花陽と運動方程式
みなさんこんにちは!μ'sの小泉花陽です♪
今日はお母さんの部屋にあった本で力学を勉強しようと思います。
え?なんで急にそんなことをはじめるのかって?
それを訊くのは野暮ってやつですよ!
とにかく今日の花陽は力学がやりたくて仕方ないのです!
あ、あと$${g}$$は重力加速度です!
花陽「さてと、まずは…」ペラッ
1.ニュートンの運動方程式
花陽「ふむふむ…」
簡単のため、しばらくは以下のような特徴を持つ「質点」の運動を考える.
1.ある時刻に対して、位置が一意に定まる.
2.有限の質量をもつが、大きさはもたない(考えなくてよい).
花陽「へえー」
花陽「つまり米粒さんってことだね!」
質量$${\mathit{m}}$$の質点について、位置ベクトルを$${\vec{r}}$$とすると
速度ベクトルは以下のように定義される.
$$
\vec{v}=\frac{d \vec{r}}{d t}
$$
また、この速度ベクトルは次のような微分方程式に従う.
$$
\mathit{m}\frac{d \vec{v}}{d t}=\vec{F}
$$
この方程式はニュートンの運動方程式と呼ばれるものである.
なお、$${\vec{F}}$$は質点に働く力を表す.
花陽「これなら私も見たことあるよ!」
花陽「ともかくこの微分方程式を解けば質点の位置と速度が分かるんだね」
花陽「あ、けど微分方程式ってどうやって解くんだろう…」
2.花陽と微分方程式
花陽「とりあえず微分方程式立ててみるよ!」
花陽「えっと、まずは落下運動かな?」
花陽「たしか地表面近くで重力はほぼ一定だから簡単だよね…」
花陽「適当に軸を設定して…」
$$
m \frac{d x}{d t}=m g
$$
$$
⇒\frac{d x}{d t}=g
$$
花陽「こうかな?これくらいなら私にもわかるよ!」
花陽「二階微分したら$${g}$$になるから、二回積分して…」
$$
\frac{d x}{d t}=g t+C
$$
$$
x=\frac{1}{2} g t^2+C t+C^{\prime}
$$
花陽「できたよ!」
花陽「けど積分定数みたいなのが二つも出てきちゃったよ」
花陽「なんだろこれ…」
凛「凛知ってるよ!」
花陽「わぁっ!?」ドテッ
凛「どうしたの、かよちん?急にひっくり返って」
花陽「どうしたもこうしたも無いよ!なんで凛ちゃんが私の部屋にいるの」
凛「それは凛がかよちんの幼馴染だからにゃ!!」ドヤッ
花陽「ウゥ…理由になってないしなんか怖いよぉ…」
凛「それでかよちんが言ってた積分定数ってこれかにゃ?」
花陽「そうだよ?」(多分このままここに居座る気だ…)
凛「これは自由度の仕業にゃ」
花陽「自由度?」
凛「そう、この式にはかよちんがまだ決めてない条件、すなわち自由度が二つあるんだよ」
凛「そしてその数だけ任意定数がでてきてるんだにゃ」
花陽「条件って?」
凛「…かよちんってば座標の向きしか決めてないでしょ」
花陽「あっ、原点を決めなきゃだね」
凛「ぴんぽーん、言い換えれば質点の初期位置が分かってないにゃ」
凛「それともう一つ…初期速度にゃ」
凛「加わる力が一定でも、速度は変化していくからね」
凛「それについては両辺を一回だけ積分した式でも表されているにゃ」
$$
\frac{d x}{d t}=g t+C
$$
花陽「ほんとだ」
凛「よって初期位置$${x_0}$$と初期速度$${v_0}$$…」
凛「この二つを与えてやれば微分方程式の解はこんな感じになるはずだよ」
$$
x=\frac{1}{2} g t^2+v_0 t+x_0
$$
凛「これで積分定数の問題は解決にゃ!」
花陽「うれしい」
凛「ちなみにこれを微分方程式の『特解』と呼ぶよ」
花陽「特解?」
凛「そう、特定の条件下で成り立つ解だから特解にゃ」
花陽「へぇ~」
凛「そしてかよちんが最初に求めたのは『一般解』にゃ」
花陽「初期条件が与えられていなくても一般に成り立つからだね?」
凛「そう!かよちん賢いにゃ~!」
花陽「えへへ」
凛「そしてもちろんだけどこの一般解のほうが特解よりも持っている情報量が圧倒的に多い」
