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本の学び 宇宙気分

『神様の御用人』 
 浅葉なつ
『からだは星からできている』 
 佐治晴夫

6年前かな?
香川県で
お遍路歩きイベントに
参加したとき

ふと疑問が湧いてきた

お寺と神社の違いって
なんだっけ?


そんなときに
出会った本が

『神様の御用人』

とにかく
発想がおもしろい

人が神様たちの悩みに
寄り添って
人が神様を助ける物語


方位神という
狐神との出会いから
“御用人”のお役目が
はじまる


「真剣な神祭りがあって
初めてもたらされる神威
であるというのに

小銭を投げつけ
おざなりな拝で祈願を唱え
なぜ
それで望みが通ると思うのか
甚だ解せぬわ」

と物申す狐神は
神の威厳を振りかざす
時代錯誤的神様

そして
神様相手に
対等なタメ口
だけど
心根の優しい良彦


この凸凹コンビの
じゃれあいが
微笑ましい


“神とは
人間など圧倒的に超越した
万能の存在であるはず”

と思っていた

神様とは
神社に祀られ
ただ願い事を聞いてくれる
都合のいいもの
としか認識していなかった

その存在すら
心から信じてはいなかった”



だけど
神様たちは今
不甲斐ない気持ちなどで
“存在意義”を見失っている


実は
良彦自身も
彼の人生で
最大級の絶望の只中

人の(神の)
辛い気持ち
苦しみが
よくわかる


「あんたの力が弱くなったのは
正しい神祭りが減ったせいだろ?
人間のせいじゃん?」

と慰める良彦に

「葛城の山に宿る
“精霊”のような存在だった僕を
“神”として祀ることで
力を与えてくれたのは人間なんだ」

「僕はその礼を尽くさないわけにいかない」

一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)の
力は弱っているけど

神の意志や絶大な慈愛を
良彦は感じとる


もしも自分だったら?
どう感じる?


ただそばにいてくれた
親友のことを想い出し


「言葉がなくても
そばにいると思うだけで
心強いことだってあるよ」

「あんたは
そこにいるだけで
充分優しいんだ」


良彦は
不器用だけど
素直な人懐っこさで
神様に寄り添い
彼なりの思いやりで
神様の苦悩を
解きほぐしていく


この本では
いろんな神社の
いろんな神様に出会える


神社内の自然豊かな
情景描写

“春の葛城山が躑躅(つつじ)の
朱色に染まるように
一面に美しい花弁を舞わせて
一言主は天を仰ぐ”


目を瞑ると
躑躅の香りが漂い
わたし自身もその場で
深呼吸してる錯覚

とても癒される


神様のさまざまな悩みに
寄り添うにつれ
良彦も
自ずと自分自身に
向き合い
心身ともに
癒され成長していく



話を少し戻す

「葛城の山に宿る
“精霊”のような存在だった僕を
“神”として祀ることで
力を与えてくれたのは人間なんだ」


このフレーズが意味することを
宇宙気分で手にした本

『からだは星からできている』から
改めて学んだ


「神話の中に見える宇宙観」
P74〜99
「見えないものと向き合う」
P102〜123


森の中で育まれた日本の神々の教え
を読んで

なるほどな
と思った


自然の力のもと
たくさんの生き物たちが
助け合いながら生息する
神社神道の原点

生きとし生けるもの
さらには
水や火、木や岩など
地上の造物すべてに
存在価値を認める神道の考え方P89

と説明されている


確かに日本の昔話や物語で

狩猟の前には山の神さまに

漁師さんは海の神さまに
手を合わせるとか

トイレの神さま
っていうのもあったな


“自然崇拝”には
他の宗教と違う性格
“おおらかさ”があるようだ


例えば
一神教的な考え方だと
天変地異などは
“神の怒り”と考え
原因を探り出し

悪者(原因)を仕立て上げて
“魔女狩り”をすることで
神の怒りを鎮めるようだ


一方
日本の“自然崇拝”では

“罰(バチ)があたった”から
天災が起こった

だから
神仏にお祈りをして乗り切ろう
(雨乞いとか?かな?)

“大鯰(おおなまず)”の
機嫌を損ねたから“地震”が頻発する
大鯰の気持ちを鎮める行事を行おう

などと考える

地鎮祭とかもあるな


温暖で豊かな自然の中で育まれた
感性が関係しているのでは?
P121

と説明されていた


今でこそ数学や物理学で
説明できる“宇宙”

だけど
科学がなかった時代には
この世のはじまりって?
宇宙のはじまりって?
という疑問に
答えを与える役割を果たしたのが
宗教を基盤にした
宇宙の創世神話だった

なので
宇宙の始まりを考えるには
世界各地に伝わる「神話」を
無視することはできない

というような内容だった


「神話」といえば
日本では『古事記』

神道は国家の歴史とも
深く関わっている

『古事記』って
言葉は知っているけど
詳しくは習ってないと思う

一見難しそうだけど
実は
はちゃめちゃでおもしろい

ちなみに
ギリシア神話もかなり笑える


途中からになるけど
一部抜粋

黄泉の国から逃げ帰った
イザナギノミコトは
「禊ぎ(みそぎ)」を受ける

すると
イザナギの左目から
アマテラスオオミカミ(天照大御神)
が生まれる

右目から生まれたのは
“ツクヨミノミコト”(月読命)

アマテラスオオミカミが
昼の世界を

ツクヨミノミコトは
夜の世界を司る神


そして鼻を洗うと
スサノヲノミコトが生まれる
笑笑

天界で乱暴狼藉を働く
スサノヲノミコトは
アマテラスオオミカミに
天界から追放される
P82〜

神様が暴れて追放なんて
笑える


この神たちも
もちろん
『神様の御用人』でも
キーパーソン

個性豊かで
おもしろい人(神)たち

神様たちのこと
つまりは
『古事記』が楽しく学べる


源氏物語を
『あさきゆめみし』で
学ぶという感じ


そのほか
神仏習合「七福神」P90〜
日本神話、インド古典信仰、
仏教、中国の道教
それぞれ異なる出身の神さまたちを
一隻の宝船に身を寄せ合って
衆生の幸せを祈る
日本独自の“おおらかさ”の話も
おもしろかった


「七福神」も
『神様の御用人』に
出てくる


『神様の御用人』は
10巻ある
1巻 3〜4話
なので
隙間時間でも
楽しめる

さまざまな神社を訪れる
御用の旅に
同行させていただく感じ

一柱(神様の数え方)ずつ
物語は完結するけれど
丁寧に読みたい

なぜなら
最終話に向けて
物語が続いていくから

登場済みの神様たちとも
最後までゆっくり
お付き合いしていきたい


読み終えると
旅の目的が神社になったり

神社を訪れることが
知り合いの神様に
会いに行くみたいな
楽しい気分にもなる


浅葉なつさんの
この物語の
自然美の描写が
心地良く感じることや
神様たちの“思い”に癒される
という
この気持ちは


『からだは星からできている』
を読んだことで

日本人として
知らず知らずのうちに
身についている感覚

自然崇拝的な民族信仰
日本独特の“神道”の

“おおらかさ”

によるものだど
改めて気づかされた
気がする


日本人の
生真面目さや
助け合いの気質は

世界基準では
ちょっと低く評価されること
もあるけど

平和的な考えや
道徳観やモラルを
大切にする気持ちは
わたしたち日本人の
すてきな気質でもあるよね

とも思える


さて
1巻読むと
やはり途中ではやめられない
ちょっとずつゆっくり丁寧に
再読しよう

年末に向けて
心穏やかに過ごそう







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