眼科症例報告:視神経低形成の犬一例
はじめに
犬ではまれに先天性の網膜、視神経疾患の患者さんが来院されます。片眼発症の場合は生まれてから時間が経ってから発見されることも多いです。今回は視神経低形成の症例の報告をさせていただきます。
現病歴
4歳6ヶ月、トイプードル、去勢オス
小さい頃から右眼をが充血することが多かった。その都度かかりつけ医を受診し、治療を受けていたとのこと。
受診5日前、右目を閉じており、瞳孔が散大していたとのこと。かかりつけ医で右眼の視機能の低下を指摘された。ぶどう膜炎の診断を受けた。
来院時の治療はジフルプレドナード点眼液右眼1日2回、セフメノキシム点眼液1日3回。
検査所見
両眼ともに充血は軽微だった。
瞳孔は左眼比で右眼が散瞳していた。また、対光反射では左眼比で右眼の動きが鈍いことがわかった。
前房フレアやセルは認められず、かかりつけ医で確認されたぶどう膜炎は消失していた。
遮蔽用コンタクトレンズを使用した院内の歩様検査では、右眼遮蔽時には物にぶつからずに歩くが、左眼遮蔽時には動きが鈍くなり、物にぶつかるようになった。
網膜電図検査では以下の通りになった。
網膜電図検査
頻回刺激錐体応答 normal/normal (amplitude 90.0mV/87.3mV, latency 20.5mS/20.3mS)
単回刺激錐体桿体混合応答 normal/normal (暗順応 1分)
眼底検査では右眼に異常が認められた。所見は以下の通り
視神経乳頭部 陥凹、左眼比で小さい、不整円形、血管観察可能/不整円形、血管輪観察可能
タペタム部 血管大小/同右
ノンタペタム部 特記所見なし/同右
診断
>診断
疑い
右眼 視神経低形成、ぶどう膜炎
>視機能
光覚 軽度の障害あり/障害なし
形態覚 重度の障害あり/障害なし
>加療計画
右眼 視神経低形成:右眼では視神経乳頭が左眼比で小さく、陥凹もみられる。威嚇反射眩目反射は正常であるものの、対光反射では反応が弱く、対側眼遮光下での歩様検査にて明らかな形態覚異常がみられた。これらの所見から視神経低形成が疑われる。文献上ではプードルで多く先天性疾患であるとされている。本症例でも生まれつきの視機能障害があったことが疑われる。治療法はなく、加療も行わない。
右眼 ぶどう膜炎:充血はみられず、前房フレアは見られなかった。近医での治療が奏効している。原因は不明であるが、先天的な眼球および視神経の形成異常が疑われることから、今後も繰り返す可能性がある。点眼による治療が可能であることから、悪化を早期に発見して近医受診するようにお願いした。
>治療
ジフルプレドナード点眼液 右眼1日1回に減量