好きなものに囲まれる
先週末で終了した静嘉堂文庫美術館の展示『画鬼河鍋暁斎✕鬼才松浦武四郎』。
一番の目的は「地獄極楽めぐり図」だった。
この作品はずっと見ていたい気持ちになる。
ひとり娘が亡くなり、親が娘の供養のために作成を依頼したという。
作品の作られた背景に親の愛情を感じてグッとくるものがあるとともに、作品そのもの、詳細に描かれる地獄と極楽、楽しそうに「観光」している娘の姿が印象的なのだ。
今回は会期末で混雑した展示室の中、ゆっくりとは見られなかったのが残念だったが、
何度見てもこの作品が好き、という気持ちは補強されていく。
好き、というと、本展示のもう一人の主人公、松浦武四郎だ。
「武四郎涅槃図」は、蒐集品に囲まれた本人を涅槃図にして描いたもので、なんとそこに描かれたものが展示されていた。
よくぞこんなに蒐めたものだと「好古家」の名に恥じないなと感心するとともに、涅槃図の姿がとても幸せそうに見えたのだ。
会場で紹介されていた、武四郎が追加であれもこれも描きこんでほしいと注文してくるものだから、暁斎が【うるさいジジイ】、みたいに感じていたというようなエピソードには、クスッとしてしまう。
好きなものに囲まれた暮らし、憧れる。
現実はそんなにあれもこれもと集めることは難しい。
そんな夢を可能な限り追いかけた先人の姿に思いを馳せて、自分も幸せと豊かさを勝手にお裾分けしてもらって会場をあとにした。
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