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「チェック、ダブルチェック」…映画「セプテンバー5」

今年3月に授賞式が行われる第97回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされている「セプテンバー5」(ティム・フェールバウム監督。脚本も)を鑑賞。あまりに集中しすぎて疲れました。もちろん面白くて。

1972年のミュンヘン五輪でパレスチナ武装組織「黒い九月」がイスラエル選手団の選手村を襲撃した「黒い九月事件」を生放送した米ABCの1日を描く。報道局ではなくスポーツ局が報道したというのが面白い。当時はアナログな放送機器のため衛星回線枠を他局と取り合ったり五輪選手に変装したクルーが選手村で撮影したフィルムを運んだりと興味津々なエピソードがてんこ盛り。見ながら1985年に群馬・御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機の事故を報道する地元新聞社の混乱ぶりを描いた映画「クライマーズ・ハイ」を思い出していた。テレビと新聞の違いはあれども、やはりネットのない時代なので原稿は電話での口述で行ったりと苦労が忍ばれる。

興味深いのは両作の特ダネをめぐる最後のリーダーの判断。「セプテンバー5」では「人質全員解放」の未確認情報を確実な裏取りをせずに「噂によると」というオブラートに包みながらも放送。一方、「クライマーズ・ハイ」では「墜落事故の原因は後部圧力隔壁の破断によるもの」という大スクープを確実な裏取りができなかったため掲載を断念する。結局、銃撃戦の末に人質は全員死亡したのだが、「クライマーズ・ハイ」の全権デスクが口を酸っぱく言っていた「チェック、ダブルチェック」を怠ったからだ。特ダネ欲しさに暴走してしまう気持ちも分かるが、だからこそ慎重な判断が重要になるのだ。

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