凛「だから微分方程式を解くときは基本的に一般解を求めることが目標になるよ!」
花陽「了解であります!」
3.いろいろな運動方程式
凛「じゃあ微分方程式について分かったところで、どんどん運動方程式を解いていくにゃー!」
花陽「おー!!」
凛「とはいえ、実は今回やってるニュートン力学で登場する運動方程式は限られてるよ、ざっというと5つくらいにね」
花陽「へー」
凛「だから今からそいつらをおさらいしていくにゃ!」
花陽「うん!」
3.1 一定の力が加わる場合
凛「まずは一定の力が加わる場合にゃ!落下運動とかがこれにあたるよ」
花陽「さっき私が解いたやつだよね!」
凛「そう!じゃあ一定の力$${\vec{F}}$$加わっているときの質点の運動方程式を解いてみて!」
花陽「えっと、運動方程式はこうなって…」
$$
m \frac{d^2 \vec{r}}{d t^2}=\vec{F}
$$
花陽「初期位置と初期速度をそれぞれ$${\vec{x_0}}$$、$${\vec{v_0}}$$とおいたら…」
$$
\frac{d \vec{r}}{d t}=\frac{\vec{F}}{m} t+\vec{v}_0
$$
$$
\frac{d \vec{r}}{d t}=\frac{\vec{F}}{2 \ m} t^2+\vec{v}_0 t+\vec{x}_0
$$
花陽「できたよ!」
凛「正解にゃ!」
花陽「さっきも凛ちゃんが言ってたけど、速度は力に比例して大きくなっていくんだね」
凛「そうにゃ」
花陽「でもこれっていっぱい時間が経てばいくらでも速くなれるよね、例えば光よりも」
花陽「けどどこかで光より速くなることはないって聞いたような…」
凛「良い指摘だね、かよちん!」
花陽(凛ちゃんが指摘って言うの違和感しかないよぉ…)
凛「実をいうと、この運動方程式は光速度に近づくと成立しなくなるにゃ」
凛「ここで詳しいことは言わないけど、光速に近いときは運動方程式に
特殊相対性理論の考えをとりいれるにゃ」
凛「そうすれば質点も光速度を超えないようになるよ」
花陽「そうなんだ!」
凛「それに実際にあるほとんどの運動では物体に抵抗力がかかるにゃ」
花陽「あ、なんか知ってるよ!空気抵抗とかだよね」
凛「うん!そしてその抵抗力のおかげで物体はある速度に達するとそれ以上大きくならなくなるにゃ」
花陽「世の中うまく出来てるものだね」
凛「まったくそのとおりにゃ」
凛「じゃあ次はその抵抗力が働いている場合を考えてみよっか」
花陽「うん!」グゥゥ
凛(=^・^=)
花陽「あはは…ちょっとお腹すいてきたかも…」
凛「ちょっと休憩するにゃー!」
花陽「お茶と炊飯器もってくるね!」
注意
凛「本当は最初からこうすべきだったけど、ここからは簡単のため、一次元(x方向)の運動をかんがえるにゃ!」
花陽「多次元を考えるときはこの後やる一次元の運動を各成分について考えればいいもんね!」
3.2 抵抗力が働く場合
凛「抵抗力にもいろいろあるけど今回は速度に比例するものを考えてみるにゃ」
凛「さっきかよちんが言ってた空気抵抗とかもこれにあたるよ!」
凛「じゃあかよちん、さっきの落下運動に速度に比例する抵抗力がかかっているときの運動方程式はどうなるかにゃ?」
花陽「抵抗力だから運動と逆の向きの力だよね?」
凛「そうだよ」
花陽「じゃあ運動方程式はこうだね!」
$$
m \frac{d^2 x}{d t^2}=m g-\mu \frac{d x}{d t}
$$
花陽「比例定数はμ'sのμにしたよ!」
凛「かよちんセンスいいにゃあ~」
花陽「えへへ、けどこの後どうすればいいかわかんないよ」
花陽「2階微分と微分が混ざってるからそのまま両辺を積分するわけにもいかないし…」
凛「じゃあ微分の階数を減らせばいいにゃ」
花陽「え?」
凛「試しに速度だけで運動方程式を表してみるにゃ!」
花陽「速度だけで?えっと、速度を$${v}$$として…」
$$
m \frac{d v}{d t}=m g-\mu v
$$
花陽「なんだかすっきりしたね!」
凛「あともう一息にゃ!何とかして両辺を時間積分できるように変形したいね」
