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仁と義 21章 仁侠短編小説抗争編 16(シリアスコメディ)

弱きを助け強きを挫く。
昔ながらの仁義を重んじる関東頭鬼組かんとうかしらきぐみ
その分家である頭鬼組のシノギ、悪党にはボッタクリ料金、堅気の一般客には明朗会計パブスナックレインボー、ホステス5人組。
顔も容姿も見た目はキュートな二十歳のホステス。
見た目は可愛いホステスだが、根っこは任侠貫くヤクザなニューハーフ、ダークヒーローレインボー組、抗争編。

『入ります‥‥』

注: 多少グロテスクな表現あり。


悪党は許さないよ!



前回のあらすじ

ギャングとのトラブルの後、頭鬼組分家、レインボー組に拘束されたギャング二人。
レインボー組4人は、膝織の内情をギャング二人から聞き出した。
 パブスナックレインボーに突っ込んだ前回のトラック事故が膝織の仕業と分かり、再びトラックを突っ込ませると言っていたことを、レインボー組に明かした。
 意気消沈して、すっかり大人しくなっていたギャング二人に、ティップとミオがギャングを抜けるように諭した。ティップはギャングの一人が二つ下の弟に似ていることから、解放する時には既に午前零時を過ぎていたため、タクシー代を渡して二人を帰した。
 しかし、翌日そのギャングの二人はギャングを抜けると言ったことで、ギャングと膝織の組員により激しい暴行を受けた。結局ギャングを抜ける事を許されなかった二人だが、ギャングの一人がティップとミオへの義理を通して石頭一家に電話をした。
 石頭一家の幹部である立石尚樹と、尚樹の恋人であるレインボー組のミオが膝織一家に狙われている事、パブスナックレインボーにトラックが突っ込む事を告げ、立石尚樹への襲撃は何とか自分が阻止する、と石頭一家に伝えたのである。


阻止された襲撃

石頭一家幹部、立石尚樹の舎弟である笹井茂ささいしげる市谷裕太いちたにゆうたの二人は、兄貴分である立石尚樹の退院に付き添い、兄貴分、立石尚樹と恋人のミオを尚樹の家まで車で送った。

立石尚樹とレインボーのミオが見えなくなり、石頭一家若頭から膝織一家の襲撃を警戒する様に言われていたため、立石尚樹の住む集合住宅の見える場所で車に乗って警戒していたところ、石頭一家若頭  三浦翔吾みうらしょうごから電話が入り立石尚樹とレインボーミオの襲撃予告のタレコミがあった事を伝えた。


『まったく懲りねぇ奴らだな‥‥』

『まぁ、まだタレコミが本当かどうか分からねぇからな』

『そうだが、油断はできねぇな。兄貴に連絡入ってるのかな‥』

かしらが伝えてると想うけど、念の為確かめてみる』

シゲが携帯を取り出そうとした時、立石尚樹から着信が入った。

『はい、シゲです』

「シゲ、いま頭からか聞いた。ミオにも話したら、これから来るかもしれない膝織かギャング連中の中に、今回タレコミしたやつがいるらしい。そいつはミオとティップにギャングをやめるように言われた一人らしい。
 ソイツが襲撃を何とか阻止すると言っていたそうだ。今からお前達の車に行く。ミオがそのチンコロした男を助けたいと言ってる。
 既にボコボコにされて、無理やり同行させられてるらしいな。手ぇ貸してくれるか?」

『分かりました。どの道、兄貴とミオ姐さんを狙う奴は許せんですから。いま建物の入り口まで車持っていきます』

「おぅ、頼む」

片道二車線の広い道路には、路上駐車の車も多く、シゲとユウが乗る白いセダンは路上駐車の車の列から動き出し、立石尚樹の住む集合住宅の前に停車した。

立石尚樹とミオがエントランスから出てきた時、黒のBMWがシゲとユウが乗るセダンの横についたかと思うと、BMWの後部ドアの窓が開き拳銃が突き出されようとしたその時、BMWの車内で争う声が聞こえて、銃声がパンッパンッ、パンッとBMWの車内で聞こえた。

BMWは走り出したが、右後部ドアが開き男が放り出されて道路に転がった。

BMWは、そのまま走り去った。

ミオと尚樹、シゲとユウは放り出された男に駆け寄った。

『おい、大丈夫か?』

尚輝は男に声をかけた。

ミオは男の横にしゃがみ顔を覗き込んだ。

『‥‥やっぱりあんただったのか‥‥。助けてくれたんだよね?アタシらを‥』

『あ、お、俺、ギャング‥‥抜けたかった、けど抜けさせてくれま‥‥せんで‥した。ごめんなさい』

『分かってる、今救急車呼んであげるから頑張りなよ』

ミオは男のアザだらけで腫れ上がった顔を見て、身体には銃で撃たれたであろう胸の3つの赤い染みをミオは手で押さえた。

『ひでぇことしやがるな』

尚樹が呟いた。


怒りに染まる緋牡丹の花

一方、パブスナックレインボーに向かっていた膝織一家組員の乗るワゴン車とギャングが運転する2トントラックはパブスナックレインボーまで5分ほどの所まで来ていた。

トラックを運転する男の顔はアザだらけで腫れ上がっていた。

助手席には、運転手が逃げないように監視として膝織の組員が乗っていた。

ワゴン車には膝織組員三人とギャング二人が乗っていた。

『あいつ逃げねぇだろうな?』

『見張りが乗ってるし逃げたらどうなるか分かってるだろ。かなり痛い目にあってるしな』

『盗難トラックも店に突っ込む事故も、あいつに罪被せりゃそれでいいだろ。ギャング抜けたいとか言いやがって‥‥。奴等は鉄砲玉に使えるからな。これからも逃がしゃしねえよ』

