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撃攘の盾… 拾柒




ウルオロシアナ爆撃機


夕暮れに染まるウルオロシアナ本土、サリハンスーク飛行場から北海道自衛隊千歳基地攻撃爆撃編隊は、小樽沖から北海道千歳へ侵入しようとしたとき、F 35を目視で確認したウルオロシアナ戦闘機パイロットが航空自衛隊のF35と思い込み、F35へ撃墜の為ミサイルを発射した。

しかし、そのF35は米空母打撃群航空母艦エイブラハムリンカーンから発艦したF35直援機だった。

ウルオロシアナ航空機、北海道自衛隊千歳基地攻爆撃編隊、大型爆撃機二機、爆撃機護衛戦闘機二十機から三十機に増え、十機が米空母打撃群のF 35 四機と戦闘に突入した。


ウルオロシアナ戦闘機から放たれた空対空ミサイルから逃れた米F35はウルオロシアナ戦闘機へ反撃を開始した。

F35 四機から空対空短距離ミサイルが発射された。

ウルオロシアナ戦闘機のコックピット内では、ミサイルのレーダーにロックオンされた警報が鳴り響いていた。

赤外線熱源追尾ミサイルを、囮の熱源を発するフレアで回避したウルオロシアナ戦闘機。

別のウルオロシアナ戦闘機はF35のジェット排気を捉えF35へミサイルが発射された。

F35のコックピット内でレーダーロックされた警報音が鳴り出した。

F35がミサイル回避のため、フレアを発射したところで別のウルオロシアナ戦闘機の機関砲が、鈍く硬い音と共にF35の機体に穴を開けた。

F35のコックピット内にミサイルレーダーロック音とは別の警告ランプと警告音がパイロットの目と耳に入った。

F 35からフレアが立て続けに放出されて、F35を追いかけていたウルオロシアナ戦闘機のミサイルは、囮のフレアに吸い寄せられて爆発、消滅した。

しかし、F35のジェットエンジンが止まり操縦不能に陥ったF35。

パイロットは緊急脱出のレバーを引いた。

パイロット脱出のために、コックピットを覆うキャノピーを固定しているリペットが小さな爆発と共に外れ、キャノピーは風圧で後方に吹き飛ばされて、パイロットは座席ごと射出されコックピットを飛び出した。


『F35 一機撃墜された! パイロット脱出確認! 引き続き交戦する!』

『了解、応援機母艦より四機発艦した』

『F35了解』

F35 三機のパイロットは数で勝るウルオロシアナ戦闘機へ果敢に攻撃を仕掛けた。


米F35とウルオロシアナ戦闘機が空中戦を交えているその間、ウルオロシアナ爆撃機二機と爆撃機援護の戦闘機二十機は石狩湾上空で千歳基地への攻撃体制に入った。

千歳基地に残っていた航空自衛隊のF15戦闘機が五機、基地直援機として岡部二等空佐、真田二等空佐、他3名のF15パイロットが基地上空を高高度で警戒飛行していた。

『真田、奴等を出迎えようぜ!昨日のお返しだ!』

『おう、出迎えて追い返してやろう。歓迎はできる相手じゃないからな!』

速度を上げたF15戦闘機五機はあっという間にウルオロシアナ爆撃機編隊と向かい合った。

既に陸上自衛隊各駐屯地から爆撃機編隊に向けて防空ミサイルが飛び交っていた。

爆撃機援護機であるウルオロシアナ戦闘機は編隊を崩しバラけていた。

F15戦闘機パイロット、航空二佐の岡部と真田のF15に続くF15  三機、航空自衛隊F15戦闘機 五機が、爆撃機二機と戦闘機二十機のウルオロシアナ北海道自衛隊千歳基地攻撃編隊の遥か上空からウルオロシアナ爆撃機二機目掛けて急降下を始めた。

F15の機関砲が火を吹き、爆撃機一機の翼に穴を開けた。

爆撃機は一瞬ふらついた。

『内地に落ちてほしくないから な ! 岡部、うまく海上に誘えないか?』

『難しいけどやってみよう』

F15パイロット同士の無線で各自戦闘態勢に入った。

岡部機が爆撃機正面下へ回りレーダー照射を始めた。

ウルオロシアナ戦闘機が岡部機に襲いかかった。

そのウルオロシアナ機を真田が機関砲で追撃。

方向転換しない爆撃機に、岡部機はやむなく機関砲で爆撃機の機体下から翼にかけて穴を開けた。

エンジンから火を吹く爆撃機。

丘珠飛行場

数秒後、急激に降下を始めた爆撃機の機体から大型空対地ミサイル4機が千歳基地に向けて発射された。

爆撃機の機体は大型ミサイル四機が放たれたことで、一瞬降下が止まり機体がふわりと浮いて急降下が収まったかに見えたが、再び降下を始めた。

ミサイル4機は札幌と千歳市の間にある恵庭市にある陸上自衛隊恵庭駐屯地より発射された迎撃ミサイルペトリオットにより3機が破壊され、残り1機は千歳空港の近くにあるゴルフ場に着弾した。

