撃攘の盾… 玖
護衛艦「ゆうだち」乗員捜索
第3護衛艦隊の「ゆうだち」がウルオロシアナ戦闘機から放たれた対艦ミサイルにより撃沈された。
イージス艦「まや」護衛艦「しらぬい」は、「ゆうだち」乗員の救助にあたった。
しかし、対艦ミサイルは「ゆうだち」艦内に潜り込み爆発、艦内の弾薬に誘爆し大爆発を起こして船体は二つに折れて轟沈してしまい生存者が見つかることはなかった。
「まや」「しらぬい」乗員の中には「ゆうだち」轟沈を目の当たりにして、本当の戦争の恐怖に怖じ気付いてしまうものもいた。
その状況の中でも、「まや」「しらぬい」からは、ウルオロシアナの弾道ミサイルに対し迎撃ミサイルが発射されていた。
北方四島からの敵機第2波は、三沢基地からのドローン対空戦闘機七機による14機の、アウトレンジ空対空ミサイルにより八機の命中を確認した。
ドローンは撃ちっぱなしのアウトレンジミサイルをイージス艦「まや」とデータリンクして放つと、敵機と交戦する前に基地に帰投できることで、ドローンは無傷で三沢基地へ戻った。
残りの敵機も三沢302、イージス艦「まや」艦隊援護小林隊が根室中標津空港から燃料、弾薬補給後F3が急ぎ再出撃していて、敵機第2波と交戦、残りの敵機Su 27, Su 33はF3の短距離空対空ミサイルと機関砲で撃墜、または被弾して追い返されることとなった。
その後、「ゆうだち」乗員の捜索と救助を救難ヘリコプターに託して、イージス艦「まや」護衛艦「しらぬい」は補給艦「とわだ」より燃料と弾薬、その他必要な物資を積み込み補給艦「とわだ」を残しサロマ湖へ向かった。
その頃、陸上自衛隊網走駐屯地、サロマ湖周辺、紋別空港、女満別空港には三沢、千歳、稚内、札幌、各基地から対戦車ヘリ部隊が集結し始めていた。
セルフコントロールと無差別攻撃
同時に戦車部隊も、ウルオロシアナサロマ湖上陸を阻止するべく、サロマ湖を目指し移動していた。
その時、オホーツク沖のウルオロシアナミサイル艦より長距離通常ミサイル8基が紋別空港と女満別空港に向けて発射された。
ウルオロシアナ大統領は空港制圧のため、日本人、ウルオロシアナ人が未だに避難を続けている空港に対し攻撃命令を出したのだった。
ウルオロシアナミサイル艦乗員は戸惑いを見せた。
命令には従わなければならない、しかし虐殺行為のようなことはしたくないという抵抗感、やりたくないがやらなければならないというセルフコントロールに苛まれていた。
だが、結局は命令に背くわけにはいかず、ミサイル艦2艦よりミサイルが放たれてしまった。
こうした命令が重なる毎に、戦争への罪悪感は次第に麻痺していくのだった。
ウルオロシアナミサイル艦から長距離通常ミサイルが発射されたと同時に、日本の早期警戒機から洋上よりミサイル発射確認、予測着弾地点、紋別空港と女満別空港と各基地に無線が入った。
女満別空港では、最後の民間機が避難民を乗せて滑走路に出たところだった。
自衛隊網走駐屯地より女満別空港へ緊急避難を告げる無線と、ミサイル飛来のJアラートが鳴り響いた。
自衛隊からの連絡により、女満別空港管制塔から滑走路にでた避難者を乗せた民間機へ緊急離陸の指示が出された。
駐機していた対戦車ヘリコプター24機も一斉に飛び立った。
一方、紋別空港では避難者が民間機に搭乗中だった。
Jアラートでパニックに陥いった避難民の一部の者が、我先にと飛行機に乗り込もうとして他の避難民と取っ組み合いの喧嘩になっていた。
その間、怖いながらも多くの日本人は列を乱さないよう努めていた。
紋別空港管制塔は離陸準備ができた機体から順次緊急離陸の指示を出した。
各空港に配備されていた陸上自衛隊も短距離地対空迎撃ミサイルで応戦。
紋別空港では、防空ミサイルを逃れた敵巡航ミサイルが空港手前で大きく上昇して降下するときにレーダー追尾地対空機関砲によりミサイルは空港の先300メートルのところで爆発した。
離陸待機の民間機が残り2機になったところで、ミサイルが空港敷地内滑走路脇に着弾、爆発した。
更に紋別空港に押し寄せるウルオロシアナ長距離巡航ミサイル2機を迎撃ミサイルが破壊、3機目がレーダー追尾対空機関砲が破壊した。4機目が空港建物の数十メートル横に着弾、最後の1機が空港の至近距離で対空機関砲により破壊され、ミサイルの破片が空港の敷地内に降り注いだ。
