仁と義 6章 仁侠短編小説 抗争編 1(シリアスコメディ)
膝織一家組長、膝折忠義
頭鬼組分家、パブスナック レインボーにおいて、膝織一家組員5人が警察に逮捕されてから7日目。
レインボー組と石頭一家の立石尚樹に組員を警察に売られて、殺人、死体遺棄事件という重大な事件が発覚した。
それにより、膝織一家に泥を塗った組員5人は素より、石頭(いしず)一家の立石尚樹、頭鬼組分家であるレインボー組5人に落とし前をつけさせようとしていた。
膝織一家の名前、誇りを著しく損なわれて腸が煮え繰り返る膝織一家代表「膝織忠美(ひざおりただよし)」52歳は顎に手を当て、少し伸びた髭を撫でるように触りながら、何かを考えていた。
「どうにも我慢ならねぇ‥。うちのメンツ潰して同じヤクザの曲にデコ助にチヤホヤされやがって!落とし前つけさせねぇとな‥‥」
頭鬼組、石頭一家よりも大きな組織である膝織一家、その代表 膝折忠義(ひざおりただよし)は石頭一家の幹部と頭鬼組分家、レインボーの組員拉致を若頭の水江雅之(みずのえまさゆき)に指示した。
「おやじさん、組員しょっ引かれたばかりだから、ここは大人しくしといた方がいいんじゃ‥‥」
「うるせぇ、マサ!ガタガタぬかすんじゃねぇ!イモ引いてねぇで組員に指示してこいや!」
こうして、膝織一家若衆6人に頭鬼組幹部とレインボー組の拉致が指示された。
ミオと尚樹のアフターデート
その夜、スナックレインボーでは営業を終えようとしていた。
「なぁ、ミオ。仕事終わったら飯食いに行かないか?ミオ動きっぱなしで腹減ってるだろ?」
スナックレインボーのミオに、想いを寄せる石頭一家の立石尚樹は、ミオにアフターの誘いをかけた。
「うん、お腹空いてる。何食べさせてくれるの?」
「お好きなものを‥‥と言いたいとこだけど駅前のラーメン屋か牛丼屋くらいしか開いてないよな‥‥」
「アタシラーメン食べたい。ラン、アタシ尚樹とアフターしてくる」
立石尚樹以外の最後の客を送り出したランに、ミオは尚樹とのアフターを告げた。
「オッケー、叔父貴が言ってたけど、今日膝織の奴等が本家の周りうろうろしてたっていってたから気を付けてね。念の為アイスピック仕込んどいたほうがいいかもよ」
「おぉ、そうなんだ。この前の報復?かな?」
「叔父貴はそう言ってたよ」
「そうか〜、わかった。2〜3本仕込んどくよ」
「ミオ、デートならシャワカン(シャワーで腸内洗浄)も忘れないようにね〜💕」
ナッチがミオの耳元で囁いた。
「まだプラトニックじゃい!」
ミオが照れ隠しにナッチのお尻を叩いた。
「ミオ、勝負下着も忘れないようにね〜💕」
そう言ってボックステーブルを拭き終わったティップがミオのスカートを捲った。
「まだプラトニックだってば」
お返しにティップのスカートを捲るミオ。
「はい、ゴム💕」
ニヤけたメッチがコンドームを渡した。
「持ってるわい!」
ミオの声に「持ってんのかい😁」とラン、ナッチ、メッチ、ティップの声が見事にシンクロした。
立石尚樹には5人の会話は聞こえてなくて、ミオの「持ってるわい!」の大きな声に尚樹の頭の中は???が浮かんでいた。
実際、ミオと尚樹は肉体関係を持っていなかった。
深夜1時過ぎ、パブスナックレインボーは営業を終えた。
「じゃ、ラン。アフター行ってくるね」
「気を付けてね」
心配そうに見送るラン。
「行ってらっしゃい💕」
何処から持ってきたのかシャワーヘッドを持ち、手を振るナッチ。
「いってらっしゃーい💕」
赤い下着を旗のように振るティップ。
「行ってらっしゃ〜い💕」
コンドームの箱を持ち手を振るメッチ。
「みんなどうしたんだ?」
「しらな〜い。早くラーメン食べに行こ」
尚樹の言葉にしらを切るミオ。
尚樹がミオをアフターに誘うのは2回目だった。
ミオは尚樹から身体を求められれば、素直に受ける気持ちでいた。
ピンクの小さく派手な下着も持ってきた。
既に性転換手術を終えているミオだが、まだ誰とも肉体関係を持っていなかった。
何時しか、初めての人は尚樹が良いとミオは想っていた。
「ねぇ、尚樹。ラーメンフルトッピングしてもいい?」
「もちろん。フルトッピングか〜。チャーシュー麺に追加チャーシュー、玉子、のり、コーンくらいか?」
「あと搾菜かな。おなかすいた〜」
「搾菜は乗せ放題だな、あのラーメン屋なら」
そんな事を話しながら終電も無くなった、人もまばらな駅前のバスロータリーの横を歩いている二人の後ろから3人の男がミオと尚樹の後ろに迫っていた。
拐われるミオと尚樹
一人の男の手にはナイフが握られていた。
3人の男達がミオと尚樹に近付いたところで走り出した。
ナイフを持っていた男が躓いて尚樹の後ろに勢い余ってぶつかった。
後ろの気配に、気付いた尚樹が振り向こうとした時に、躓いた男のナイフが深々と尚樹の背中の腰の上辺りに刺さった。
