CTW株式会社に名誉毀損で訴えられ弁護士に依頼せず本人訴訟で挑み勝訴した話【地裁編】
皆様、大変ご無沙汰しております、とっても昔、「トーキョーを加速(ブースト)するアプリを紹介」していたアップトーキョーです。と申しましても、当時有志で活動していた中の人たちは「リワード広告の規模縮小により役割を終えた」と言ったか言わないかで雲散霧消いたしました。というわけで、
サイトをWhoisすると出てくる「app.tokyo」ドメインの所有者であり、またそれらを元に何を勘違いしたのかCTW株式会社が「アップトーキョー運営代表者」と名指しで訴訟を起こして〝被告〟と呼ばれた私、marchEnterpriseのま〜ちがお送りいたします。
1. CTW社の「得BUY」アプリ騒動
さて、まず事の発端をかいつまんで説明いたします。
最近では、ゲーム内容とは異なりすぎる男性を過度に魅了しすぎるバナー広告を乱射して物議を醸している「ビビッドアーミー」などの運営を行っているCTW株式会社という「世界を驚かせるスマートフォンサービスを提供する」を掲げた港区六本木のアークヒルズ内に居を構える企業様がございます。
このCTW株式会社が、2017年初旬から2018年4月まで運営していたスマホアプリに「得BUY」というちょっとだけある意味で世界を驚かせるスマートフォンサービスがありました。どんな驚きのアプリかというと、当時入手困難であったニンテンドースイッチなどのいろいろな商品を共同購入という名目でSoftBankペイメントのキャリア課金などを使い一口100円でサービス利用者からお金を集めて運営元の利益を上乗せした所定の口数に達したら抽選を行い当選者一人のモノになる。という、普通に考えたら「よくやるなぁ……」というサービスで、これが普通にApp StoreやGoogle Playで入手可能で、さらに数多くの人気ユーチューバーを使ったプロモーションなどで拡大し、「100円でスイッチが当たるなら」と中高生層の子どもたちを主たるユーザーとして10万人を超える利用者がいたとされるサービスでした。
まぁ予想通りと申しますか、やはりこちらでもいろいろと物議を醸し出してしまいまして、ステマや詐欺ではないかと疑問視される方々や、景品表示法や賭博に関する法の違反を検証する方々などがネット上にあらわれちょっとした炎上状態となりました。それに対して運営元であるCTW株式会社の得BUY公式ツイッターアカウントが恫喝とも取れるようなリプライを乱発してしまうというような微笑ましい事態もございました。
聞くところによると、各自治体の消費生活センターや国民生活センターなどにも相談が複数あり、オンラインの垣根を超えて問題視されたサービスでありましたが、SoftBank・au・ドコモの三大携帯電話キャリア決済が廃止となったのを機にクレジットカードを持たない中高生ユーザー離れに歯止めを掛けられないまま口数を満たさず抽選まで到達しない商品が頻発したあげく、賭博容認派の弁護士が顧問に就任したり辞めたり、アプリの相次ぐBANや野良apkの配布などいろいろと話題を提供しながらも、残念ながら1年と数か月を経てサービス終了となったのでありました。
そんな騒動の渦中、アップトーキョーでもアプリ業界の闇を見つめながら、「得BUY」についてもブログ記事で取り上げたり、Twitterで動向を投稿したりしておもしろおかしく情報を提供しておりました。
2017年9月5日のアップトーキョーの記事「【悲報】賭博アプリ「得BUY」キャリア決済で賭けることができなくなる #AppStore定点観測 9/5」の中で、アップトーキョーの小山本武良(ペンネーム)氏がSoftBankペイメント社へ取材した回答が掲載されています。
前述のとおり、「得BUY」はユーチューバーを使ったプロモーションが功を奏したことにより、クレジットカードを持たない若年層を中心に利用されたアプリでした。高額商品に一口100円を懸けるために携帯電話キャリアのまとめて支払いサービスが必要不可欠であったわけです。裁判中、CTW株式会社の代表取締役である佐々木龍一氏の陳述でも明らかになりましたが、このことがよっぽど頭に来たのでしょう。怒りの矛先を向けたのは……こともあろうにアップトーキョーでした。おい待て、刃を向けるならSoftBankペイメントやろ?いや、その前に何でNGになったか自己省察すべきでは。そんな願いも虚しく、地獄の果てまで追いかけて必ずお前の頸に刃を振るう!絶対にお前を許さない!!と言わんばかりの強襲を仕掛けてくることになるのでした。
またその頃、CTW株式会社は「KOFガチャ返金訴訟」にも関わっていたことも付記しておきます。
2. CTW株式会社が東京地方裁判所へ民事訴訟を提起