ウルオロシアナ爆撃機搭乗員は、急激に降下していく機体内部に収まっている大量の投下爆弾を千歳基地、千歳空港へ落とすため機体低部の爆薬庫の扉を開けた。

機体は急激に降下していた。

爆撃機パイロットは、もはや投下爆撃は無理だと判断して、乗員を守るために小さな空港に降りることを決意した。

急激に高度を下げる爆撃機は丘珠空港の滑走路に強い衝撃で着陸した。

しかし強い衝撃の着陸により、着陸ギアダウンしたタイヤがバーストして機体は滑走路に叩きつけられた。

同時に機体低部の弾薬庫の扉が開いていたことで、衝撃と共に弾薬は滑走路と機体に潰されて爆発を起こした。

爆撃機は火だるまになり滑走路を滑っていった。機体は操縦室が前方に放り出されて、あとは炎に包まれていた。

丘珠空港滑走路は使えなくなったが、陸上自衛隊に負傷者は無かった。

ウルオロシアナ爆撃機乗員は全員助からなかった。

千歳空港


一方、二機目のウルオロシアナ爆撃機援護の戦闘機が航空自衛隊F15に襲いかかった。

機関砲の閃光弾が急旋回するF15を追いかけるが、急旋回のため機関砲弾は緩い弧を描いた。

その機関砲を撃ったウルオロシアナ戦闘機の後ろにF15が食らいついた。

F15からミサイルレーダーロックをウルオロシアナ戦闘機へ照射。

即座に回避軌道をとるウルオロシアナ戦闘機は右へ急旋回を始めた。

そこへ下からF15の機関砲が唸りをあげた。

ウルオロシアナ戦闘機のジェットエンジンから黒煙が吹き出した。

その1分後、航空自衛隊小松基地から駆けつけた第六航空団F35  十機、F2  十機、 F15  十機が応援に駆け付けて小樽上空で空戦に加わった。

石狩湾沖では、米空母打撃群エイブラハムリンカーンから発艦した FA18  十機、 F35  十機が加わり、米戦闘機はウルオロシアナ戦闘機を六機撃墜、残り四機はウルオロシアナへ逃げるように引き返していった。
米戦闘機に被弾した機は無かった。

一方で、小樽沖空戦を抜け出したもう一機のウルオロシアナ爆撃機は小樽上空を過ぎたところで爆撃機から大型空対地ミサイル4機が千歳基地、千歳空港へ向けて発射された。

陸上自衛隊、恵庭駐屯地、島松駐屯地配備の高射連隊各中隊が即座に反応、短距離防空ミサイルが発射された。

千歳基地からもウルオロシアナ航空機に向けて地対空迎撃ミサイルペトリオットが即座に発射された。

被弾したウルオロシアナ戦闘機は石狩湾へ向かうものが多かった。

陸上自衛隊、恵庭駐屯地、島松駐屯地各ミサイル高射中隊はウルオロシアナ戦闘機を確実に一機一機仕留めていた。

丘珠空港を狙うウルオロシアナ戦闘機に対し丘珠駐屯地からも高射連隊によるウルオロシアナ航空機へ高射砲、短距離地対空ミサイルで防空に徹した。

札幌、小樽、千歳市民の避難はある程度進んではいたが、避難が遅れている一般市民も少なくなかった。

既に小樽、札幌、恵庭、千歳周辺には空襲Jアラートが流されて、避難の遅れた市民は地下鉄やビルの地下等に身を隠していた。

町には破壊されたミサイルや墜落した機体の残骸が降り注いでいて広い範囲で火災が起きていた。

被弾したウルオロシアナ戦闘機パイロットは北方四島へ向かうものもいればサリハンスークへ向かうものももいて、もはや航空隊としての統率も指揮もとれていなかった。

千歳空港へ向かう、もう一機の爆撃機はF15にレーダーロックをかけられてフレアを放ちながら、そのまま千歳空港を目指し機体低部の弾薬庫を開けて飛び続けた。だが、弾薬庫の左右に開く扉が片方しか開かなかった。

