アクティビストとPEファンドが連携?
トランコムが米系PEファンドのベインキャピタルとTOB(株式公開買い付け)を発表しました。
実はトランコムには、アクティビストとして名高いダルトン・インベストメンツが株式を取得しており、直近では、関連ファンド合計で18.09%までトランコム株式を買い増ししていたようです。
ダルトン・インベストメンツとは?
ダルトン・インベストメンツは、2008年に世界金融危機が起きる以前から日本株に積極的に投資してきた老舗アクティビストです。
2000年代に日本でアクティビストの活動がメディアで大きく取り上げられた際には、ダルトン・インベストメンツも米投資ファンドのスティール・パートナーズなどと共に積極的に株主提案を行い、いわゆる「ハゲタカファンド」のイメージが印象づけられました。
なお、共同創設者であるローゼンワルドの祖父は、投資理論家ベンジャミン・グレアムのもとでアナリストとして働いたのち、ニューヨークで日興証券で初となる外国人社員ですが、ローゼンワルド自身も、祖父と同じ職場でインターンをしながらキリンビールや東京銀行の株式に投資し、将来は投資家になる決意を固めたそうです。
注目は、MBOよりアクティビストの再出資
BCJ-85-1という会社が、ベインキャピタルのSPCです。
創業家会長による再出資
武部氏(武部篤紀)はトランコムの取締役会長で創業家3代目の方です。
現状トランコム株式は、武部氏が1.91%を保有、武部氏が議決権の全てを所有し筆頭株主のAICOHがトランコムの28.69%を保有しています。
この武部氏およびAICOHの現状の持ち分相応比率が、そのままBCJ-85-1にスライドされるようです。
こうした創業家とのMBOは、一般的なストラクチャーです。
ダルトンによる再出資
公開買付価格は10,300円となり、取得単価と比較しても、相当なリターンになりそうです。
また、ダルトングループは、BCJ-85-1の親会社であるBCPE Nexusに対して、14.40%の再出資を行う予定になっています。
要するに、ダルトンとしては、アクティビストとしてのキャピタルゲインを得たうえで、ファンドへの再出資を通じて、ベインファンドと同率のリターンを享受可能と言えます。
なお、ダルトングループは、BCJ-85-1の取締役1名の指名権を有することになるようですが、それについては以下のコメントがトランコムから出ています。
アクティビスト参考書籍
敵対的買収とアクティビスト|2023年5月
M&A業界で有名な太田洋先生が書かれたアクティビスト書籍です。
敵対的買収(同意なき買収)やアクティビストの実像、買収防衛策などをはじめとしたと対応策について簡単に学ぶことができます。
事業会社の経営陣、経営企画、財務、IR部門の方は一度お手に取られても良いかもしれません。
略奪される企業価値|2024年9月
コーポレートガバナンスを見直したほうが良いという書籍。
必ずしもアクティビストのみの書籍ではないですが、要求されがちな自社株買いをテーマに当てています。
PEファンド志望の方は、いろいろな意味で読んでいただきたい。
株主価値最大化イデオロギーが企業や経営者の行動原理を支配するようになり、株式市場を介して、価値創造制度である企業から価値を略奪的に抽出することが常態化した。これらは、企業のイノベーションを妨げ、雇用を不安定化させるなど、経済、政治、社会に様々な弊害をもたらしていると指摘。
「モノ言う株主」の株式市場原論|2024年5月
ストラテジックキャピタル代表取締役の丸木強氏の執筆。
ダイドーリミテッドや極東開発工業で世間を騒がせました。
国内アクティビスト(モノ言う株主)の代表格が、株式市場と企業経営の本質を喝破するとともに、ピカピカの会社ではなく、あえて改善点が多い会社に投資してきた自らの哲学を明かす。
生涯投資家|2019年12月
今なお続く村上ファンドの村上代表による一冊。
コーポレートガバナンスについて、彼なりの意見を語ります。
読み物として面白い一冊。
アクティビズムを飲み込む企業価値創造|2024年5月
非公開化・MBO、株主還元、最適資本構成、事業売却・スピンオフなど主要アプローチごとに、アクティビズムの主張を活用した処方箋を実践し企業価値向上を実現した企業ケースを詳細に分析。
アクティビズムの手法を企業価値向上策に取り入れることで究極のアクティビスト対策にもなるという「アクティビズム・インテグレーション」による経営改革の実践を提言。
アクティビスト対応の実務|2024年4月
事業会社の方々向けに、平時から有事までの4つのフェーズごとに、その具体的な対応を解説すると共に、ターゲットにならないための活動ポイントにも言及。