同一労働同一賃金(派遣社員の場合)
ちょっと時間ができたので、前に記事で予告しておいた表題の件をまとめておきたいと思う。
というか、こういうのちゃんと調べて出してる人、全く見当たらないんだけど、なぜ?
全国ウン千万の派遣社員の皆さま、自分の境遇について疑問も持たず調べもせず働いてんの?
そして法案通した国会議員の方々、役所なり学者の方々、この問題についてコメントつけてる市井の人々も、実際にどうなってるかも知らんで何を語る?
募集要項に数多ある「自分の頭で考える」とか「興味を持ったものを自発的に調べて解決に導く行動力」なんてのは、我田引水ながら、こういうのを指すんじゃないのかね?
自分が困ってることについてすら調べも動きもせーへんのに、会社で組織のために行動するわけがないがな!
つわけで本題
まず派遣社員の同一労働同一賃金には、2つの方法があります
①派遣先に合わせる
②派遣会社内の労働者代表と、労使協定で定める
①は稀だと思うので、ここでは②について取り上げます
まず②の方法での算定にあたって、参考とする統計調査があります
A. 賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)
もしくは
職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)
B. 職業安定業務統計による地域指数
派遣の時給がA×Bの額を下回っていなければオッケー、ということです
※以下はあくまで私の経験した某派遣会社での話であり、他社の事情はよくわかりません
これに対する某派遣会社内での基準
まず、「職務カテゴリ表」なるテーブルがあります
職業分類ごとに、「求められるスキル」と「職務内容」によってA~Dの4つに分けられています
例えば「事務的職業」の場合
A:臨機応変(対応力)……非定型な業務に対応し関係者内の調整をしていく業務
・高い専門技術やビジネス知識をもとに応用的な対応・複雑な交渉を行う業務
・担当業務範囲を超え、非定型なものに対しても自ら判断して臨機応変に対応することが求められる業務
・複数の関係者の利害関係を調整しながら遂行していくことが求められる業務
B:改善工夫・調整力……課題に対して改善工夫し、関係者の協力を得ながら遂行する業務
・担当職員において生じた課題に対して、自らの経験や知識を駆使して解決することや、新しいやり方を工夫することで完遂することが求められる業務
・自部署を超えて周囲の関係者の協力を仰ぎながら、効率的に進めることが求められる業務
C:計画力・実行力……複数タスクを同時に進め、期日までに完遂する業務
・担当業務における知識・経験が必要な業務
・担当業務内においては、自らの判断で期日までに業務を責任もって正確にかつ確実に遂行することが求められる業務
・優先順位をつけながら複数のタスクを同時に進めていくことが求められる業務
D:確動性・正確性……マニュアルや上司の指示に従って確実かつ正確に遂行する業務
・担当業務を行うための基本的なスキルが必要な業務
・業務遂行のための基本的な知識やスキルを持ち合わせ、遂行する業務
・マニュアルや確立された手法に沿って正確かつ確実に遂行する業務
・不明点があれば、上司の指示を仰ぐことで対応できる業務
そして、「能力・経験調整指数」なるものがあり、上記職務カテゴリA~Dは、以下のように定められています
A=経験2年
B=経験1年
C=経験0.5年
D=経験0年
まず、その案件が、業務内容・難易度からA~Dのどれにあたるか、派遣会社が判断します
そしてそれを同一労働同一賃金の指標と比較するために、「経験○年相当」という「能力・経験調整指数」を持ち出しているわけです
何から何までムチャクチャだと思いません?
・この派遣会社が受けている案件は、職務経験0~2年程度のものしかないことになる。そもそも派遣の仕事は、その職務に対する専門的な能力・経験を持ち合わせているから成り立っているはずなのに、それが0~2年とは如何に?
・その案件が「職務カテゴリ」のどれにあたるかは、派遣会社内で勝手に決められる
・AやBのような仕事が「派遣」であるものか? 派遣先の指揮命令を受けて働くという立場からすれば、D「不明点があれば、上司の指示を仰ぐことで対応できる業務」でないことなどありえない。AやBの仕事内容は部長や課長など役職者だろうが、そうなるとそれが「経験1~2年」であるはずがない
・「職務カテゴリ」と「能力・経験調整指数」の釣り合いが全く取れていない。2つは仕事に関する全く別の指標であるはずなのに、無理矢理1つにまとめられている
・個人の経験・能力ではなく、あくまでもその仕事がどの程度の難易度かなので、経験を積んでも賃金に反映されない
別な記事で、「2つの全く異なる労働市場があるのではないか?」と提起しましたけど
メンバーシップ型雇用であった日本社会に「派遣」という制度を導入するには、全く違う価値観・ルートが必要だった
ということではないかと思うんですよ
その矛盾が見事にこの派遣の同一労働同一賃金問題には出てて
元となる統計調査は、職種別に集計されていても、メンバーシップ型の「勤続年数」によるカウント
(日本には職種別労働組合がなく、職種別の賃金相場は実態としてはないに等しい)
それと同様に派遣を考え機械的に当てはめると、そもそも3年しか同一職場にいられないのだから著しく不利
まるで派遣の同一労働同一賃金は、当初の想定やその言葉の意味として想像されるものとはとは逆に、低賃金固定制度になってしまっていると思うんです
単純な話、
勤続年数が長くないと時給は上がらない
派遣を3年で使い回せばいつまでも安くすむ
ってことですからね……>派遣でいる限り低賃金