2017年12月、CTW株式会社が自社ホームページにてニュース記事を掲載します。タイトルは「Webメディア「アップトーキョー」運営代表者に対して名誉毀損の訴訟を実施」でした。
「あーあ、アップトーキョーさんも面倒なことに巻き込まれちゃって大変やなぁ」と思ったものです。そして出先から帰宅すると……
ワイが訴えられてるやんけΣ(゚д゚lll)
東京地方裁判所から送られてきた、必ず手渡しを行わなくてはならない強制力のある郵便物「特別送達」というA4サイズの封書には、以下のものが入っていました。「第1回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」という用紙が1枚。答弁書を提出せず欠席すると原告(CTW株式会社)の言い分を認めたものとみなされそのまま判決が下されますよという注意書き、答弁書の作成と提出のしかた、裁判への出席、弁護士への委任方法の4つが書かれた「最初にお読みください」という用紙が1枚、答弁書の書き方とフォーマットが書かれた用紙が2枚、そしてさらに同封されていたのはCTW株式会社の訴状で、このようなものでした。
訴状全文は末尾にてご覧いただけます。
まず原告となるCTW株式会社の雇った代理人弁護士についてググってみたところ、ベリーベスト法律事務所というのはCTW株式会社と同じ六本木一丁目にあるかなり大きな弁護士事務所で、酒井将弁護士と浅野健太郎弁護士はこの法律事務所のトップ2であることが分かりました(後に二人とも過払金訴訟絡みで懲戒請求がなされ、現在は代表が萩原達也弁護士に変わっている)。大武真織弁護士はアソシエイト弁護士枠に入っていてたぶんヒラ、若くて可愛い。なぜこんな大手の法律事務所のトップ2がいきなり名を連ねてきたの!?俺、死ぬわ!絶対死ぬわ!!と思っていたけれど、第1回口頭弁論でいきなり2人は辞任届を出して顔も見ることなく退散して、現代表の萩原達也弁護士と大武真織弁護士が代理人を務めることになったのだけれど、萩原弁護士は結局最後まで姿を現さなかった。当時は何が起きたのかサッパリ分からなかったけれど、威嚇するために偉い人の名前を載っけていただけだったのでしょうか。
続いて2ページ目で、自分の名前の横に「被告」と書いてあるのを目の当たりにして固まる。まるで罪人ではないか、テレビで被告呼ばわりされちゃうの?俺、死ぬわ!絶対死ぬわ!!と思ったけれど、裁判というものは「刑事裁判」と「民事裁判」の2パターンあって、テレビのニュースで良くやってるのは刑事事件の容疑者が被告となって、民事裁判でも訴えられる側を被告と呼ぶそうで、別に悪いことしてなくても被告って呼ばれて何か嫌、とにかく嫌だなぁなどと、ググったりしながらやっぱり俺、死ぬわ!絶対死ぬわ!!と思ったりしていました。さらにそんな被告となった自分に対して「200万支払え」とか「日経新聞と読売新聞に謝罪広告を掲載せよ」とか命令口調で書いてあってもう俺、死ぬわ!絶対死ぬわ!!と慌てふためいていたのであります。
しかしながら3ページ目で「???」となりました。
などと書いてあるではないですか。まず、何故に「、(読点)」ではなく「,(コンマ)」なのかが気になりました。しかも全角で。4Gamerかよ。さらに何ら証明も証拠もなく、いきなり「被告は,「アップトーキョー」等の運営」と名指しであります。普通、プロバイダ責任制限法第4条に基づく情報開示請求の結果とか付けてくるんじゃないの?ベリーベストのホームページにも書いてあるし。そもそも名誉毀損行為とするものが、Twitterの投稿に対してだ。実は、ちょっと話がややこしくなるけれど、私はTwitterへの発信者情報開示請求をこのとき並行して進めていたのでした(まさかこの後、開示された発信者の情報がCTW株式会社であって、この訴訟と並行して今度は逆にCTW株式会社を被告として訴えることになるとは思ってもいませんでした、予感はしてたけど)。Twitter社の本社は米国にあるために、発信者情報開示請求の仮処分申し立ての書面に全英訳を付けたり、そもそも当事者の資格証明書としてカリフォルニア州に法人登記書を国際郵便で取得しなくてはならなかったりでめちゃくちゃにややこしい(google先生やconyac先生には大変お世話になりました)。で、しかも苦労してTwitter社への仮処分命令が出たとしてもIPアドレスしか開示してくれなくて、今度はそのIPアドレスを管理するプロバイダに別の訴訟を起こしてプロバイダがそのIPアドレスを使った人に意見を聞いたりして開示請求を棄却するよう答弁をしてきて、それにまた苦労して勝訴しなくてはならない。そこでやっと匿名ツイ主の名前と住所とメールアドレスが開示されるという仕組みになっていました。