ウルオロシアナ爆撃機は地対空ミサイルに被弾しながら降下を始めた。

エンジンから火を吹き、もはや飛行は無理と判断した爆撃機は乗員を守るために、千歳空港に不時着を試みることにした。

爆撃機の機体は大きく損傷していた。

爆撃機は前方に見える千歳空港を目指した。

ガタガタと震える機体を必死で操るウルオロシアナ爆撃機パイロットの目前に千歳空港の滑走路が見えていた。

だが、着陸するためのランディングギヤ(車輪)が降りなかった。

胴体着陸を試みる爆撃機パイロット。

千歳空港の滑走路に胴体着陸に成功したウルオロシアナ爆撃機だったが、胴体で滑走する機体の低部弾薬庫が開いたままであったため、ウルオロシアナ爆撃機は滑走中、投下予定だった弾薬が滑走路で擦られ、滑走の衝撃で暴れる投下式爆弾の信管に他の爆弾が接触、大爆発を起こして機体は火だるまのまま滑走を続けて更に大きな爆発が起こり、機体は木っ端微塵となった。

ウルオロシアナ爆撃機の援護機であった戦闘機の生き残り数機は方向転換をして小樽沖空戦中のウルオロシアナ戦闘機に合流して、航空自衛隊機と空戦を続けたが燃料が残り少なくなり、サリハンスーク空港へ戻っていった。

一方、稚内基地でも陸上自衛隊ペトリオット部隊は善戦していた。

日本領海に入れば攻撃する、とウルオロシアナ爆撃編隊へ警告を出していた。

だが爆撃編隊は日本の領海に侵入、ペトリオット部隊は即座に攻撃を開始した。北海道自衛隊稚内基地へ爆撃機2機の空対地ミサイル8機が稚内基地へ向けて発射された。

ペトリオット迎撃ミサイルは、ウルオロシアナのミサイルを全て破壊、ウルオロシアナ爆撃機へ地対空ミサイルを発射した。

爆撃機一機を撃墜、2機目の爆撃機も稚内陸上自衛隊の地対空ミサイルで爆撃機の機体に損傷を与えた。

しかし、サリハンスークと稚内は距離も短いため、爆撃機はそのまま稚内に侵入して投下式爆弾を稚内基地に落とした。

稚内基地内の到るところに大きな穴ができて地面が抉られていた。

しかし、それは自衛隊屋外訓練敷地であり建物自体の損傷は軽微だった。
射程の長い高射隊の高射砲が火を吹き、ウルオロシアナ爆撃機はエンジンから煙を吹き出した。

爆撃機はそのまま大きく円を描いてサリハンスークへ戻っていった。

「いつくしま」航空隊


そしてサロマ湖周辺では…

大型対潜巡洋艦 1
原子力ミサイル巡洋艦 1
ミサイル駆逐艦クラス 4
揚陸艦 4
補給艦と思われる艦船 2
航空機1編隊五機、7編隊

このウルオロシアナの北海道上陸を目論む艦隊をサロマ湖上陸を阻止するためため、サロマ湖に展開する陸上自衛隊網走駐屯地より即応機動連隊が「戦闘車」「装輪装甲車」「高機動車」対戦車ヘリ、更には高射が展開している。

ウルオロシアナ航空機による陸上自衛隊、戦車部隊への攻撃が一方的に行われていた。

高射部隊も尽力していた。

分散された航空自衛隊の機数がサロマ湖防衛戦には十五機しかいなかった。

ウルオロシアナ地上攻撃機を含め、ウルオロシアナ航空機は四十機を少し越えていた。

イージス艦「まや」護衛艦「しらぬい」は本土からの援護機によりウルオロシアナ戦闘機と空戦を交えながら根室海峡を抜け、知床に配備された陸上自衛隊高射連隊に助けられながら知床を回り込みサロマ湖へ向けてウルオロシアナ戦闘機へ対空戦闘を初めるところだった。

その「まや」と「しらぬい」を見下ろしながら日本航空母艦「いつくしま」から発艦したF3三十機がサロマ湖へ向けて飛行していた。


サロマ湖では地上攻撃機の援護に、空戦を主とする戦闘機がサロマ湖上陸作戦に多く送り込まれていた。

航空自衛隊はその空戦を主とする戦闘機と交戦していた。

しかしウルオロシアナ地上攻撃機に苦戦を強いられていた。

ウルオロシアナ航空機による、四ヶ所の同時攻撃で航空自衛隊戦闘機は分散してしまっていた。

航空自衛隊松島基地と三沢基地から応援機が向かっているが、応援機が来たとしても、航空自衛隊は航空機の数で劣勢だった。

一機、また一機と自衛隊戦闘機が撃墜されていった。

防空に特化したイージス艦「はぐろ」艦隊にもダメージが見え始めていた。

ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」搭載の対潜水艦ヘリコプターが数機撃墜されていて、イージス艦隊の対潜水艦警戒が緩みつつあった。



その頃ウルオロシアナ国内では、反政府組織が翌日のウルオロシアナ大統領演説を期に、Sロマーノフ大統領暗殺を実行するため動き始めていた。

続く…

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