物書きの備忘録 〜シナリオ論とは何か〜
どうも初めまして、上木原かをりです。
自己紹介なんてものはどうでもいいので、飛ばして早速本題に行きましょう。
本題とはずばり「自分の使ったシナリオ論と思い出を残しておこう」と言う事です。
まあ、そもそもこれ備忘録ですからね。
私事ではありますが十年強書き物をやって来た身であり、その成長を使ったシナリオ論で失敗談だったり過去を振り返っておこうかなと思った次第です。
つまり黒歴史暴露会です。
そもそもシナリオ論とは何ぞや
今こうして思い返してみると昔、親のパソコンで調べた時「何だこれ」となった記憶が私にもあります。
そんな人もいるとは思いますので改めて説明をば。
その正体は「ストーリー構成」と呼ばれるものです。
構成と名の付くように、物語を形作る上での要素の組み立て方になります。
ストーリーしかり、実体験しかり相手に物事を伝えるというのはいくつもの「エピソード」、「シーン」を重ねて初めて相手に伝わる物です。
簡単に例えるなら、
「転んだ」
これでは何のこっちゃだと思います。
誰がや何が、どうしてが抜けているからですね
なので、ここに「シーン」と「エピソード」を足してみます。
「私が学校に登校する際、小石で足を躓いた」
「そして転んだ」
「結果、怪我をした」
コレだと何が起きて、何が原因だったのかは一目瞭然だと思います。
これが一つの話になるわけですが、物語というのはそうした細かい出来事「エピソード」が連なった物です。当然、話が多くなってきます。
けれどそれを適当に継ぎはぎにしてしまっては、また訳が分からなくなります。
さっきの例をまた使うと、
「怪我をした」
「学校に向かう」
「小石で転んだ」
口語ではこれでもいいかもしれないですが、文としては致命的です。
なので、既存のテンプレートを使って、読んでいる相手にわかりやすく説明しよう! というのが構成になります。
まとめると、日本語的な文の並びを工夫したものが「ストーリー構成」
それを作るためのテンプレートが「シナリオ論」と言ったところでしょうか。
しかし、困ったことにシナリオ論には論と付くようにその種類は多岐にわたります。
分かりやすく、面白く読者に伝える技法は日々進化していると言う事です。
どれが一番優れているとは口が裂けても言えませんが、その事実が語学の自由さを表していると同時に、「どれ使えばええねん」と私たちを苦しめているという訳です。
勿論、それに頼らず思うがままに書く人はいますが大抵は後述の形のどれかを無意識に使っている事でしょう。
人間収まる所に収まるというやつです。
では、そのシナリオ論を筆者の記憶と共に学んでいきましょう。
序破急
当時、明確に「読み物を書こう」という目的をもって書き出したのは中学生の時期でした。多感な時期とでも言いますか、ある意味黒歴史製造機と化していた自分が使っていた手法でした。
人によっては、エが付くロボットアニメ映画のナンバリングじゃんと思う人がいるかもしれませんが、れっきとした作品構成の手法の一つです。
序破急とは
所謂、三幕構成と呼ばれるものに属しますが、今回はそれとは別のものとして始めます。
そもそもなんやねんって人のために説明すると、日本の伝統芸能のリズムの事です。例えば、能や古典文学、茶道といったものですね。
はい、現代の文学に最適化された方式ではないんですよ。
ただ、だからと言って他の技法に劣っている訳ではありません。
昔から続く物には、それ相応の理由があるという事です。
・序
物語のスタート部分です。後述の起承転結などと比べると、ゆっくりと物語が始まるのが特徴です。
「ある日の目覚め。からのなんでもない日常」
みたいなプロローグですね。
・破
序から話の展開、ここからある意味本当のストーリーが始まります。
「そんなある日、ヒロインと出会ったのだ。そして、ある組織からの急襲が、、、」
いわば物語の山場。序で始まった日常を変化させる部分ですね。
そのまま次の展開である、
「ある組織はヒロイン体質を狙っていた!」
こんな感じで風呂敷を広げるのがこの部分です。
・急
物語の結末。破で始まった事件がどのように終わったのかを書きます。広がった風呂敷を畳む作業ではあるのですが、急とあるように急速に話を畳むことがほとんどです。
「結果として、その組織を退けハッピーエンド!」
物語としてのオチ。ハッピーエンドにしろバットエンドにしろ、ここが無いと話は終わりません。
個々に様々なエピソードである山と谷が挟まりますが、大まかにはこうなるでしょう。
それこそ以上を踏まえて某ロボットアニメ映画を見たら、また違った見方ができるかもしれないですね。
思い出