これを弁護士に頼んだりすると100万くらい掛かってしまう。はるかぜちゃんは良く頑張った。そんなわけで、これを読んですぐに「開示請求やってないだろ」と思ったのでありました。そもそもちゃんと開示請求していれば、私一人を名指しして訴えてくるわけがないのです。Twitterの情報開示請求をしていなくとも、Whoisの検索結果などをこれ見よがしに添付してくるに決まっている。それさえもなく、いきなり名指ししてきたのは何か理由があるはず、たぶん確信がなかったとか、面倒だったとか。すんなりこちらが「ハイ、アップトーキョーは私一人です!」なんて認めてくれば楽になるだろうし、とりあえず理由も記さずにコイツです!と言ってきたように読めた(案の定、第1回口頭弁論で裁判官の問いかけに対して「開示請求はしていません」と大武弁護士が言った。のが嬉しくて記録として残したくなったので原告代理人が情報開示請求していないと述べたと書面で提出したら、裁判官に「特に期日のやりとりを上申書化する必要はありませんから」と怒られました)。そしてさらにその直後の文面で「原告ツイッターのコメントとしてとして」と誤植がありました、こんな大手の法律事務所なのに校正班はおらんのか?やはり面倒そうである。弁護士も大抵、弁護士事務所に所属する働き手なのだ。依頼人の前では親身になって相談に乗りつつも、いくつも案件を抱えているうちのひとつでしかないわけで。当事者である訴える側も、訴えられる側も人生掛けたつもりでやってるかもしれないけれど、弁護士にとっては一件の仕事でしかないのです。訴状や答弁書、準備書面と、文書の応酬で進んで行くのが裁判である(ことが上記のTwitter情報開示請求を自分で進めているうちに分かってきた)。書き手のスキルやセンスにもよるけれども、文章の内容や構成、言い回しや誤字脱字からその人の本心があたかも行間から滲み出てくるように見えてきます。「あーめんどくせー」とか「長くなるダリー」みたいに。今、これを書いている自分がそれそのものだ。オイ←。私はスマホアプリの開発などを行うプログラマーです。他の人の書いた細々とした長大なコードをひとつひとつ目で追ってバグを見つけたりもする、なので人の文章をそこに書いてあることの意味を理解しながら読むのは得意だったりします。さらに広く浅い知識を補うために、問題解決は専らググることであります。以前、任天堂の中途採用の実技試験を受けたとき、関数の再帰呼び出しの書き方が分からなくなってググろうとしたら止められて速攻お祈りされたこともあるほどでした。なので、日本中に点在する裁判に関する情報をググって使えそうなところをコピペして繋ぎ合わせて、ひとつの作品を創作することができるのです(コピペプログラマー力)。っていうかやってみたら、裁判官や裁判所の書記官の人にいろいろ怒られたり教えられたりして、なんとかやっていけそうな気がしてきていたのでした。
訴えられて、被告になったからと慌てふためいて、弁護士に依頼すれば、勝訴しても敗訴しても着手金30万円は戻ってこない。よくある判決文の「訴訟費用は原告の負担とする」というやつも、こっちにしてみれば訴訟費用なはずの弁護士費用は支払ってはもらえない。企業にとって30万円は経費のうちかもしれないけれど、個人の私にとって30万円は、MacBook買ってスイッチ買ってPS4買ってもお釣りが来るくらいデカイ。そんな高い弁護士費用を払ってまで行う民事裁判は、ほとんど金持ち同士の道楽の札束の殴り合いにしか見えません。今回、CTW株式会社は企業として私個人を訴えてきたのです。ググっていたら「恫喝訴訟、威圧訴訟、批判的言論威嚇目的訴訟」という文字が見えました。それは、スラップ(SLAPP)訴訟のWikipediaでした。裁判に負けたら、弁護士費用の30万円+CTW株式会社への損害賠償金。裁判に勝ったとしても、弁護士費用の30万円+成功報酬30万円。どっちにしても泣き寝入りの大損害。どうする?なんて考えもしなかった、だって私の預金残高……いや、私にはgoogle先生が付いていてくれている。以前訪れた無料相談の法テラスの弁護士の先生が、ニヤニヤしながら言っていた言葉を思い出しました。
「まー個人でもやってできないことではないですけどねぇー」
それだ、選択肢はそれしかない。訴状が届いたその夜からサイゼリヤ通いの日々が始まりました。閉店時間の午前2時まで、ドリンクバーだけでやり過ごす。XCodeもUnityもLightWaveも起動しない日々が続き、10日後の2017年12月18日に被告答弁書が完成したのでありました。
3. 東京地方裁判所の判決
