抗がん剤の脱毛に対して「のむ・ぬる・うつ」アピアランスケア専門の医師が行う治療①
こんにちは
アピアランスケア専門の医師 アピアランスビューティクリニック®︎ 堀口和美です。
今回から、アピアランスケアとしての再発毛促進治療についてお伝えしてまいります。
がん治療で辛いことっていろいろありますが
がん治療を受けるにあたって辛いことは何か、いうことについて調査がされています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/001249856.pdf
例えば、乳がんの女性の、辛いこと、苦痛に感じていることTOP20ですが
いちばんが髪の脱毛、2番目に乳房切除、となっており、次に吐き気・嘔吐、手足のしびれ、全身の痛み、と続きます。
これは2013年のデータなので、支持療法の発展に伴って多少の変化はあるかもしれませんが、なんといっても、髪の脱毛が苦痛の上位であることは確かと言えると思います。
抗がん剤の治療は、ほとんどの場合、決まった期間、決まった回数、行われます。再発などの場合はその限りではないこともあるのですが、通常は、特に初めての抗がん剤などは、回数が決まっていることが多いです。
「抗がん剤の治療が終われば、また髪の毛は生えてきますからね」
「この治療期間だけ、ちょっと我慢してくださいね」
と言いながら、これまで私は、治療開始時から脱毛にショックを受けている患者さまにお声かけしてきました。
でも・・・
抗がん剤治療が終了して、その後順調に、髪の毛がすくすくと生長する患者さまがいらっしゃる一方で
何ヶ月、何年、経過しても、どうにも満足に再発毛せず、ウィッグをお召しのままの方もいらっしゃいました。
しかも決して珍しいわけではないのです。
私の体感ですと、全体の半分より少し、少ないくらいの方が、何らか、再発毛の状況に対して不満足です。
毛量・毛質・毛長 などなど。
「こうだと知っていたら、抗がん剤なんて受けなければよかった」
「治療が終わったらすぐに元通りになると思っていた」
何度となく、幾度も、患者さまから伺ったお言葉です。
pCIAって?
化学療法誘発性脱毛症 (chemotherapy-induced alopecia ; CIA) の状態が、化学療法終了後6ヶ月経っても、満足に発毛しない状況のことを
持続性化学療法誘発性脱毛症 (persistent chemotherapy-induced alopecia ; pCIA) といいます。
アピアランスビューティクリニック®︎では、pCIAのお悩みの患者さまに
再発毛促進治療を行なっています。
再発毛促進治療のキーワード「のむ・ぬる・うつ」
「のむ」内服薬からお話ししましょう
キーワードは
「のむ・ぬる・うつ」
アピアランスケア専門の医師が行う
pCIAに対する再発毛促進治療のうち
「のむ」
から、お伝えします!
(今回は女性の場合をお話しします)
(男性は治療内容が少々異なります)
「のむ」は、内服治療です。
飲み薬です。
さてさて
みなさまよくご存知のAGA治療ですが
AGA ; 男性型脱毛症 といいます。
女性の場合は fAGA といいます。女性(female)におけるAGA という意味です。
アピアランスビューティクリニック®︎では
抗がん剤の影響ではなく、頭髪の毛量が進行性に減少していく方を
運命的な薄毛の方、運命さんとお呼びしています。
だって
おこないが悪くてAGAあるいはfAGAになってしまう方はいらっしゃいません。遺伝の素因が問題なのですから。
CIAやpCIAは、運命さんたちとは全然違います。
毛量が少ない、という状態は似ていますが
その原因が全然違うのです。
しかし、病態が類似しているので、用いるお薬は一部共通のものを使用しています。
内服薬のうち、キードラッグとなるのは
みなさまご存知の ミノキシジル です。
そして スピロノラクトン です。
ミノキシジルとスピロノラクトン、ここまでは医薬品ですが、あとはサプリメントとして
ビオチン 亜鉛などのミネラル成分 そのほかアミノ酸など。
ではまず、ミノキシジルから、ご説明しましょう。
ミノキシジル
ミノキシジルは、血管拡張薬です。
簡単に申し上げれば、毛根に、十分な栄養を届けるために、血管を広げてくれるお薬です。
イメージは、たくさんの物資を運ぶために道路を拡張する感じでしょうか。
毛根にしっかりと血流が行き渡り、発毛を忘れてしまった毛乳頭に栄養分が届きます。
聞いているだけで、なんだか発毛しそうですね。
もちろん、副次的な作用もあります。
血管を拡張するということは、血圧が下がる可能性もあると思います。
血圧が下がると、酸素と二酸化炭素を効率よく交換するために、それを補うべく、脈拍数を増やして血液の流れる総量を保とうとする動きがあるかもしれません。つまり、循環器的な反応が起きる可能性が考えられます。
