さけフレーク
ねえ、このさけ、ぼくがすきなのとちがうよ。
ぼくがすきなやつには、「フレーク」なんてかいてなかったよ。
そうだね。いつものさけフレークは品切れだったの。
漫画みたいにほっぺを膨らませている5歳児は、いつもの鮭フレークじゃないことに怒っている。
私のおなかの中で、細胞分裂を重ねてうまれた生命体が
あのふにゃふにゃで首もすわっていなかった生命体が
さけフレークが気に入らないと怒っている。
人間の成長はすごい。
もう世界は終わりです。
ただしひとつだけ、あなたにとって大切なものをひとつだけ残してあげましょう、といわれたら
子どもです、子どもを残してください、と言うだろう。
そんな、偽善者みたいなことばが素直にでるほどに
生命の輝きは、美しい。
あした、いっしょに、隣町のスーパーへいこうね
きみの好きなさけフレーク、あるといいね。
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