裁判は月イチペースで進みました。地裁はひとりの裁判官とひとりの書記官が担当として付いて、口頭弁論が行われる法廷では「異議あり!」や「タンターン!却下します」などといった激論などは……一切行われません。原告か被告、毎月どっちかが用意した準備書面と言われる文書を、1週間前までに裁判所と相手用と自分用に3部プリントアウトして、裁判所と相手に別々に送っておくのが普通の弁護士さんのやり方のようですが、何十ページもFAXで送るのも送られても困るし、受領書とか作るのがいちいち面倒だったので、裁判所と相手用の2部をレターパックで裁判所の書記官宛てに送りつけるだけで全部進めました(レターパック代は自腹だけど、裁判所から相手方へ送る切手代は、原告が予納したものが使われ最終的に裁判費用として敗訴した方が払う、らしいけど裁判費用の精算はほとんどされないらしい、けどした)。で、法廷では裁判官がどっちかが準備書面を出しました、このように陳述するということで良いですか?と確認されるだけ。で、ここを補ってくださいとか、ここに反論があるならそれを書いた準備書面を提出してくださいって感じで、裁判官が今度は原告からとか被告から、とかボールを渡していきます。ま、実際に法廷が使われたのは、第1回口頭弁論の2018年1月とそこからぶっ飛んで同年10月、11月の第2回、第3回口頭弁論と、2019年1月の証人尋問と3月の判決の計5回だけでありました。その間の2018年2月から9月までは何をしていたか?それは裁判官と書記官、原告と被告が書記官室という密室で行われる弁論準備手続という名の会合でした。法廷で行われる口頭弁論でも、書記官室で行われる弁論準備でも、準備書面の提出は双方ありましたが、違いはというと弁論準備では、裁判官の判断で原告か被告のどっちかを部屋の外の廊下で待たせて、個別に話を聞くといったことが行われたりするのと、口頭弁論はどこの誰でも傍聴ができるのに対して、弁論準備は基本傍聴できないということだそうです。
そんな感じで月イチペースでノロノロ進んで行ったわけですが、裁判官もCTW株式会社側の弁護士さんも多くの案件を並行して抱えているわけで、致し方ないとは思いつつも、これだけに集中して臨んでいる私にとっては終わりの見えない回廊をグルグル巡っているように感じられ精神的に落ち着かない日々でありました。2019年1月が一番ヤバくって、証人尋問と別件でもうひとつのCTW株式会社との口頭弁論が立て続けにあり、かなり追い詰められた状況で帰りの霞ヶ関駅のホームから電車に吸い込まれそうになった恐怖体験をしたことを鮮明に覚えています。
そんなこんなで1年以上に渡って続いた裁判も2019年3月28日に地裁判決を迎えます。判決と言っても、行きませんし、「勝訴」と書かれた紙を裁判所の外で掲げるようなこともいたしません。翌々日に郵送されてくるのをただ待つだけでありました。そして届いたのがこちらとなります。
地裁判決全文は末尾にてご覧いただけます。
ええっと……原告というのはCTW株式会社のことだから、CTW株式会社の請求をいずれも棄却するってこと?これは勝訴したのかな??でもその直後に何これ「200万支払え」とか「日経新聞と読売新聞に謝罪広告を掲載せよ」とか命令口調で書いてあってもう俺、死ぬわ!絶対死ぬわ!!ってなったけれど、そこは順番に原告の主張→被告の主張→裁判所の判断みたく書いてあるから、たぶん大丈夫なハズ!
そこからドキドキな2週間を送りました。なぜかというとこの判決を不服としてCTW株式会社側が控訴してくるかもしれないからです。裁判は、
地裁 →(控訴)→ 高裁 →(上告)→ 最高裁
というように3段階のレベルアップがある模様。よくニュース記事で出てくる「弁護側は即日控訴した」とか書いてあるやつ。控訴期間は判決が送られた日の翌日から2週間とググったら書いてあったので、いつ書記官の方から電話が来ても出れるようにじっと耐えて待っていたわけであります。3月29日から1週間後の4月5日、まだ何の連絡もありません。そして2週間後の4月12日が訪れても何の連絡もありませんでした。私は内気なものでして、この時点で電話を掛けて聞けば良かった……でも怖くて掛けられずに、判決確定を半ば確信したまま週末を越えて、翌週15日、16日辺りで「さすがにもうないやろ……」と電話ではなくサイゼリヤで新たな書面の作成に入りました。裁判費用を敗訴した方に請求するための「訴訟費用額確定処分申立書」というものを。4月18日付けで裁判所へレターパックした書類は、翌週の月曜日に書記官さんから電話が掛かってきてこう言われました。
「あの、原告から控訴されていますので、取下書を提出してください」
ファーーーーーーー!!
《《高裁編へつづく》》
この下から訴状全文と地裁判決全文がご覧いただけます。
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