この手法を使っていた中学生時代。当時は若く、人様には決して見せられないようなものを作成していたのも、今となってはいい思い出です。
「邪神天、列神相」てなんやねん。ていうか神って言葉二回も入っているし。
この手法、当時は気付かずに使っていたのですが、本来は文学。とりわけ芸術性の高い作品を書く適正があるらしく、難易度の高い静と動の使い分けが求められます。
当然、筆者もその魅力を引き出すのは無理だったと思います。
なので、娯楽小説なんかを書くときは本当に序破急を使うべきか一考挟む事をおすすめします。
起承転結
物語を書け、と言われたらまずこれが出る程度には有名な物かもしれないですね。
かく言う筆者も学生時代に小論文、感想文を書くとき教師からよく言われた事が思い出の片隅にあります。
これは筆者が高校生時代に文芸の新人賞に応募しようと、本格的に基礎を学ぶのに使っていました。ここの辺りから、人に見せる事を意識し始めました。
分かっている人も多いとは思いますが、念のため起承転結について記しておきます。
起承転結とは
物語の山場である「転」が二回挟まる技法です。
シンプルイズベストとあるように、昨今では「物語を作る上では理想的な形の一つ」なんて解釈もあるほど大人気です。
起承転結について調べてみると、元々は漢詩由来の物であると言われています。
漢詩にも形式があり、その内の一つである「絶句」と呼ばれる四行詩の文章スタイルとして成立したのが始まりだと言われています。
・起
物語の開始地点。ここで作品の設定や主人公の人柄なんかを説明します。
この起部分一つとっても様々な書き方があるぐらいには大切な箇所ですね。
因みに筆者がこの部分でよく使うのは展開の先見せとショートストーリーを使います。
前者だと、物語の山場を最初に持ってくる
「倒れ伏す主人公と謎の敵。意味深な台詞」
この先はどうなるんだという、読者の興味を引く方法です。
最近はこの手法を使う人が体感、多い気がします。
後者だと、本編にはあまり波及しないショートストーリーで設定を見せます。
「主人公が重い荷物を持った老婆を助ける。ナンパから女の子を助ける」
このストーリーだと主人公が良い奴だと何となく伝わりますよね。
作中世界の入口と揶揄されることもあり、執筆経験を持つ人はここで難儀することが記憶に残っているのではないかと思います。
・承
起で提起された設定を基に話が始まります。ある意味、本当の物語はここから始まるのです。
物語が展開する都合状、作品全体の奥行や話の膨らみを決定する部分でもあります。
起はあくまで引っ掛かりですので、例えるなら承は噛んだシュークリームの皮からあふれるカスタードです。
「近頃、奇天烈な出来事が周りを取り巻く中、ある少女と出会った。そんな少女は主人公に助けを求める」
・転
上の承で展開された前提を含めて状況がひっくり返す事をここで書きます。作中一番の見どころ。曲で言うサビの部分ですかね。
アップテンポでありつつも、結末に向けた盛大な花火として話を広げます。
「紆余曲折あって仲良くなるが、ある少女が助けを求めたのは主人公が持つ力を欲してだった。このことにショックを受けた」
・結
物語のまとめ、結末を書く場所です。事件に終止符を打ったり、結論を示す感じですね。
西部劇のガンマンが銃を撃った後の決めポーズである訳ですから、ピッシっとしたポーズで有終の美を飾ってあげましょうって部分です。
ここで詰まる人をよく見ますし、実際自分も詰まる事が多かったです。
「実際のところ少女が共にいたのは、力はきっかけに過ぎず主人公にそう思わせる魅力があった」
思い出
有名であり、シンプル。それ故書くのが難しい。
中々難儀な世界ですね。物書きというのは。
この技法を使っていたのは先ほど書いた通り高校生の頃でした。
当時は何かしらの賞を取らないと、小説家として意味がないなんて阿呆な考えを抱いていました。
なんでそんな強迫観念を抱いていたのかは今となってはわからないのですが、その出来事が無ければ小説を書き続ける癖なんてついていなかったと思うので、当時の自分グッチョブです。
それはそれとして、もっと肩の力を抜くことも大切と言ってあげたいです。
まあ、気張ろうが何しようが結果として何一つとして取れなかった訳なので(小声)
三幕構成
恐らく最も新しいスタンダードに分類されます。
二〇世紀後半ごろに実際に理論化されたのを見るに本当につい最近ですね。
これはハリウッドの映画なんかでよく見られる手法らしく、読者にストレートに物語を伝える事に秀でてます。
映画を作る際に使われる技法ですが、娯楽小説を書くときにもかなり使いやすいと思います。
実際筆者も、今はこの技法で書くことがほとんどですし。
