
ミサイル原子力巡洋艦 1
揚陸艦 4
対潜コルベット  4 
大型対潜巡洋艦 1 
ハルキロ級潜水艦 2
補給艦 2

航空機もサリハンスークの民間空港から1編隊五機で立て続けに離陸し始めた。

大艦隊と航空機が動き出したことを、日本の早期警戒管制機がウルオロシアナの動向を捉えた。

『早期警戒管制機より各基地、各隊へ!サリハンスークコルサールフ港湾付近より艦船の移動確認。
大型対潜巡洋艦 1  
原子力ミサイル巡洋艦 1
ミサイル駆逐艦クラス 4
揚陸艦 4
補給艦と思われる艦船 2
航空機1編隊五機、7編隊サリハンスーク民間空港より飛行確認。
 千歳第1、美唄第2、上富良野第3地対艦ミサイル各連隊へデータリンク接続、長距離対艦ミサイル攻撃要請。
 名寄第4高射特科各中隊迎撃ミサイル攻撃要請、各隊は敵艦、敵航空機とも領海、領空に入り次第攻撃要請』

陸自、空自善戦す!


サロマ湖へ向かうミサイル駆逐艦は2艦ペアで4艦交互に紋別空港、女満別空港への攻撃を繰り返していた。

ウルオロシアナは制空権を欲しいが為に、空港を奪取しようとしていた。

しかし、陸上自衛隊のペトリオット高射部隊も健闘していた。

攻撃目標手前まで低空飛翔する長距離通常ミサイルは、攻撃目標直前で大きく急上昇して、目標目掛けて急降下してくるミサイルを迎撃する陸上自衛隊のペトリオット高射部隊は奮闘していた。

撃ち込まれるミサイル全てをを撃ち落としていた。

陸自、海自、空自の防衛力の高さが如実に現れた事に自衛官は素より、多くの国会議員と国民は歓喜した。

しかし、木嶋総理と稚内基地司令 神田一成は殉職した自衛官を思えば胸が痛く締め付けられるのだった。

うっすらと明るくなった稚内の空港から、千歳202飛行隊のF15 十六機が敵機の射程外からイージス艦との連携で攻撃できるアウトレンジステルス空対空ミサイル2基 短距離空対空ミサイル6基を翼下に抱え舞い上がっていった。

F15より遥か上空の早期警戒機からは北方四島の国後島から敵機8編隊四十八機接近との無線がF15編隊に入った。

快晴のオホーツク海上空に飛び出した千歳202飛行隊F15戦闘機二機8編隊、伊上編隊長は各機に無線を開いた。

『皆、其々のペア(僚機)を見失うな! 敵機は我々より多い! 
できるだけペアで戦闘に持ち込め! 
我々は後から来る協力な対艦ミサイルを抱えた203 302飛行隊の援護機となる!
敵機の射程に入る前に攻撃開始だ! 
ステルスミサイルを撃ったら一番機から八番機は俺の後に続いて左へ散開する。残りは右へ開いて左右からアタックするぞ!
真ん中はミサイルに頼もうぜ!
撃墜も躊躇するな! やらなければやられる!
奴等を蹴散らして追い返すぞ! 20秒後にミサイル発射だ!
各機僚機と共に攻撃体型に移れ!』

『了解!』

各機パイロットの威勢の良い返事がそれぞれのヘッドホンから響いた。

千歳202 F15飛行隊長、伊上は僚機と共に先頭に出た。

『5秒後に攻撃開始!4、3、2、1ミサイル発射!』

伊上の声に各F15からステルスアウトレンジの空対空ミサイル2機が飛び出した。

合計32機のミサイルが32本の白煙を残し、敵機編隊へマッハ5の速さで向かっていった。

イージス艦「はぐろ」と衛星の連携でF15各機は撃ち放ったミサイルをイージス艦に任せ戦闘体型を維持して左右に大きく散開した。

ウルオロシアナ戦闘機編隊がF15を射程に捉えたとき、ステルスミサイルは敵機のレーダーに捕捉されることなく目前に迫っていた。

ステルスミサイル本体が敵機を捕捉するまでイージス艦と衛星の誘導により正確に飛翔しステルスミサイル本体が敵機を捕捉したところで、敵機のコックピットにレーダーロックの警告アラームが初めて鳴り響くのだった。

イージス艦防空システムと衛星の位置情報でステルスミサイル本体がレーダーロックできるまで飛翔し、敵機をレーダーロック捕捉したあとは赤外線誘導に変わり航空機を追いかけ回すのだが、気付いた時には既に遅く回避が難しいミサイルだった。

イージス艦「はぐろ」のレーダーから敵機を示す赤い点が一つ二つ三つと消えていき、十八機の敵機が撃墜された。

このステルスアウトレンジミサイルは、高価ではあるが脅威的な戦果を見せた。

その後、日本のF15とウルオロシアナSu33のドッグファイトが始まった。

夜間戦闘とは違い、両者共に機敏な動きを見せながらドッグファイトの最中、千歳203 F35 十八機  
三沢302飛行隊 F3 七機はステルス性能を活かしウルオロシアナ揚陸艦隊とミサイル駆逐艦4艦に低空で接近していった。

