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撃攘の盾… 弐



敵機来襲


ウルオロシアナ本土より国後へ向かう航空機の後に、次なる航空機編隊20機を防空警戒機が捕捉。

『警戒機から各基地、各隊へ!サリハンスークより新たな航空機編隊20機捕捉! 10機はF15スクランブル2機方向へ向かうと思われる。要警戒!』

『千歳202飛行隊 一番機 岡部了解!』
『同202飛行隊 二番機 真田了解!』

千歳基地よりスクランブルした千歳202飛行隊 一番機 岡部二等空佐、二番機 真田二等空佐のF15戦闘機2機は警戒機からの無線に応えてから岡部は僚機の真田へ無線を切り替えた。

『真田!自衛隊の誓いを基に腹据えていこうぜ!』

『おぅっ!事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、国民の負託にこたえる!だな!』

『おぅっ!応えてやろうぜ!敵機レーダー捕捉!』
『二番機真田了解!』

自衛隊発足以来、初めての有事の最前線に突入した岡部と真田の士気は多勢に無勢だが頗る高まっていた。

イージス艦隊上空を轟音を轟かせて飛び去っていったスクランブルのF15戦闘機2機は、日本領空に敵機の編隊が突入したことをレーダーで確認した。

互いの距離がみるみる近付きお互いのミサイル射程に入ったと同時に、F 15のコックピット内にレーダーロックされたことを知らせる警告音が鳴り響いた。同時に敵機先頭編隊の5機からミサイルが放たれた。

『敵機先頭編隊よりミサイル発射。回避!!』

瞬く間にF15 二機に接近する敵ミサイル。

千歳202飛行隊、岡部、真田の操るF15は戦闘機の排出するエンジンの熱を感知して追尾するミサイルを回避するときに有効な、熱源と光を放つ炎のようなフレアを使用して、自分の体にのしかかる限界の重力で急旋回を始めた。

二機のF15に襲いかかった5機のミサイルのうち3機が囮のフレアで消滅した。

残りの2機のミサイルは、続けて岡部機を追いかけていた。

『ミサイル3機ロス! 2機が一番機にまだ食いついてる! 指令部! 一番二番機、敵機より攻撃を受けている!反撃の許可を! 岡部!サブタンク捨てるぞ! 』

僚機である二番機真田二等空佐が無線で叫ぶ。

『あぁ、その方が良さそうだ!』

岡部は急旋回の限界に近い重力に顔を歪めながら呟いた。

202飛行隊の一番二番機は燃料の予備タンクを機体から放出した。

岡部はサブタンクを放出しながらもう一度フレアを放った。

囮のフレアに残りのミサイル2機は消滅した。

息つく間もなくミサイルの2波が敵機より放たれた。

今度は8機のミサイルが岡部と真田のF15に襲いかかっていった。

その時、指令部より反撃許可の無線が岡部と真田の耳に飛び込んできた。

しかし、岡部、真田両機は敵機の放ったミサイルに追い回されていて反撃すらできなかった。

岡部、真田両機から目視できるほどに敵機が迫ってきたとき、敵機先頭編隊が左右に散らばるように広がっていった。

味方援軍飛来

岡部、真田の視界に米粒のような機影が見えた。

音速を越えて駆けつけた千歳202飛行隊ステルス戦闘機F35 五機と三沢302飛行隊 純国産第5世代ステルス戦闘機F3 三機、合わせて8機が敵機をレーダーロックしたことにより敵機編隊が散開したのだった。

F35 とF3 八機の後ろに隠れるように202飛行隊F15 三機がいた。

F15 三機は急上昇。太陽を背に散開した敵機上空からレーダー照射しながら機関砲を放ち敵機編隊の中へ飛び込んでいった。

F 15の機関砲は敵機三機の翼に被弾させた。敵機編隊を崩すのには十分な効果があった。

F15 三機は専守防衛の名の基にあえてミサイルを使わなかった。

しかし、これでは埒が明かないのはパイロット全員がわかっていた。

その時、ミサイルに追いかけ回されていた岡部機はフレアを使い果たしていた。

僚機の真田が岡部機を庇うようにフレアを放出したが、2機のミサイルは岡部機から離れなかった。

岡部機機体後方でジェットの排出熱により、爆発したミサイル内部の破片が尾翼に当たり、岡部機は被弾した。コントロールが乱れた岡部機に、追い討ちを掛ける残りのミサイルが岡部機の熱を関知して機体後部横で爆発した。

爆発によるミサイル内部破片が岡部機の右翼を破壊した。翼から吹き出す炎の中、岡部は頭のすぐ上にある緊急脱出のレバーを引いた。

パイロット脱出の為、キャノピーを止めているリペットが全て小さな爆発で除去され、透明なキャノピーが後方上空へと吹き飛んだ。

そのあと射出席のロケットモーターが引火し強烈なロケット噴射とともに岡部は機体から弾き出された。

『岡部機被弾!パイロット脱出確認!』

同じ202飛行隊 F15パイロット二等空佐である伊上が無線で叫んだ。

陸、海、空自 善戦す!


