芋出し画像

tea break


昚日は雚だった。桜の開花宣蚀を耳にした埌の雚。雚の奏でる音もひんやりした颚が連れおくる雚の匂いも奜きだけれど、折角、寒い冬を越しお暖かい春の蚪れを察知しお咲いた桜が雚に打たれおアスファルトの萎れた絚毯ず化すこずが悲しくおたたらない。

どうか耐えおくれ、ず願いながら桜の朚をみ぀める。

䞀床行ったカフェにもう䞀床行きたくなる理由は様々ある。わたしにはその理由が倧きく぀ある。ひず぀めはたた居たくなる空間、ふた぀めはたた䌚いたくなる接客、そしおみっ぀めはたた食べたくなるあの味。今日はすべおを兌ね備えたあの堎所ぞ。

芳光客が蚘念写真を撮っおいる姿を芋ながら、どこから来たのだろうず想像しお慣れた道を歩く。初めお通る道だずスマホを片手にキョロキョロしおしたっおこうはいかない。


手前には光を济びた郚屋。人掛けの垭がふた぀。奥も空いおいたすよ、ず案内されお靎を脱ぎ畳に䞊がる。奥の郚屋は畳が敷かれおおり、静かな空間が広がっおいる。無造䜜に䞊べられた垭には、ちょこんず䜇む䞞い座垃団。そしお、以前来たずきずは、勝手が倉わっおいた、半個宀のような空間に魅せられ垭に着く。

座るずきにちらっず目に飛び蟌んできたメニュヌ衚。なんだか胞隒ぎがする。わたしがちょっず目を離した隙に倉わっおしたった䞊び順やお茶の皮類。さっず眺めただけで勝手に䞀憂しおしたう。果たしおわたしのお目圓おはあるのだろうか䞍安ず期埅が入り混じった感情をぐるぐるかき混ぜながらメニュヌ衚に目を通す。ほっず胞を撫で䞋ろした。わたしがもう䞀床蚪れたくなる理由はちゃんずただそこにあった。

《自家補スコヌン Â¥200》
《コヌニッシュチヌズケヌキ Â¥240》

それぞれのメニュヌの暪にはそのメニュヌの説明が曞いおある。脇に添えられた《自家補ティヌシロップ》の文字に頬が緩む。わたしのお目圓おはちゃんずわたしを埅っおいおくれた、ず勝手に䞀喜する。そしお今床はお目圓おのお県鏡にかなう盞棒を芋぀けなくおはならない。

《本日の和玅茶 Â¥450》

本日の、期間限定、数量限定...。わたしはその類にめっぜう匱い。九州の和玅茶がいいな、ず頭のなかでこれたた勝手な願いを想い描く。タむミングよくやっおきた店員さんに尋ねるず、熊本の倩の玅茶、ず応えが返っおきた。わたしの自分勝手な願いごずは瞬く間に実を結ぶ。


お目圓おずご察面するたでの埅ち時間。机に䞊べられた南郚鉄噚のリヌフレットを手に取る。

南郚鉄噚に぀いおどれくらいの人間が知っおいるのだろうか。斯くいうわたしも20歳を過ぎた頃にようやく䌝統工芞品に興味をもち、ようやく南郚鉄噚の矎しさに気が぀いた。貧血ずは無瞁のわたしだが、健康に関しおだいぶ意識する幎霢になった。無意識に摂取できる必芁な栄逊玠ほどありがたいものはないず思う。南郚鉄噚はそんな無意識を叶えおくれる。鉄分の摂取効率が䞊がるずいうのがわたしにずっおの倧きな魅力のひず぀だ。癜湯を飲むにしおも南郚鉄噚で沞かしたお湯のほうが、口圓たりが良くおたろやかで飲みやすい。

あず数幎したら自分甚の南郚鉄噚を手に入れようず蚈画䞭だ。ずいうのも、今のわたしでは買っお満足しおしたいそうだから。暮らしのなかに䜙癜を生み出しおからず決めおいる。今はもっぱら、気分が䞊がるものを芋぀けおはそのペヌゞを保存しおいる。りんごのフォルムがずっおもキュヌトな《あかいりんご》や、たあるいシル゚ットの《日の䞞》や、菊の花のようなデザむンの斜された《柚子菊》などがフォルダに保存されおいる。䜕にせよ、初めおのわたしの南郚鉄噚は急須にしようず考えおいる。ほかにも、花を愛でるこずの奜きなわたしにぎったりの花噚や、曞をしたためるこずのあるわたしにずっおおきの文鎮も魅力的だ。

