仁と義 13章 仁侠短編小説抗争編 8 (シリアスコメディ)
頭鬼組集結
膝織一家に拉致された頭鬼組、レインボーのミオと石頭一家の立石尚樹救出の抗争後、この拉致事件と抗争は警察に知れることは無かった。
しかし、頭鬼組と頭鬼組分家のレインボー組に、膝織一家 舎弟頭 八木亮一と若頭 安曇孝信、二人の幹部と多数の組員がヤられたことで、膝織一家組長 膝織忠義は報復として石頭一家組長宅と頭鬼組事務所に爆弾を仕掛けようとしたが失敗。
同じ日、ミオと立石尚樹救出に協力した、パブスナックレインボー常連客である、タクシードライバーの坂下一雄が事故死した。
坂下か運転していた信号待ちのタクシーに大型ダンプで追突した事故だった。
ダンプは盗難車で、ダンプの運転手は逃走するも、すぐに身柄を確保された。
ダンプ運転手の男は膝織一家の鉄砲玉組員であるが、それを隠して盗難車であるため気が動転してその場を立ち去ったと自供。
事故当初、警察はタクシーの乗客が石頭一家組員と知り、ヤクザ同士の抗争を疑ったが、ダンプ運転手はヤクザとは無関係の窃盗犯ということで車両同士の死亡事故として処理された。
タクシードライバー坂下一雄はレインボー組の一人、ティップの客であり恋人のような存在だった。
これを切っ掛けに頭鬼組本家、頭鬼組分家パブスナック レインボー組、石頭一家と大きな組織である膝織一家との抗争が激化する報復合戦が始まるのである。
頭鬼組本家
坂下の死亡事故の翌日。
関東頭鬼組 組長 頭鬼洋次郎
舎弟頭 新島浩二
若頭 阿久津龍一
若頭補佐 石垣正樹
相談役 相田真二
頭鬼組分家 レインボー組
ラン、メッチ、ナッチ、ティップと組員カズ、ケン、ヒロ、ユキ他組員20名が本部事務所に集まり、残り10名が組長宅護衛についた。
『‥‥まだハッキリしたことは分からないが、十中八九、膝織の仕業だと俺も叔父貴も思ってる。
パブスナックレインボーのママ殺しの件に膝織が関わっていたように堅気の者にも平気で殺しやる奴らだ。
皆も十分注意してくれ。それから、うちの大事なシノギであるレインボーだが、頭鬼組、石頭一家と膝織一家のシマが隣り合う最前線だ。
石頭一家は組長宅に爆弾仕掛けられて警察が張り付いてる状態だ。膝織がレインボーにカチコミした時に石頭は動きにくい事になる。
そこでカズ、ケン、ヒロ、ユキはレインボーの隣のアパートに空部屋があるから万が一の時の為に武器持って待機していてくれ。この抗争にケリがつくまででいい。飯はデリバリーで我慢してくれ。酒は飲んでも構わないが酔っ払うな。まぁ、住み込み警備で缶詰めになるが我慢してくれ。デリバリーの飯代は組払いだ。頼むぞ』
『はい!』
『はい!』
『はい!』
『はい!』
若頭 阿久津龍一はカズ、ケン、ヒロ、ユキは4人同時に返事をした。
『膝織一家はうちと石頭一家頭数揃えても到底追いつかない人数だ。
だが、膝織一家がミオと石頭の立石さん救出に手を貸してくれた堅気の坂下さんを殺ったのが膝織だと分かったら落とし前つけさせてやる。
そうなったら膝織の息子拐って、親父と叔父貴、俺で膝織に責任取らせてやる』
阿久津龍一は、そう言ってレインボーのティップをチラッと見た。
『そん時ゃ、みんな!腹くくってくれ!ラン、今はミオが欠けて4人だけだ。もし膝織のカチコミがあったらすぐにカズ達にも声かけろ!いいな!』
『はい!』
ランは若頭 阿久津龍一を見て返事をした。
その時、ランは舎弟頭である新島の熱い視線を感じて顔が熱くなるのを感じた。
メッチ、ナッチ、ティップは頬を赤くしたランを見て口元だけで笑った。
パブスナックレインボー
その日の午後6時、パブスナックレインボーは通常通り営業を始めた。
パブスナックレインボーの隣のアパートにはカズ、ケン、ヒロ、ユキの4人が、万が一の膝織一家レインボー襲撃に備え待機していた。
『ランちゃん。叔父貴の視線熱かったねぇ』
ナッチがランを見てニヤニヤしながらボックステーブルを拭いた。
『だよね~、叔父貴と子のイケナイ恋愛の予感だよ』
メッチもそう言って、ランの頬を指でツンツンした。
『なんかさー、何ていうか‥‥叔父貴に見られると胸のあたりがキュウ〜ってなるんだよね‥‥』
ランがカウンターで氷をアイスピックで砕きながらボソボソ独り言のように呟いた。
『それが恋ってもんじゃない?ランちゃん自分でも気が付かないでいたんじゃない?