伊上が岡部のパラシュートを確認して視線を敵機に戻すと、伊上率いるF15編隊三機が崩した敵機編隊のうち対艦ミサイルを抱えた五機がイージス艦隊へと向かっていった。

『敵機五! 編隊より離脱! イージス艦隊へ向かう模様』

『奴等は任せてくれ、斉藤、大崎! 奴等を追うぞ!』

伊上の声に三沢302飛行隊長 加藤が応えた。

『了解!』

アフターバーナーを吹き出す302飛行隊F3三機は音速を越え敵機を追いかけた。

三沢302飛行隊長、加藤の後に続く斉藤、大崎。

『各機データリンク確認後一斉攻撃に入れ! 今度は躊躇なく撃て!』

『了解!』
『了解』

五機を追うステルス戦闘機F3 三機は各機ネットワークデータリンクにより同じ敵機にミサイルが被らないようになっていた。敵機を有効射程に捉えた三沢203飛行隊三機は、赤外線熱源追尾5機のミサイルを撃ち放った。

敵機五機はレーダーロックされ陣形を崩しバラバラになった。

敵機それぞれがフレアを撃ち放っていたが二機が被弾して墜落した。

敵機二機のパイロットは脱出して二つのパラシュートが開いていた。

残りの三機はフレアを吐き出し回避行動をとりながら、イージス艦隊に近付いていった。

敵機三機に追い撃ちをかける三沢飛行隊三機の短距離空対空ミサイルが二機の敵機を撃墜した。

残る一機は大きく旋回しながらフレアを放ち国後方向へ飛び去った。

入れ替わるように敵機二十機編隊が国後より出撃していた。

海上自衛隊イージス艦隊へと向かっていた。

その二十機の敵機に立ち向かうF3 三機。

三沢302飛行隊三機はミサイル射程に入ると同時に、先制攻撃で一機に抱える4基の長距離ミサイルをF3 三機はネットワークデータリンクにより12機発射した。

F3の機体が、僅かにふわりと上昇した。

敵機ミサイルより射程の長い、アウトレンジ長距離ミサイルは敵機編隊を崩し数秒後に六機の敵機を撃墜した。

その数秒後、敵機数機からミサイルが放たれたが、ステルス特性を持つF3の機体を捉えられず、敵ミサイルは行き場を失ったように四方八方へ飛び去った。

三沢302飛行隊第5世代F3三機とウルオロシアナ第4世代戦闘機SU 27十一機が急接近。

しかし、勝敗は歴善だった。

F3の短距離ミサイルは、敵機を更に六機撃墜した。

しかし燃料も残り少なくミサイルも撃ち尽くしたF3編隊は基地へ戻らざるを得なくなった。


残りの敵機八機は、イージス艦「はぐろ」の防衛システムとデータリンク連携した護衛艦「さみだれ」「きりさめ」両艦より艦対空ミサイルが8機発射されたことで、ウルオロシアナ戦闘機は対艦ミサイルの射程に入ると同時にイージス艦「はぐろ」ヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」に照準を合わせてウルオロシアナSU 27戦闘機八機は対艦ミサイルを放ち急旋回を始めた。

イージス艦「はぐろ」のレーダーには再び飛来した弾道ミサイル4機のうち3機を打ち落とし、消えたばかりの赤い点と入れ替わるように、敵機八機と敵機の放った対艦ミサイル8機を捉えていた。

『敵機八、対艦ミサイル8、レーダーロック!』

『レーダーロック照準よし!』

『一つ残らず打ち落とせ!』

『てっ!』

レーダー監視から艦対空ミサイル発射の艦長の合図まで流れるようなスムーズさで、データリンク連携の護衛艦「さみだれ」「きりさめ」両艦から再び艦対空ミサイルが発射され、イージス艦「はぐろ」からも艦対空ミサイルが発射された。

イージス艦隊から発射された艦対空ミサイルは、敵対艦ミサイル6機を破壊、ウルオロシアナ戦闘機五機撃墜、ミサイル残り2機はイージス艦「はぐろ」と護衛艦「きりさめ」の対空機関砲ファランクスにより破壊された。



一方、稚内基地ではイージス艦が撃ち漏らした弾道ミサイルが基地へ向かっていることで、ミサイル迎撃部隊はそのミサイルを打ち落とすため待ち構えていた。

基地周辺には空襲アラート、弾道ミサイルアラートが鳴り響いていた。

『ミサイル大気圏突入!迎撃射程に入りました』

『迎撃ミサイル発射!』

『てっ!』

隊員の報告を受けた稚内陸上自衛隊ミサイル迎撃部隊長、日下部は迎撃ミサイルの発射指示を出した。

数年前のミサイル防衛システムであるペトリオットは命中精度を上げるためミサイル1機に対しペトリオットから2機の迎撃ミサイルを発射していたが、ミサイルの命中精度も格段に上がりペトリオットも改良されミサイル防衛は飛躍的に改善、向上されていた。


隊員皆が固唾を飲んで迎撃ミサイルの軌跡を見守っていた。

数十秒後、迎撃ミサイルはウルオロシアナ連邦のミサイルを破壊した。


稚内基地周辺の一部市民は、ペトリオット(PAC3)の迎撃ミサイルが上空へ飛んでいくのを、何事かと見ていた。

そして遥か上空で小さな爆発が起きたのを見て、漸くJアラートの意味を理解し震え上がっていた。

今までが隣国から試行ミサイルが打ち上げられる度にJアラートが鳴っていた事に慣れも出ていた所に、本当に飛んできたミサイルを自衛隊が破壊した事に肝を冷やしていた。

この光景を見た稚内基地周辺の市民は、何が起きたのか把握しようと、スマホやラジオ、テレビで確認して総理大臣の記者会見で日本がウルオロシアナに対して自衛権の行使とともに防衛出動に踏み切ったことを知るのだった。



続く…

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