眼科症例報告:SCEEDsの症例
はじめに
犬では、無痛性の角膜びらんSCEEDsという角膜疾患が存在します。通常の角膜潰瘍治療では容易に完治せず、綿棒によるデブライドメントやダイヤモンドバーによる掻爬が必要な場合があります。今回は、比較的容易に完治した症例の紹介をします。
現病歴
5歳4ヶ月、不妊メス、チワワとダックスフントのMIX
来院3日前に、シャンプー後に右眼の調子が悪く、近医にて角膜びらんの診断された。アセチルシステイン点眼液とレボフロキサシン点眼液が処方された。
来院2日前、右目が開かなくなったとのことで近医受診し、角膜潰瘍の診断で、ヒアルロン酸点眼液と抗菌薬の内服に治療を変更した。
来院1日前、かかりつけ医受診。右目は開いているが、完治していないとのことで紹介。
検査所見
右眼は流涙が多く、しょぼつきが見られ、下眼瞼の浮腫発赤と角膜上皮の混濁がみられた。
フルオレセイン染色試験では角膜やや外側に辺縁がシャープな染色部がみられた。
染色部位の周囲は綿棒による掻爬で角膜上皮が容易に剥がれた。
診断
>診断
確定
右眼 SCEEDs
>視機能
光覚 障害なし/障害なし
形態覚 障害なし/障害なし
>加療計画
右眼 SCEEDs:右眼中央にフラップが形成され、綿棒により容易に剥離される角膜びらんがみられる。涙液の減少、マイボーム腺機能不全、点眼液の多用などの原因は不明であるが、短頭種であることが関わっている可能性が考えられる。綿棒による掻爬とバンデージコンタクトレンズの装用を実施した。
>治療
綿棒デブライドメント 右眼
バンデージコンタクトレンズ 右眼
ガチフロ 右眼1日1回
シンプリセフ1/2T 1日1回
経過
2週間後に経過観察に来院されました。
コンタクトレンズは3日後に外れてしまい、その際にはまだしょぼつきがあったとのことですが、痛みはなく調子がよさそうとのことでした。
角膜の浮腫混濁は消失し、綿棒でのデブライドメントでも角膜は剥がれず、完治となりました。
短頭種や涙液の問題がある患者さんでは治癒に時間がかかりますが、そのような問題のなかったこちらの症例では時間がかからず綺麗に治癒しました。