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自己決定できない専攻医について
こんにちは。
腎臓内科医のDr.Bunです。
今日は雑談、というか愚痴のような内容になりますので、読み飛ばしていただいても構いません。
研修医教育と専攻医教育についてです。
医者の内輪的な話になってしまうのですが、社会人一般にも通じる話だと思います。
初期研修医と専攻医の違いは?
医者の世界では、医学部を出て医師国家試験に合格すると医師になりますが、この時点では何もできない赤ちゃんのようなものです。
2年間の研修医ローテートを終え、その後内科の場合は内科専攻医ローテートが3年間あり内科専門医になります。
以前は初期研修医期間にある程度医師として必要な最低限の能力を身につけ、その上でプロフェッショナルを身につけるためにそれぞれの専門科に進んでいきます。
初期研修医と専攻医の違いについて、非医師の方々にとってはあまり分からないかもしれません。
しかし、そこには明確な違いがあります。
それは自己決定権を持っているかどうかです。
自己決定権とは自己責任能力と言い換えてもいいかもしれません。
自分で決められない人たち
ところがコロナ禍、医師の働き方改革、待遇悪化など様々な要因を受けてか、最近明らかに様相が異なってきました。
専攻医には自己責任能力が伴うという当たり前の共通認識を共有できない事象が目立つようになってきました。
彼らは自分で決定できないのです。
人から与えられたことしかやらない、やろうとしない。
でもそれは何でかと言えば、やはり専攻医の前段階の研修医期間に問題があるのだと思います。
これは、指導体制にも問題があると思われます。
我々指導する側の人間からすると、研修医教育というのは完全にボランティアです。
師弟教育、屋根瓦方式、OJTなどとは言いますが、要するに現場への丸投げです。
こちら側のメリットは全くありません。
それなのに何故後進教育をするのかというと、教えることによってもしかしたら将来的に我々と一緒に働いてくれるかもしれない、他の科に行くとしても教育体制が整っているという評判が立てば病院自体に人が集まるかもしれない、というものです。
つまり、自分たちのためです。
しかし、この教育自体は日々の業務と同時、もしくは業務の合間を縫って行われます。
働き方改革、残業規制により我々自身も教育にかけられる与力が少なくなっています。
なので、例えば義務で仕方なくローテートしてきた研修医や、初めから他の病院に行くことが分かっているような研修医に限られたリソースをさく意味は無いのです。
このため研修医教育は実質的に崩壊しました。
今の研修医制度は学生実習の延長のようなおままごとに過ぎず、自らスキルを高める意思と能力の無い人間は2年間を通じて全く成長することが無いという惨状です。
その結果2年かけて全く何の仕事もできない、しかし肩書きは初期研修を修了したという怪物たちが全国の病院で続々と生み出されていっているのです。
これを見て見ぬふりをしてきた指導側にも問題があるのですが、その結果さらに深刻な問題が生じており、それが先程述べた自己責任能力を負う気のない専攻医の登場に繋がっているのだと思います。
人の時間を奪うことに無自覚な専攻医
A君は私が指導を命じられた後輩の1人ですが、彼はとにかく無能でした。
手技は全く出来ないので、片時も目を離せず、かといって頭が良い訳でもないので、患者の治療方針も立てられず、しかも言われたことも翌日になれば忘れてしまうのです。
しかし、彼はやる気だけはあるようで「やらせてください」「教えてください」が口癖でした。
あるとき、例によってA君に指導しながら仕事をやらせておりました。
ちなみに、この作業自体は自分でやれば1/3以下の時間で終わります。
何回もやったことのはずなのに何一つ身になっていないA君にいらいらしながらも、やっと一息ついたあと、私は自分の仕事にとりかかろうとしていました。
もちろんA君は目が離せないので、A君の仕事が終わるまで私の仕事は何一つ進みません。
そこで、A君は「次は処方について勉強したいので教えてもらっていいですか?」と言いました。
これには私も呆れました。
そこで、
「あなたはまず、今の手技のどこに問題があって次に失敗しないようにするためにはどうすればいいのか考えるべき」
「私には私の仕事があるので、君にこれ以上時間を割くことはできない」
と伝えました。
少し強く言い過ぎてしまったかと後になって反省しましたが、彼のようなタイプの人間は人の時間を使っているという認識を少しは持つべきでしょう。
これはA君が極端なのですが、最近は全体的にこのような傾向が見られます。
何と言うか、いつまでたってもお客様気分というか学生気分なのですよね。
学生であれば学費を払っているので、教育を受ける権利があります。
研修医も、病院側が研修指定病院の認定を受けるために教育プログラムを施さなければならないので、まあ教育を受ける権利があると言えばあります(その結果が現場に丸投げという致命的な問題がありますが)。
専攻医に関してはちょっとニュアンスが違うのですよね。
まぁ半人前と言えば半人前なのですが、それでも医師免許をとって2年経てばそれなりに仕事に責任をもつ必要はあるわけで。
ただ、もちろん全てに責任を持つ必要はなくて。
もちろん重要なことや難しい案件に関しては、上司の判断を仰ぐ必要はあるのですが。
上司の判断を仰ぐにしろ、その前段階で自分なりの考えを持つこと、診療に対して責任を持つことというのは必要なわけです。
また、いつまでも教えてもらうのが当たり前、という感覚も早い段階で取っ払った方がいい。
まとめ
まあ仕事というものはどんな仕事であれ最初から一人前というのはあり得ないわけで、誰かに教えてもらいながら成長していくものなのですが、教えてもらうことが当たり前だとは思わないこと、極力自分で努力して考えた姿勢を見せること、というのは大事なんだなぁと思いました。
これは、自分が教える側になったからこう思うだけで、自分自身も誰かに教えてもらう立場になったときに、善意に甘えず敬意を持つようにしようと思いました。
そういう意味では新たな気づきがあって良かった(?)です。
半分以上ただの愚痴になってしまいましたが、そんなところです。
本日はここまで。
それではまた!
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