『千歳203小林F35編隊、これより敵揚陸艦隊攻撃に入る』

『三沢302加藤F3編隊、敵ミサイル艦隊へ一斉攻撃に入る!
既に射程内だが確実に仕留めるまで接近する。発射まであと10秒、…4、3、2、1 攻撃開始!』

千歳203 F35 十八機から一斉に空対艦ミサイルが発射された。

三沢302 F3 七機からも空対艦ミサイルが発射された。

F35とF3の機体がふわりと浮き上がった。

射程300キロの大型の対艦ミサイルは音速を越え、マッハ2を越えるスピードで海面スレスレを飛翔して敵艦隊に向かっていった。

この対艦ミサイルもステルスアウトレンジで敵の射程外から敵を捕捉、衛星との連携で位置情報を確認して超音速で敵へ向かうのでレーダー波を出さない上、レーダー波を吸収するステルスミサイルは敵にも捕捉されにくい性能を持っていた。

上陸される前に防衛、敵の戦力を喪失させることを目的とする海洋国家、島国日本ならではの戦略と戦術であった。

F35から放たれたアウトレンジステルス対艦ミサイル18機は揚陸艦隊までほんの数十秒で到達して全弾命中、揚陸艦隊は撃沈、中破、大破で一艦が漸く浮いている状態だった。

F35はミサイルを放つと同時に稚内基地へ戻り、ミサイルを空対空ミサイルに装換して空戦中のF15編隊に次ぐ第2波攻撃隊として再び飛び立った。

三沢302 F3飛行隊もステルスアウトレンジ対艦ミサイルを放ち、ミサイル駆逐艦4艦を撃沈、轟沈、大破させた。

自衛隊と自衛隊装備を甘く見ていたサロマ湖へ向かうウルオロシアナ艦隊は呆気なく全滅した。

その後、人道上の配慮により、ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」とイージス艦「はぐろ」護衛艦「さみだれ」「きりさめ」がウルオロシアナ兵を救助するために戦闘域へと入っていった。

その日本のイージス艦隊を海中から狙うウルオロシアナ潜水艦、ハルキロ級と原子力潜水艦モノマルフ級の魚雷発射管の扉が静かに開いた。

護衛艦「きりさめ」はハルキロ級モノマルフ級潜水艦の魚雷発射管扉の開閉音をキャッチしていた。

『ウルオロシアナ潜水艦ハルキロ級、モノマルフ級魚雷発射管扉全門開いた模様…』


ウルオロシアナ潜水艦ハルキロ級とモノマルフ級艦長は魚雷発射の命令を下した。

『1、3、5、番、2、4、6、番全門発射!』

『ウルオロシアナ潜水艦ハルキロ級、モノマルフ級魚雷全門発射!魚雷12,我が艦隊に接近中、距離1800』

『各艦デコイ発射、敵潜水艦に向け魚雷4発射!』

護衛艦「きりさめ」「さみだれ」艦橋に攻撃命令が出た。

この時、国籍不明の潜水艦が魚雷発射管を二つ開いた。

「きりさめ」「さみだれ」のソナーに辛うじてその音が聞き取れた。

『艦長! 別の潜水艦の魚雷発射管扉開いた模様、音紋一致無し、国籍不明です』

『魚雷発射したか?』

『いえ、発射はありません』

国籍不明の潜水艦が、この時音波探知のピンガを打った。

潜水艦特有の音波探知ピンガのコーンという音の数秒後、国籍不明の潜水艦から2本の魚雷が発射された。

『国籍不明潜水艦、魚雷2発射、我が艦隊と敵潜水艦の間を通過する模様!』

国籍不明の潜水艦が発射した魚雷は、ウルオロシアナ潜水艦が放った魚雷の前方300メートル付近で自爆した。

その爆発音と激しい海流と気泡に日本の魚雷とウルオロシアナ潜水艦の魚雷は目標を見失った。

日本イージス艦隊の前方に高い水柱が上がった。

『魚雷制御不能、回避しました。艦長、どういうことでしょう』

『うむ…国連が動き出しのか…、それとも…』

イージス艦艦長は、謎の国籍不明の潜水艦に頭を捻るのだった。


一方、ウルオロシアナ大統領Sロマーノフはサロマ湖へ向かった艦隊全滅の報告を受け、北海道に本格的なミサイル攻撃を始めるのだった。

航空自衛隊、千歳202 203飛行隊はF15  一機被弾墜落もパイロットは脱出生還、203飛行隊F35 二機被弾小で、全機稚内基地へ戻っていた。

三沢302飛行隊も期待に被弾小が2機で全機無事に稚内基地へ戻っていた。


続く…







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