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「551」は豚まんのにおいじゃなくて、母の愛情の香りになった日
今年から地元を離れひとり暮らしをはじめた。でも、隔週で歯医者やらで地元に戻っている。最近は以前より時間ができたので、ついでに実家に足を伸ばす機会も増えたのだが、ある日、買ったばかりのニット帽を忘れてしまった。
そこで先日、地元に戻ったときに、母がわざわざ駅の改札までニット帽を届けに来てくれた。
ニット帽だけだと思ってたのに、なにやら母は大きな紙袋を持っている。
「ジッパーの袋に八宝菜の具材入れてあるから。これあと炒めるだけな。あと、お母さんの友達がええってゆうてたヤクルト1000。(ちなみに6本1パック)
あと一番上、これ551。食べて!」
母からの弾丸の説明を聞きながら受け取った。が、しかし。
重い……(笑)。
今から2カ所ほど行くことろがあるんだけど、正直キツいなぁなんて思った。でも、これは母の愛情、文句なんて言えない。「ありがとう」と伝え、病院へ向かった。
待合室。
プ~ン。
うわ、めっちゃ551やん……。
幸いそこには人がいなかったからよかったけど、診察室に入った瞬間の先生は
「これ、551や」
と思ったに違いない。
たぶん関西人は、街中で「551らしきにおい」を感じた瞬間に「551」だとわかるはず。そして、たぶんこのにおいが苦手な人はいないんじゃないかな、と勝手に思っている。
とはいえ、病院では場違いだ。
診察が終わり、待合室へ戻ると、残念ながら人が増えていた。みんなこのにおいに反応したはず。
みんなにとっては「551」のにおいだろうけど、わたしにとって今これは「母の愛情」を表してるんです(笑)。すみません。
なんて心のなかで謝罪した。そして「551」のにおいを漂わせながら、別の目的地へ行き、そのあと電車に乗って帰宅した。
到着したのは20時過ぎ。まぁまぁ重たいものを持ち歩いてたからけっこう疲れていた。そして、お腹も空いていなかった。
いつもなら「しんどいし、もうご飯食べんでいいわ」となるけれど、 今日は母が持たせてくれた「551」がある。 チンするだけでいい。せっかくだから半分だけ食べた。お腹がいっぱいでも「551」はやっぱりおいしかった。
きっと母は「食欲がないときは調理するのがめんどう」と以前わたしがポロッと言ってたことを覚えていて、551を持たせてくれたんだろう。
たぶんこれからわたしは、あのにおいがしたら「551や!」と思うだけじゃなくて、母のことも思い出すんだろうな。