花陽「さっきみたいに右辺に定数しかなかったらいいのにね…」
花陽「あ!!いい変形思いついた!」
$$
m \frac{d v}{d t}=-\mu\left(v-\frac{m g}{\mu}\right)
$$
$$
\frac{1}{v-\frac{m g}{\mu}}
\frac{d v}{d t}=-\frac{\mu}{m}
$$
花陽「これなら積分して解けるよね!」
凛「どんどんいっくにゃあ~」
$$
v=\frac{m g}{\mu}+C e^{-\frac{\mu}{m} t}
$$
$$
x=C^{\prime} e^{-\frac{\mu}{m} t}+\frac{m g}{\mu} t+C^{\prime \prime}
$$
花陽「できた!」
凛「おおっ!」
花陽「最後は$${\frac{-m C}{\mu}}$$を$${C^{\prime}}$$でまとめたよ」
凛「正解にゃ、かよちんもだいぶ慣れてきたね!」
花陽「うん!なんだかコツが掴めてきたよ」
凛「さすがかよちん、ごはんだけじゃなく知識の飲み込みも早いにゃ!」
花陽「は?」
凛「ニャッ」
花陽「私お米はちゃんと噛んで食べるよ?じっくり味わうよ?」
凛「ゴ、ゴメンカヨチ…」
花陽「間違っても早く飲み込んだりしないよ?」
花陽「二度とそんなこと言わないでね?」
凛「ハ、ハイ…ニャ」
花陽「…………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
凛「………..」プルプル
凛「か、閑話休題にゃ!!」
凛「ところでかよちん、さっき求めた一般解を見て気づいたことはある?」
花陽「んー特にないかな、しいて言うなら指数関数がでてきてるのが気になるかも」
凛「ナイス着目にゃ!実はその指数関数が抵抗力の本質を表してるんだよ」
花陽「と言いますと?」
凛「時間$${t}$$どんどんを大きくしたらどうなるかな?」
花陽「指数関数の部分が小さくなるね!」
凛「そうにゃ!!じゃあ指数関数が無視できるくらい小さくなったら?」
花陽「$${t \rightarrow \infty}$$にとばすってこと?」
凛「うん」
花陽「さっきの式見てみるね!えっと…」
$$
v=\frac{m g}{\mu}
$$
$$
x=\frac{m g}{\mu} t+C^{\prime \prime}
$$
花陽「速度が一定になっちゃった」
凛「そうなんだよ!現実では式みたいに無限時間経過させることはできないけど、それでも十分時間が経ったら落下速度はほぼ一定になるよ」
花陽「いくらでも速くなるわけじゃないんだね!」
花陽「ところで他の抵抗力ではどうなるの?」
凛「そうだね…今解いた速度に比例する抵抗力は『粘性抵抗』って呼ぶんだけど、他にも速度の二乗に比例する『慣性抵抗』もあるんだ、それも十分時間が経ったら速度はほぼ一定になるよ。あとで計算してみると良いにゃ!」
花陽「速度に関する抵抗力が加わると速度は一定になる…なんだか関係が見出せそうだね!」
3.3 復元力が働く場合(単振動)
凛「最後は復元力が働く場合を考えるにゃ!」
花陽「復元力って?」
凛「力の釣り合いの位置からずれた物体をもとの位置にに戻そうとする力のことだよ」
花陽「あぁ、ばねの弾性力とかだね」
凛「その通りにゃ」
凛「復元力は一般的に釣り合いの位置からのずれに比例するから、それをもとに復元力だけはたらいてる時の運動方程式を立ててみて、原点の取り方とかはかよちんに任せるよ」
花陽「が、頑張るね」
花陽「えっと、ずれに比例する力だから…釣り合いの位置を原点にとればいいよね」
凛(かよちんもセンスが磨かれてきたね!)ジーン
花陽「それと原点に戻そうとする力だから向きは運動の向きと逆だよね」
$$
m \frac{d^2 x}{d t^2}=-k x
$$
花陽「こうかな?比例定数は$${k}$$にしたよ」
凛「正解にゃ」
花陽「でもこれどうやって解いたr」
凛「ん?」
花陽(今日は自分で力学を勉強するって決めたのに結局凜ちゃんに頼ってばかりだ…こんなんじゃダメだよね…)
花陽(うん!ここは花陽ひとりで解いて凛ちゃんにデキるところを見せないと!)