では、再発毛促進治療を受けていただく場合、患者さまの既往歴や、治療歴を十分に聴取して、細心の注意を払いつつ、お薬を処方しています。
おかげさまで、これまでに大きな副作用が出現したことはないのですが、だからと言って、今後も起きません、と言えるわけではありません。
これからもずっと、継続して、患者さまに安心して再発毛促進治療を受けていただけるように留意してまいります。
次はスピロノラクトンについてお話しします。
スピロノラクトン
スピロノラクトン は、カリウム保持性利尿剤 です。アルダクトン といった方が馴染みがある方もいらっしゃるでしょう。
血圧が高い方が降圧剤として内服したり、腎臓が悪い方やむくみがある方が内服したり、と内科領域ではたくさんの方に古くから処方されているお薬です。
このお薬が再発毛に効果を示す理由は複数あるのですが
「女性ホルモンのバランスを整える」とあります。
アピアランスビューティクリニック®︎にいらっしゃる患者さまの多くは、乳がん経験者です。
2023年にがんにかかった女性は全国に44万人、そのうち乳がんは10万人ですから、乳がん経験者の方の割合が多いのは当然のことです。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス がん罹患数予測(2023年)
乳がん術後の方の70%くらいは、女性ホルモンを抑制する治療を受けることになりますので、スピロノラクトンの作用の「女性ホルモンバランス」のところで、みなさま、内服にちょっと不安なお気持ちになられますが
色々な理由で、内服には問題ないと判断しております。
例えば・・・
スピロノラクトンを再発毛促進治療として用いる場合は、
1日用量は20mg
です。
スピロノラクトンを(本来の)カリウム保持性利尿薬として用いる場合は
1日用量は50〜100mg
です。
また、乳がんに罹患した場合に、すでに利尿剤といてお使いの方もたくさんいらっしゃるのですが、
女性ホルモンバランス、という理由で、スピロノラクトンを中止したり、減量したり、というようなことをすることはないと思います。
つまり用量的にも、目的としても、スピロノラクトン20mgを内服することには、乳がん経験者の方々にも問題ないと判断しております。
もっと詳しく知ってみたいという方は、クリニックで詳細にカウンセリングさせていただきますので、ご来院をお待ちしております!
その他サプリメントなど
この辺りは、患者さまも結構お詳しいですよね!
ビオチン ビタミンB7のことです。古くはビタミンHとも呼ばれていました。髪の毛が生えるビタミンとして知られています。
皮膚の炎症を抑える作用があります。CIAの本態は頭皮及び毛根の炎症ということもわかっていますので、炎症を抑えるのは大切なことですね。
亜鉛
これも割と言われていることではありますが・・・
実は少し調べてみると、発毛と直結するような作用が認められているわけではないようです。
亜鉛を摂ると発毛につながる
ではなくて
亜鉛を摂らなさすぎると抜け毛が進むかもしれない
といったところでしょうか。
こういったミネラル成分に関しては、全身のバランスを鑑みて摂取する量も重要ですので
(ご飯の時に亜鉛をかじるわけにはいきませんものね)
あくまで、経口摂取するもののうち、ミネラルが占めるバランスを整える、という意味合いにわたくしは理解しております。
「のむ・ぬる・うつ」の「のむ」のまとめ
「のむ」のご説明しましたが、いかがでしょうか?
髪の毛のお悩みは、みなさまとても深刻です。
おひとりおひとりが、毎日鏡を見てはため息、それぞれに深く傷つき、世界の終わりのように気に病んでいらっしゃる、と申しても過言ではないほどです。
髪の毛は1ヶ月に1cmほど生長すると言われていますが
CIAの場合は、抗がん剤による毛乳頭のダメージがベースにあるので
もっと遅い印象があります。
1ヶ月に7-8mm、くらいでしょうか?
再発毛促進治療は、一朝一夕には達成できません。
継続は力なり、と申しますが、この諺も、実はまだまだぬるいのです。
いつもわたくしクリニックでは
継続は力なり、ではなく
継続だけが力なり、ですよ、と申し上げております。
アピアランスビューティクリニック®︎の
「のむ」は
DOTTHAIRタブレット
を用いて行なっております。
1ヶ月あたり、13200円(税込)でお薬お出ししております。
都度 カウンセリング料2200円(税込)別途頂戴いたします。
遠方にお住まいの方には、オンライン診療のシステムもございますので
お問い合わせくださいませ!
すっかり長くなってしまいました・・・
アピアランスケアについて語りだすと、ついついこうなってしまいます、申し訳ございません。
次回は、「のむ・ぬる・うつ」の「ぬる」について、お話しいたします!
がんと共に生きるあなたに、あなたらしい美しさを。