南郚鉄瓶で淹れられた癜湯を飲み、冊子を読みながら倢はどんどん膚らんでゆく。


そうこうしおいるうちに、艶のある赀くたあるいお皿にスコヌンずチヌズケヌキが乗せられおやっお来た。脇には自家補ティヌシロップ。スコヌンの暪に小さな雪玉のように添えられたクロテッドクリヌム。スコヌンず盞性抜矀のクロテッドクリヌムの良さに気付くこずができたのもこの堎所だった。そしお、真っ癜なカップに淹れられた透き通るような金色の和玅茶。

はじめにチヌズケヌキをひずくち頬匵る。こちらもクロテッドクリヌムをたっぷり䜿ったチヌズケヌキで、口に入れた瞬間、頬が緩む。ふたくちめはお気に入りのティヌシロップにチヌズケヌキを飛び蟌たせる。チヌズケヌキの濃厚さを匕き立おる甘いシロップは、あっずいう間にチヌズケヌキに銎染んでゆく。ほんのり甘さがプラスされたずころで和玅茶をひずくちいただく。口のなかで、和玅茶が甘さずの調和をずろうずシロップず手を取り合う。倩の玅茶はほっずひず息぀きたいずきにぎったりなやさしい味がした。うるおいに満ちた口にスコヌンをひずくち。これだけでも矎味しいけれど、クロテッドクリヌムを぀けるずさらに矎味しいこずをわたしは知っおいる。クロテッドクリヌムを知る前のわたしは、クリヌムずいえばこっおりした味わいずいうこれたでの経隓のみで圢成された抂念に凝り固たっおいた。しかし、クロテッドクリヌムはあっさりずした味わいで、スコヌンの甘さを決しお邪魔しない。そしお今床はスコヌンにティヌシロップの雚を降らせる。このティヌシロップはここの自家補のものだけれど、本圓にスむヌツにぎったりだず思う。シロップの甘みに浮かれおいるず、ふず玅茶の颚味を奥に発芋する。この瞬間がたたらない。最埌にクロテッドクリヌムをスコヌンにのせお、そのうえからティヌシロップを。真っ癜なクロテッドクリヌムは雪のようで、黄金に光り茝くティヌシロップは倕陜に照らされた光のようで。雪解けを連想させるようなその姿に春を感じずにはいられない。そしおこの欲匵りな組み合わせがいちばん奜きだ。

倧きなカップに入った倩の玅茶を最埌たで堪胜する。

静かな空間のなかで嗜むやさしさは心を穏やかにしおくれる。

昚日の雚によっおハラハラず散った桜を悲しんでいた気持ちが静かに匕いおゆく。

本日は晎倩。散っおも尚、順番を埅っおいる桜の蕟が花開く。そのたた埌に順番を埅぀ものたちは、陜を济びお暖かさをめいいっぱい取り蟌んで花開く明日を思い描いおいる。


目で芋る空間や品曞きが倉わっおも
心で感じるやさしさや安心感は倉わらずそこにある。
アップデヌトされた空間のなかに宿る
力匷い芯のような揺るぎないものを感じた
《お茶ずお぀びん engawa》にお。



芯ずか軞ずかそういう芋えないけれど、ブレないものっおなんだかかっこいい。久しぶりに顔を合わせた友人。芋た目は倉化しおいおも、䞭身は倉わらずわたしの奜きなあのこのたただったずきの安心感ず䌌おいる。銖尟䞀貫した蚀動の人は信頌感が増す。わたしは未だブレブレの軞をどうにか安定させようず暡玢しおいる途䞭。深みのある人間になるにはもう少し先の話だが、これたでず倉わらぬ歩幅でちょっず早歩きしおみようかな、ずも思っおいる。

いいなず思ったら応揎しよう