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【あんまり、いや、ほとんど覚えてないや〜私の音楽遍歴❷〜】
当時流行していた「ギター歌本」を張りきって購入してはみたものの、ドカンと壁が立ちはだかります。
①そもそもギターのコードをまだ数個しか弾けなかった。(GとCとD7さえ弾けたら「世界征服」できるつもりでいた自分がおそろしい)
②本に載っている楽曲の大部分はまだ聞いたことがない曲ばかりだった。歌手どころか、メロディー自体を知らなかった。
という悲惨な状況に、なけなしのこづかいをはたいてからやっとこさ気がついた少年時代の私でした。
でも買ってしまったものは仕方がありません。なんとか元を取らねば、と気持ちを切り替えました。
とりあえず、そこからギターコードを必死で覚えました。手当たり次第に楽曲のコード譜を見て、見よう見まねで押さえて鳴らしていきました。
すると、たくさんの曲のコードをたどたどしくも順番に鳴らしていくうちに、だんだんとコードの並び方に、ある一定の規則性みたいなものがあることがわかってきました。このコードの次にはどうやらこのコードが来やすい、というレベルでの理解でしたが、これが後に「コード進行」の理論につながっていく、その最初のきっかけとなったのでした。
もちろんその時はまったくそんな「音楽理論」など知るよしもなく、「ふーん、流行りの音楽というのは、こうしてある一定の和音の流れがあって、それがいろんなバリエーションをもって手を替え品を替えて使われているんだ」という、すこぶる基本的な(原始的な)ことに、やっとこさ気づいたのです。
後から思えば、この歌本からのコード弾きまくり体験を通して、「コード進行パターン」というものに触れ、理解していったということになります。
(そういうことは学校の音楽の授業で習っていたはずなのに、こうして自分で体感するまでまったくわかっていませんでした)
こうして、①の「コードを知らない問題」は自分なりの努力で少しずつ解決していくことができました。
困ったのは②の「そもそも本に載ってる曲のメロディーを知らない問題」の方です。こればかりは自分の努力では解決することがなかなか難しいと思われたのです。
ところが。
せこい私は、歌本に載っていた聞いたこともないたくさんの楽曲の歌詞を、その後何度も何度もなめまわすように眺めて暮らしました。(よっぽどヒマだったみたいです…)
いつものように、歌本のページを適当に開けて、全然知らない曲の歌詞たちを眺めていたある日のことでした。
突然不思議なことが起こりました。
眺めている歌詞の活字から、勝手にメロディーが聞こえてくるのです。
そしてそのメロディーに合わせて歌を口ずさんでいる自分がいるのでした。
どこかでその曲を無意識で聞いていて、そのメロディーを思い出したのではありません。歌詞の言葉たちが勝手に音階とリズムをともなって頭の中で鳴り出したのでした。
これにはもう当の本人がびっくり。
はじめは、気に入った歌詞がすでに知っている別の曲のメロディーとうまいぐあいに組み合わさって、それがたまたま出てきたものかと思ったのです。
ところがそうではありませんでした。語呂のいいリズミカルな歌詞ならば、それとにらめっこしているうちに、自然とメロディーが湧き上がってくることに気づいたのです。
そのあたりでようやく、「えっ、これって自分で作ってる?」って思うようになりました。
これが自分ではまったく想像もしなかった「作曲の第一歩」でした。
(この後まだまだ続きます。タイトルの言葉「ほとんど覚えてないや」と裏腹に、「昔のことやけによく覚えてるじゃん」と訝しく思われた方もおられるでしょうが、タイトルの言葉の本当の意味は次回の文章で明らかになります。乞うご期待。)