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虹の尻尾
私たちは儚い夢の続きを未だに追っている。欠けた月の補い方がわからぬまま、変わらず巡る日常を過ごして。
欠けた丸を当たり前に受け入れ、誰かと過ごす中できっと埋めていくのだろう。
父が亡くなった年から数年経った。この季節になると鈴虫の鳴き声で思い出す。
いつか4人で来るはずだったハワイは永遠の夢となった。妹が生まれる前に来たハワイの海は、父が去った後のハワイの海の碧さと変わらず、寄せては返す静かな波の音もそのままだった。人々の楽しげな気分と優しい笑顔がここは天国じゃないかと思わせた。わたしは朝方ホテルのベランダに座り、夜明けを見守る。ふんわりと温かな風に包まれ、なぜか旅のお供にと持ってきた星の王子様の本をテーブルに置いたまま朝を迎えた。
虹の尻尾を見つけようと妹とはしゃいだ。1人きり空を仰ぐ母がそこにいた。日本に帰ると急に現実に引き戻された。鈴虫が鳴いていたから。伝えられぬ言葉を飲み込む秋。追懐の情。
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