「なんだテメェら!」
尚樹はそう言いながら膝を突いた。
「尚樹!?」
駆け寄るミオ。
「お前らどこのもんだ?石頭一家と頭鬼組に喧嘩売ってタダじゃ済まさないからな?」
「うるせぇ!おいっ!二人ともかっ拐うぞ!」
バスロータリーにワゴン車が停まった。
ミオと尚樹はワゴン車に押し込められた。
ワゴン車は急発進してバスロータリーを出ていった。
「バカ野郎!お前、ナイフは脅すだけだろ!何で刺しちまったんだよ!」
「すすす、すいません!躓いちゃって!」
「躓いちゃってじゃねぇよ!」
「とりあえず倉庫に行くぞ!兄貴が来てから考えよう」
そんな男達の会話を目隠しされたミオは聞いていた。
追跡
ミオと尚樹が拐われるところを見ていた、パブスナックレインボー常連客であり送迎タクシーもしているタクシードライバー坂下一雄(さかしたかずお)はパブスナックレインボーに電話をかけた。
「はい、パブスナックレインボーです」
売り上げと明日仕入れる材料と酒を見積っていたランは一人で店にいた。
「あ、ラン?ママか?」
「はい、ランです。もう営業は終了してますが‥どちら様ですか?」
「ラン、居てくれて良かった。◯◯タクシーの坂下だけど、ミオは帰った?」
「あ、坂下さん、いつもありがとうございます。ミオなら30分程前に帰りましたよ」
「もしかして石頭一家の立石さんとアフターしてたりする?」
「あら、よくご存じで。ミオと尚樹さんならアフターで帰りましたよ?どうかしたのですか?」
「いや、ハッキリ顔は見えなかったんだけど‥‥立石さんらしい人とミオに似た人が車に押し込められたのを見たんだよ。男の人は膝を突いていたんだ。怪我してるような感じだった。ミオが無事か確かめられるかな?」
「わかりました。ミオのスマホに電話かけてみます。折り返し電話してもいいですか?」
「大丈夫。今夜は夜勤だから電話して。俺もちょっと心配だからさ」
「すみません、後で電話します」
ランはそう言って坂下からの電話を切った。
すぐにミオのスマホに電話をかけた。
10回コールでもミオは電話に出なかった。
次に立石尚樹の携帯にも電話をかけてみた。
15回コールでも電話は繋がらなかった。
ランはミオと尚樹が拐われたかもしれないと言い、メッチ、ナッチ、ティップを呼び戻した。
ランはタクシードライバーの坂下に店に来てほしいと電話をかけた。
「10分もしないうちにメッチ、ナッチ、ティップが店に戻ってきた」
坂下のタクシーも店に着いていた。
「坂下さん、車の特徴覚えてます?」
ランは坂下に車の特徴を聞いた。
「もちろん覚えてる。白のハイエースだ。ナンバーは下二桁25だった」
「ありがとう、坂下さん。車探し手を貸してもらえませんか?料金はちゃんと払います」
「あぁ、もちろん。俺もミオと立石さんが心配だからさ。俺が車の特徴知ってるから」
ランの言葉に応える坂下。
「ありがとう坂下さん。たぶん膝織の仕業だと思う。膝織のシマに行ってみよう」
「うん、行こう」
ナッチは投げナイフを両足太ももベルトに6本づつ、12本を挿し込んだ。
メッチはメリケンサック2つを太ももベルトに装着。
ティップも太ももベルトにダーツの矢を片足6本、両足で12本の1ダースを挿し込んだ。
ランは通販で買った伸縮警棒とスタンガンを太ももベルトに装着した。
ランは頭鬼組本家と分家にミオと立石尚樹が拐われたかもしれないから膝織のシマにレインボー4人で探しに行く。と電話で伝えた。
「ラン、無茶するなよ。石頭には俺から連絡しておく。場所が分かったら電話くれ、すぐに向かう」
舎弟頭の新島浩二はそう言ってランからの電話を切った。
「じゃあ坂下さん、お願いします」
「膝織一家の倉庫らしい場所は行ったことあるから、そこいってみよう」
「お願いします」
レインボー4人とタクシードライバー坂下は店を後に膝折のシマへ向かった。
続く。。。
関東頭鬼組 組長 頭鬼洋次郎(48)
若頭 阿久津龍一(38)
舎弟頭 新島浩二(37)
相談役 相田真二(38)
構成員 荒巻和幸 通称カズ(23)
三澤謙二 通称ケン(25)
須藤弘道 通称ヒロ(23)
小林幸弘 通称ユキ(23)
パブスナック レインボー組メンバー💕
メッチ 木ノ内健(20)(きのうちたけし)
(めんちきることが多い。何でも武器にする)
ナッチ 中沢義男(20)(なかざわよしお)
(よくナイフをちらつかせる)
ティップ 榊枝真二(20)(さかきえだしんじ)
(ダーツの矢を数本いつも太股に隠している)
ミオ 安桜芙美乃(20)(あさくらふみお)
(アイスピックを両足太股に6本常時備えている)
ラン 一之江将一(20)(いちのえまさかず)
(通販で買った伸縮警棒とスタンガンを持つ)
石頭一家の相談役
相談役 立石尚樹 (ミオの恋人)
仁と義、今回も最後まで読んで下さりありがとうございました♪