膝織組員は、そう言って後部座席のギャング二人を見て笑った。

ワゴン車後部座席の二十歳になったばかりのギャング二人は、膝織一家に足を突っ込んだ事を今更ながらに後悔した。

そしてトラックは、繁華街の入り口にあるパブスナックレインボーが見えるところまで進んだ。その後、方向転換をしてバックでパブスナックレインボーに突っ込む手筈であった。

トラックが方向転換する時、頭鬼組カズ、ケン、ヒロ、ユキと頭鬼組分家レインボー組ティップ、ナッチ、メッチが店の前に並んだ。

トラックを運転していたアザだらけの顔のギャングは、ティップを見て頭を下げた。

そして方向転換したトラックは、そのまま加速して離れた所に停まっている、膝織組員が乗るワゴン車に向かいブレーキを踏むことなく正面衝突した。

スピードにして60キロに達したところだった。

「ガシャッ」という金属がぶつかり合う、事故特有の鈍い音が響いた。

トラックの助手席の男は、衝突の衝撃でフロントガラスを内側から頭で砕き、身体が半分飛び出して、対向するワゴン車のフロントガラスを砕き、ワゴン車車内に飛び込んだ。

運転していたギャングの男も、頭でフロントガラスを突き破り、反動でシートに戻る時にガラスが首に食い込み血が噴き出した。

ワゴン車の運転手と助手席の男はぺしゃんこになった運転席と助手席に挟まれ動けなかった。
顔は血だらけになり助けを求めていた。

ティップ、ナッチ、メッチはトラックに駆け寄った。

『やっぱりあんただったんだ。今救急車呼んでるから!しっかり‥‥』

そう言ったティップだったが、おそらく頸動脈を切ったのか、首を押さえる男の手から夥しい血が噴き出していた。

ティップが弟に似ている、と言っていた男はティップを見ながら涙を零して目を閉じた。

『くそっ!』

ティップの身体は怒りに打ち震えていた。それはナッチもメッチも同じだった。

『カズさん、アタシもう膝織の奴等絶対許さない!坂下さんも殺られたし、この子までこんな目に‥‥。アタシ一人でも膝織に殴り込みカチコミする!』

『ティップ、一人じゃ行かせないよ!うちらも一緒だ』

メッチが言うと、ナッチも頷いた。

『まぁ待て、ティップ。カチコミしたところで奴等の規模は、うちと石頭一家合わせても全然頭数足りないんだ。膝織の息子掻っ攫ってクソ親父を黙らせる方が効果的だ。作戦練ろうぜ?なっ?』

ティップの大きな瞳が潤み、その瞳はカズを見て大粒の涙を落とした。

ティップの背中に咲く緋牡丹の彫物が、こみ上げる怒りに仄かな紅色に染まるのである。


続く。。。

牡丹
緋牡丹 花言葉「燃える心」「情熱」
サボテン科ギムノカリキウム属


表紙画、挿入画illust ac


登場人物

関東頭鬼組  
組長    頭鬼洋次郎(48)
       
若頭    阿久津龍一(38)

若頭補佐  石垣正樹(36)

舎弟頭   新島浩二(37)

相談役   相田真二(38)


 構成員    
荒巻和幸   通称カズ(23)
三澤謙二   通称ケン(25)
須藤弘道   通称ヒロ(23)
小林幸弘   通称ユキ(23)
    他 30名


パブスナック レインボー組メンバー💕
メッチ 
木ノ内健(20)(きのうちたけし)
(めんちきることが多い。メリケンサックを持つが何でも武器にする) 

ナッチ  
中沢義男(20)(なかざわよしお)
(よくナイフをちらつかせる) 

ティップ 
榊枝真二(20)(さかきえだしんじ)
(ダーツの矢を数本いつも太股に隠している)

ミオ
安桜芙美乃(20)(あさくらふみお)     
(アイスピックを両足太股に6本常時備えている)

ラン 
一之江将一(20)(いちのえまさかず)
(通販で買った伸縮警棒とスタンガンを持つ)


タクシードライバー
坂下一雄(さかしたかずお)


石頭一家
代表   石頭博 (49)(いしずひろし)

舎弟頭  水谷雄一(38) (みずたにゆういち)

若頭   三浦翔吾(37)(みうらしょうご)

若頭補佐 小澤誠 (36)(おざわまこと)

相談役  立石尚樹(35)(たていしなおき) (ミオの恋人)
     組員40名

膝織一家 
代表 膝織忠義(ひざおりただよし)
膝織一家舎弟頭 八木亮一(やぎりょういち)
若頭 安曇孝信(あずみたかのぶ)


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