日本国内の反日議員とマスコミ
ウグリャーノ軍事進行の時のように、ウルオロシアナ連邦は日本に対しても無差別攻撃を始めたのだった。
日本政府が孟抗議するも、北海道を我が国に返還すれば無駄な被害も血を流すことも無い、被害を拡大させたのも日本の愚かで無駄な抵抗によるもの、と日本を弱小国家として見下すウルオロシアナ大統領、Sロマーノフの身勝手極まりない返答が返ってくるだけだった。
日本国、内閣総理大臣 木嶋雄一は国民に対して記者会見を開き、それまでの経緯とウルオロシアナ連邦国家に対し話し合いと共に、徹底した防衛でウルオロシアナ連邦国家の北海道上陸を阻止する、と強い意思を見せた。
しかし、北海道にミサイルが飛来して、民間空港を攻撃しているにも関わらず、自衛隊がいるからこんなことになるんだ、自衛隊が戦争を始めたようなものだ、等、一般人に交ざり一部の二重国籍を持つ議員や北鮮共国家との繋がりを匂わせる議員、日本に帰化した議員までもが同じことを捲し立てる始末となった。
元は外国籍の反日議員、反日マスコミも騒ぎ立てる始末だった。
だが、多くの国民や国会議員は自衛隊の動向を固唾を飲んで見守っていた。
ウルオロシアナ国内でも、日本の民間空港をミサイル攻撃したことを反政府組織のレジスタンスは、北海道で反戦をウルオロシアナ本国へ訴えかけるウルオロシアナ人の若い夫婦のリアルタイムで発信するSNSで把握していた。
稚内からサロマ湖へ向かっていたウルオロシアナ人の若い夫婦は、紋別空港にミサイルが着弾したところを、偶然スマホで撮影することができたので生配信をしたのだった。
ウルオロシアナの反政府組織リーダーは、前回のウグリャーノ軍事進行で世界から経済制裁を受け、経済危機を迎えたにも関わらず、再び同じ過ちを繰り返しウルオロシアナを破滅させようとする自国政府に嫌悪感を抱きつつ、大統領の暗殺計画を企てるのだった。
潜水艦「やまぎり」
ウルオロシアナ揚陸艦4艦、沈んだ空母艦隊から駆逐艦2艦を引き連れ旗艦であるロプチャニクスはサロマ湖まであと1時間のところまで来ていた。
海面から800メートルの海中に、静かに潜む日本潜水艦「やまぎり」の上の海上を揚陸艦隊が通りすぎていった。
『アップ30度』
潜水艦艦長の指示が静かな艦内に響いた。
揚陸艦隊のスクリューの気泡に紛れながら「やまぎり」は静かに艦前部をアップ30度に上げた。
「やまぎり」の魚雷発射管扉が静かに開いた。
『短魚雷、1番3番 2番4番発射』
揚陸艦のスクリュー音をインプットされた4本の魚雷は、55ノット(約100キロ)のスピードでロプチャニクスのスクリュー音を追いかけていった。
『ダウン20度、急速潜航』
「やまぎり」は魚雷発射後、1000メートルの海中へと潜航した。
この深度まで潜れるのは世界で日本の潜水艦のみであった。
揚陸艦隊の駆逐艦がソナーで日本の魚雷を捉えた。
『後方より魚雷4! 55ノット!距離600!デコイ発射』
駆逐艦2艦から、囮のデコイが発射された。
しかし、駆逐艦のデコイを無視するかのように揚陸艦ロプチャニクスのスクリューを追いかける短魚雷。
『魚雷4、デコイに掛からず! 距離300デコイ発射!』
揚陸艦から再びデコイが発射された。
魚雷2本が揚陸艦のデコイ(囮)に釣られて爆発。
残り2本は55ノットのスピードで揚陸艦のスクリューを壊し艦尾で爆発した。
揚陸艦の艦尾が跳ね上がり、船底に大きな穴が空いて艦内に海水が流れ込んだ。
重たい戦車を20両積んでいる揚陸艦はあっという間に沈んでいった。
乗員は慌てて次々と海へ飛び込んでいった。
その状況をディーゼル、ハルキロ級潜水艦と原潜モノマルフ級潜水艦はサロマ湖沖の300メートル海中で無線アンテナを伸ばし浮かべたまま聞いていた。
そして、白々と夜が明けるオホーツク海の黎明の刻。
ウルオロシアナハルキロ級、モノマルフ級潜水艦の無線アンテナを艦内に引き込み戻す音を、1キロ離れたところで海中に止まっていた国籍不明の潜水艦が捉えていた。
続く…
表紙画PhotoAC 補給艦「ましゅう」
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