花陽「ううん、何でもないよ…」
花陽「…!!!」
瞬間、花陽の頭に稲妻が走る。周りに頼ってばかりの自分を変えたい、そして凛にいいところを見せたいという強い思いが、大脳皮質に点在する神経細胞を刺激し、情報爆発を起こしたのだ!複素指数関数、マクローリン展開、方程式の線形性、身に覚えのない情報の数々が伝達系でやりとりされ、やがて彼女に閃きをもたらす。
花陽「凜ちゃん!!!」
凛「んにゃ!?」
花陽「釣り合いの位置からのずれは微小でもいいよね??」
凛(ま、まさか微小振動のことを!?)
凛(…確かに微小運動を考えればマクローリン展開を使ってオイラーの公式が導ける、そうすれば複素指数関数が使えるから微分方程式はかなり見通しがよくなる…けど一人でそこまで考えられるなんて…)
凛(かよちんの吸収力もいよいよ侮れなくなってきたにゃ)
凛「い、いいよ」
花陽「じゃあ簡単だね!」
$$
x=A \cos \left(\sqrt{\frac{k}{m}} t+B\right)
$$
花陽「できたよ!あ、$${A}$$と$${B}$$は任意定数ね」
凛「す、すごいにゃ…完璧にゃ」
花陽「えへへ」
凛「それにしても早かったね…どうやって解いたの?」
花陽「う~ん、秘密!」
凛(ことりちゃんみたいなこと言い出した…)
凛「ならしょうがないね」ニコニコ
花陽「うん!」ニコニコ
凛「とにかくこの一般解からわかるように復元力が働く
ときはある範囲内で振動するんだよ」
花陽「そうみたいだね」
凛「これがよく聞く単振動ってやつにゃ!」
花陽「運動範囲を指定するなんて系を拘束してるみたい」
凛「た、たしかに」
花陽「そう考えるとさっきの速度を一定にしちゃう抵抗力となんだか似てるよね」
凛「考えたことなかったにゃ…けどすっごく面白いねそれ」
花陽「だよね!」
凛「微分方程式そのものについて調べたらなにかわかるかも」
凛「今度図書室にいって調べてみようよ」
花陽「うん!」
4.おわりに(と凛の受難)
花陽「もう夜になっちゃってたね」
凛「うん、でもこれで基本的な運動方程式は大体網羅したよ!」
花陽「やった!」
凛「質点の運動の大半はさっき解いた微分方程式の組み合わせで解けるから、あの本も一人で読めるようになったと思うよ。よくがんばったね、かよちん」
花陽「うん、今日はありがとうね凜ちゃん」
凛「幼馴染なんだから当然にゃ!」
花陽「ところで今日は帰らなくていいの?」
凛「あっ」ブブッ
凛「お、お母さんから電話が…」ポチ
凜ママ「てめぇ朝からどこほっつき歩いてんだ!!もう22時だぞ!?そもそも前に出かける時は一言言えって(以下略)」
凛「うわぁーーん、ごめんなさいにゃあ~!」
完
※文章中の物理的記述は全てその場で思いついたまま書いたものなので参考文献は特にありません。一応確認したので大丈夫だとは思いますが間違っている部分もあるかもしれません。あくまで物理を楽しむ凛と花陽の物語として楽しんでください。