元々同性愛かバイセクシャルだってこと。
意外と自分で気付かない人多いんだよ。
社長(組長)もそれを見抜いてたんだよきっと。アタシも見抜かれてこのパブスナックレインボーに入れられたんだもん』
ティップもそう言って、おしぼりを保温器に入れながらランを見て微笑んだ。
ティップの目の周りが赤く、坂下の死に対する哀しみが表に現れているのを見たランは、ティップを見て胸を痛めるのだった。
それからランは焼きそばを4人分作り、タッパー4つに分けて、店の裏口から隣のアパートに居るカズ達に差し入れた。
『カズさん、(まかない)の差し入れだよ。お腹空いたら食べてね』
『おぉ、ラン、ありがてぇ。今、なに食べようか皆で話してたとこだよ』
『はい、これ』
ランはカズに焼きそばを詰めたタッパー4つが入った袋を渡して部屋を覗いた。
6畳と四畳半の畳二部屋。
『あら、意外と広くて綺麗なんだね。あっ、警棒とスタンガン。アタシのと同じじゃん。通販?』
『うん、通販。届いたばかりだよ。ランが使ってるの見て使いやすそうだったからな』
『使いやすいよ。取り出しやすいし』
ランはそう言って短いスカートを捲って見せた。
両足太もものベルトに引っ掛けられている右太ももの伸縮特殊警棒、左太ももベルトのスタンガンを見せた。
『じゃあ、何かあったら電話するね』
ランはそう言って部屋を出ていった。
『‥‥赤パンだったな‥‥』
『ランがあのマサ(一之江将一)だとは信じられないよ』
『歳も近いし惚れちゃうよな、思い切り女の匂い残していきやがって‥‥』
『声も組に来た時のマサとは思えねぇよな。赤パンオカズにしよ』
『トイレか風呂でやってくれよな』
4人それぞれが思い思いに呟いた。
第一の刺客
パブスナックレインボー営業開始1時間後、仕事帰りの客がポツポツ入って来た頃、見るからに柄の悪い5人の若い男達が店に入ってきた。
別のボックス席にいる客とナッチを睨みつける男達。
『いらっしゃいませ』
ランが5人の男達をボックス席へと促した。
『この店で一番高い酒持ってきて』
ボックス席に座るなり5人の男の中の一人がランを見て注文した。
『金ならあるから心配すんな』
男はテーブルの上に分厚く膨らんだ財布を置いた。
『かしこまりました。一番高いお酒お持ちします』
テーブルを離れようとしたランのお尻を撫でる一人の男。
『お客様、スタッフへのボディタッチは禁止です。次同じ事をするようであればお店を出てもらうことになります。私、この店のママを務めさせていただいている身ですのでスタッフへのボディタッチは固くお断りします』
ランはそう言って自分のお尻を触った男に名刺を渡した。
『そうなんだ、分かった分かった。早く酒持ってこいよ』
別のボックス席の客に着いているナッチは男達を見ていた。
ヤンキー風のチャラい男達はナッチ達と同じ位の歳だと見た。
『何見てんだよ!抱いて欲しいんなら抱いてやるぜ?そんなおっさんより楽しませてやるよ』
『いえ、結構です。私は精力よりオジサマの包容力の方が好きなので』
ナッチはそう言ってニッコリ笑って見せた。
『一番安いドンペリを50000円で、チャージ料一人30000。私達のドリンク代は一杯7000でいくよ』
ランがカウンター内のメッチに囁いた。
『オッケー』
メッチがオッケーサインで返事をした。
『じゃあアタシはドリンクいっぱい飲んじゃお〜っと』
『うん、そうして。多分彼奴等膝織の刺客だよ』
『もし触られたら痣ができるくらい抓ってやる』
ティップは保温器からおしぼりを5つ取り出しお盆に乗せて、カウンターを離れ男達のボックス席へ行った。
『いらっしゃいませ〜。お兄さんたち始めてですよね?ティップと言います。宜しくお願いしますぅ〜』
ティップは一人ずつおしぼりのビニールを外し、名刺と一緒に手渡した。
それから、5人とは対にテーブルを挟んで、ティップは小さな椅子に座った。
『カズさん、今店にチャラい男達5人が来た。ちょっと様子見るね』
『分かった。暴れるようなことがあったらすぐ電話くれ』
『はい』
メッチはカウンター内で、隣のアパートに居るカズ達に怪しい男達5人が来たことを伝えた。
カズ達は伸縮の特殊警棒とスタンガンを手元に置いた。
続く。。。
主な登場人物
関東頭鬼組
組長 頭鬼洋次郎(48)
若頭 阿久津龍一(38)
若頭補佐 石垣正樹(36)
舎弟頭 新島浩二(37)
相談役 相田真二(38)
構成員
荒巻和幸 通称カズ(23)
三澤謙二 通称ケン(25)
須藤弘道 通称ヒロ(23)
小林幸弘 通称ユキ(23)
他 30名
パブスナック レインボー組メンバー💕
メッチ
木ノ内健(20)(きのうちたけし)
(めんちきることが多い。何でも武器にする)
ナッチ
中沢義男(20)(なかざわよしお)
(よくナイフをちらつかせる)
ティップ
榊枝真二(20)(さかきえだしんじ)
(ダーツの矢を数本いつも太股に隠している)
ミオ
安桜芙美乃(20)(あさくらふみお)
(アイスピックを両足太股に6本常時備えている)
ラン
一之江将一(20)(いちのえまさかず)
(通販で買った伸縮警棒とスタンガンを持つ)
タクシードライバー
坂下一雄(さかしたかずお)
石頭一家
代表 石頭博 (49)(いしずひろし)
舎弟頭 水谷雄一(38) (みずたにゆういち)
若頭 三浦翔吾(37)(みうらしょうご)
若頭補佐 小澤誠 (36)(おざわまこと)
相談役 立石尚樹(35)(たていしなおき) (ミオの恋人)
組員40名
膝織一家
代表 膝織忠義(ひざおりただよし)
膝織一家舎弟頭 八木亮一(やぎりょういち)
若頭 安曇孝信(あずみたかのぶ)