星明かりよ今夜もありがとう
この記事はエイプリル・ゴースト(以下A)とジューン(以下J:Aのメンター的存在だが、多くは謎に包まれている人物)との対話形式でお送りします。
A:Jさん、ラブソングって聴きます?
J:う〜ん…昔…本当に若い頃はそういうものを避けてたけどね。でも好きなアーティストの曲の中で、自分の琴線に触れる音があって、歌っている内容が恋愛についてだったっていうことはよくある。
A:つまり、無自覚に聴いていたってことですか?
J:そうね。ほら、その手の曲ってやっぱりメロディアスでキャッチーなサビだったりするじゃない? そういうのを聴いちゃうと、悪くないなって思うし。
A:耳に入ってくる音楽の大半がラブソングと言っても過言ではないかもしれないですしね。
J:そう。やっぱり何か掻き立てられるものがあるんだろうね。曲を作るモチーフになりやすいってことなのかな。
A:あと、割と成就しないものの方を歌ってることが多いですよね。「Mellow Doubt」とか。
J:……何かっていうとすぐにTFC出してくるねぇ、Aちゃんは。あれは失恋というか道ならぬ恋を歌ってるように思えて、すごい切ない…。
A:あぁ…たしかにそういう解釈もありですね。わたしはこの歌詞に、女々しいことは言えない、感情を表に出せない男心みたいなものがあるような気がして、「うぅっっ」って苦しくなります。
J:男心って…(笑)。色んな解釈ができるのはグッドソングの証だね。けどこの曲、おれの中ではラブソングではなく《口笛ソング》の分類に入っちゃってるから(笑)。
A:なんですかそのニッチな分類は…(笑)。
J:ハハハ。そのほかのラインナップはピーター・ビヨルン・アンド・ジョンの「Young Folks」くらいしかないんだけど。
A:「Young Folks」…もわたしに言わせれば、広義のラブソングって感じですね。男女間の恋愛模様とか恋人同士のふたりがどうのっていうのではなく、隣人愛とか博愛に繋がるような感じです。あー、これはわたしから出た考えじゃなかった。確か伊藤英嗣氏(音楽ライター。雑誌『クッキー・シーン』の編集長)が雑誌かライナーノーツかで述べていたことの受け売り(⁈)ですね。まずいな。今あたかも自分発信のようになりかけた。
J:それだけ伊藤英嗣って人の考えがAちゃんにとって自然に馴染むものだってことだよね。
A:まぁ…傾倒してましたからね。ある種の洗脳かもしれない。
J:それって恋愛感情と似てるんじゃない?
A:「好き」っていう言葉にすると同列に並んでしまうけど、う〜〜ん、なんかもっとそれを通り越した愛だよね。ファン心理というか。
J:音楽ライターにファンがつくとか、巷に音楽雑誌が溢れてた頃ならありえるかもね。
A:そうですね。すごく限定された時代ですけど。わたしは伊藤氏が書くレビューをずっと追っていたけど、ほかにも好きなライターさんは何人かいましたよ。その中でも村尾泰郎さんは贔屓にしてたかな。
J:2番目に好きな音楽紹介者ってことだね。
A:勝手に順位つけてごめんなさいって感じなんだけど、そうですね。伊藤氏の次にこの方が紹介するアーティストの曲は聴いてみたいと思ってた。それでヒットしたのがexloversというバンドで。
J:もう、どんな歌を歌うのか分かっちゃうじゃない、そのバンド名。
A:(笑)そうですね。予想通りですよ。exloversは90年代ネオアコとかシューゲイザーの音を吸収して、その出力加減がちょうどいいんですよね。冬の星座みたいに控えめにキラキラしていて、つい寒さを忘れてうっとりしてしまうような。
J:「シューゲイズ」なのに空見てる(笑)。シューゲイザーサウンドはポップなアコースティックと相性いいみたいね。
A:2000年代以降の、“ニューゲイザー” と呼ばれるバンドは結構メロディを重視したものが多い気がしますね。重厚なギターノイズも大好きですけど、“ニューゲイザー” の明るい感じもいいなと思います。exloversのアルバム『モス』の1曲目でハートを鷲掴みされますね。日本盤にはボーナストラックが入ってるんですけど、これもまたモロにネオアコでとてもいい。
J:で、このバンドはやっぱり恋愛について歌ってるの?
A:はい。比喩表現もわかりやすくて、若いねって感じです。