マナミとナースの仕事③

精神科に勤める私が心療内科に通院なんて皮肉なものと思いながら私は即日予約が出来たメンタルクリニックに足を運んだ
精神科に勤めてたからこそ通院のハードルが低かったのかもしれない、世間における精神科や心療内科のハードルは思ってるより高いのだ
通院の結果は希死念慮が出ている為『鬱』症状があると診断された
どうしても辛ければ休職も考えた方がいいと言われたが実は根はマジメな私、私が稼がなきゃ誰が稼ぐと思い仕事は休まず行くことにした
今思えばここで休んでおけば症状が長引かずに済んだのかもしれない

翌日仕事に向かう…昨日急に休みを取ったことを師長に謝罪した
『昨日は突然休んでしまってすみません』
『なんや辞めたと思ったわ、新人のクセに迷惑かけといてよく来れたな』
いきなり毒のある一言だった…ぶん殴りたい気持ちが普段なら出て来るのだがコレが鬱の症状なのだろう、抵抗する気力が湧かない…
結局謝るしか出来なかった
『師長はああ言ったけど気にしたらあかんで』
プリセプの先輩はそう言ってくれたが私が気にしているのはさっきの発言よりも前に言われた看護師に向いていないの一言がずっと心に残っていた
向いていないのは自分でも学生時代の実習の頃になんとなく察していた、でも今更止まる訳にはいかないと頑張って資格を取った
自分でも薄々感じていた事を他人に言われた事がとにかくショックだった
それから2週間くらい仕事を続けていた
相変わらず失敗は多いしつまずく事もあった、その度に師長にイヤミを言われた
別に指導を受ける事は構わないが事あるごとにイヤミを言われ続けると失敗を恐れるようになってしまった
ある日入浴介助をしていると突然息が苦しくなった、段々と呼吸がし辛くなる…私は必死に呼吸した
『大変や!マナミさんおかしいぞ!』
入浴中の患者さんが異変に気付いて大声で人を呼んでくれる
『あっ、マナミちゃん過呼吸起こしてる!誰か来てー!』
私は空いている病室のベッドに案内され座った、相変わらず過呼吸は治らない
『ちょっとここでゆっくりしとき、しばらくしたら治まるわ』
そう言い先輩ナースは部屋を出て行く
手足が痺れてくる、私どうしたんだろう…
しばらくすると呼吸も落ち着いてきた
それと同時に部屋に主任さんが入ってくる
『大丈夫?』
『ちょっと落ち着きました…』
『最近表情が暗いしおかしいなとは思っててん、何かあった?』
私はクリニックに通ってる事、鬱と言われた事、死のうと考えた事…色々と話した、師長の事は伏せていた
『ぶっちゃけ師長が原因やろ?あの人言い方いちいちキツいからな〜』
『知ってたんですね』
『一応報告も受けてるからね、強く当たられてるって』
『私って看護師向いてないんですかね…』
『向いてるかどうかは私にはわからないけどみんながみんな向いてる仕事してる訳ちゃうからね、向いてなくても看護師やってる人もおるから自分次第やと思うよ』
この言葉はよく覚えている…今もこの言葉に救われている
少し経って
『もう動けそうです、もうちょっと頑張ってみます』
『しんどかったら早退してもええからいつでも言ってね』
『はい、主任、ありがとうございます』
頑張ろうと決意した私だったが病魔はじわじわと私の精神を蝕んでいた…

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