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リクヴィルという田舎町

アルザス地方の町、コルマールへ行くついでにリクヴィルに立ち寄ってみました。ストラスブールからコルマールまで列車で30分ほど、その後コルマール駅前からバスに乗って移動、さらに30分。乗り継ぎ時間などもありますので、ストラスブールの宿から2時間半後に到着しました。

フランスでもっとも美しい村としてある年に認定されたとか、斜面のブドウ畑に囲まれた小さな村。アルザス地方の木組みの家々は、すでにストラスブールで見飽きてはいましたが、この村の木組み家並みはカラフルです。

城壁に囲まれていると聞きましたが、短い滞在時間では村全体の姿を把握することはできませんでした。また、クリスマス時期だけあって観光客がたくさんいるので、まるでテーマパークのような人波です。

バスに乗って来た人々はそれほど多くはありませんが、陸続きのヨーロッパですから、クルマでやって来る人は山ほどいます。周囲のブドウ畑の間の道路が路上駐車で埋まり、おそらく歩いて20分ほどのところでさえ、クルマが列になって停められていました。

田舎町というよりも、実は観光客が大勢来る商業地のように見えます。おそらく夏のバカンスとこのクリスマス時期を除くと、閑散とした風景が続くのかも知れません。それでもなお、木組みの間の漆喰壁(正確に漆喰かどうかはわかりませんが、ストラスブールのアルザス博物館で見た壁材は、ワラと土でした)が色鮮やかに塗られており、それがこの村を華やかにしています。

過去に訪れた町で似た町と言えば、ローテンブルク(オプデアタウバー)に雰囲気が似ているでしょうか。緩い坂を上がってゆくと、色とりどりに塗られた壁の家々の向こう、山側の門塔「ドルデの塔」に辿り着きます。

その塔の趣きが、ローテンブルクのマルクス塔に何となく似ています。あの町の絵ハガキやガイドブックによく出でくる、マルクス塔。いや、形や高さはまったく違うのですが、私にはどことなくあの塔を想起させた、というほどの意味合いです。

私が好きな上田篤の「人間の土地」という本の冒頭に、こんな意味の一節が引用されています。(いま旅先のため正確な引用ではありません)

マッセルバラが村だったとき、エジンバラはまだなかった。
エジンバラがなくなるとき、マッセルバラはまだ村だろう。
マッセルバラというのは、英国スコットランドの大都市エジンバラ近郊にある村の名だということですが、私はその村を訪れたことはありません。しかしこの挿句のように、リクヴィルがいつまでも村のままであることを、願ってやみません。


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