これに関しては、執筆をあまりしない人が特にわからないと思うので軽く説明させてもらいます。
三幕構成とは
序破急のように三回の出来事で分かれた技法の一つです。
ただ、違う点は重要な物語の間部分「エピソード」を点であるターニングポイントとして扱い、その点と点に線を引く形で書く手法であることです。
簡単に言うと、
一つの出来事を幕と見なし、その幕と幕の間をターニングポイントとして、主人公に行動させる。
でしょうか。
・第一幕(設定)
序破急で言うところ序の部分、起承転結の起の部分ですね。言い方の一つとして「セットアップ」とも呼びます
ここでは物語における設定。
誰が何をする、何を目的にするかを明確に書きます。
決して事件の導入では無いのです。
あくまでも「誰」が「何」をして、「どんな世界」で「何を目的」に行動するかを書くのです。
「魔法使いが存在する世界で、世界一の魔法理論を見つけるため行動する」
そしてここでの最初のターニングポイントである、第一幕と第二幕の間まで走る都合上、この第一幕はファーストターニングポイントではないのです。
このファーストに辿り着くための導入こそが、この第一幕の役割なのです。
・第二幕(対立、衝突)
第一幕で使った設定で起きたファーストターニングポイントをどう攻略するかが、この第二幕で書くことです。
対立とある様に、敵が出てきて主人公とぶつかる部分でもあります。
「魔法理論を政治的、軍事的に使おうとする存在の登場。それを許さない主人公との衝突」
これは物語である上で、面白い作品を作ることに必要なものがあります。
とりわけ、この三幕構成はその理論的に、ターニングポイントを置いて感情線が上下させる技法でもあります。
その際できる線の形こそが、「山」と「谷」です。展開とはこの山と谷の連続です。
主人公にとって都合の良いことが山であり、悪いことが谷なのです。
これを使って初めて面白いものが書けるのです。たぶん。
・第三幕(結末)
第二幕と第三幕の間のターニングポイントで起きた出来事の果てに、主人公は何を手に入れたのかを書きます。
ファーストターニングポイントで起きた事件を第二幕と第三幕の間のターニングポイントが解決した為、その後の出来事がこの第三幕です。
拾っていなかった伏線の回収、事件を解決した主人公の成長をチェックする箇所でもあります。
「主人公は相手の思いも理解して尚、より良い魔法世界を作ることを決意する」
このように、三幕構成とは幕と幕の間のターニングポイントを重視して書く手法です。
思い出
今となってはよく使う技法ではあるのですが、筆者は独学で学んだので間違ってる可能性もあるんですよね。
ただ、これは最初に書いた通り備忘録なので、ある種のメモ書きな訳です。
なので、ここで知ったことを鵜呑みにしないで、一度調べてみることをおすすめします。
ネットリテラシーです、はい。
現在進行形で使っている技法なのであまり思い出はありませんね。
では、とっととあとがきに行きましょう。
あとがき
さて、一緒に振り返って来たわけですが如何だったでしょうか。
筆者の負の遺産から、何か学びを得られたなら幸いです。
これを機に、「執筆してみようかな」と思ったそこのあなた! 執筆は簡単だ、なんて無責任事は言いませんが是非とも頑張って最後まで書いてみて下さい。
出来たものが稚拙だったとしても、書いた事が大切なのです。それが執筆すると言うことです。
また、賞を目指す人はそう気張らないで書いてみて下さい。
例え悪いものであったとしても、それを直すのが編集の仕事です。気軽に応募してみて良いのです。
そもそも入賞出来なかったら、きっと時の運です。もう一度、チャレンジしてみましょう。
案外、次は入賞できるかもしれないですし。
つまり、執筆とはトライアンドエラーですトライアンドエラー。
特に、創作をしている人間なんてよっぽどの才能でもない限りはどれだけ続けられたかが重要です。
ちっとも文才がなかったとしても、続けていけばそのうち、まともな物にはなります。
その上で、込める思いがあるのならそれは神作です。間違いない。
最後に筆者からの助言です。
創作で行き詰まった時は、何事もアンテナを高くしてみて下さい。アウトプットと言うのは案外バカにならないので。
昔の洋画を見ろとは言いませんが、お気に入りの物語をゆっくりと、シナリオ論を意識しながら読んで見て下さい。
それが編集者の視点です。そこからの気づきだったり、文の書き方が学べるはずです。
それでは次の記事でお会いしましょう。
お付き合いいただいた皆様に、より善い明日が来ることを祈って。
ここらへんで、筆を置かせていただきます。
いつもこの締めの文で小一時間悩むという。他の皆さまはなんて書いているのだろうか。
上木原かをり