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みんなでお祭りを「オモシロ(OMOSHIRO)」にしてみよう ~第1回 日本のお祭りは面白い~

◆お祭りをオモシロにしてみよう!


などと言うと、おそらく多くの各方面の方からお𠮟りを受けるような気がします。ただ、私はこれまであまり褒められてきた人生ではなかったので、お祭りのチカラを信じている一人として、このお祭りがオモシロくなるためにどうしたらよいか、気にせず考えてみたいと思います。因みに、ここで言う「オモシロ」とは、楽しく価値を高めていくという意味ですのでご理解をお願いします。
 また、私は観光の専門家で、お祭りに代表される無形の文化財の保存と活用を観光のチカラを利用して進めていけないかという研究をしています。
普段は比較的真面目に研究をしているつもりですが、このシリーズではできるだけわかりやすく、無形の文化財の保存と活用について私が考えていることをご紹介したいと思います。
 

◆無形の文化財って何?


ということから始めてみたいと思います。おそらく無形の文化財と聞いて、「?」と思った方は多いと思います。わかりやすく言えば夏祭りなどになりますが、例えば伝統芸能やお寺や神社の年越し行事、また、伝統工芸なども無形の文化財になります。そして、この無形の文化財の大きな特徴は、「人から人に受け継がれるもの」ということです。例えば有形の文化財、建物などは修復することで次の時代に保存継承することができますが、無形の文化財の場合は、受け継ぐ「人」がいなければ保存継承することができません。無形の文化財はこれまで何百年と人から人へ保存継承されてきた、私たち日本人、またその地域の貴重な財産と言えます。

◆無形の文化財の、今、そこにある危機


無形の文化財が危機に瀕している!と、聞いて「そうだ!そうだ!」思う方はどれくらいいるでしょうか。おそらくあまり思う方は少ないのではないでしょうか。例えばテレビやネットのニュースで東京の下町や京都のお祭りが流れ毎年変わりなく盛大に実施されている様子を目にします。まさか危機に瀕しているとは思いません。
しかし、今、無形の文化財、特に民俗文化財と言われる地方のお祭りや伝統芸能はその保存継承が極めて難しい状況に追い込まれています。文化庁や自治体は保存継承のために様々な取組をしていますが、改善しているとはいえない状況なのです。

◆日本人がいなくなる


なぜ危機に瀕しているのか、それは日本の人口減少がその要因の一つといえます。昨今、日本の人口減少がテレビやネットのニュースで大きく取り上げられることが増えました。実際に日本の人口は2008年の約1億2808万人から2023年12月には約1億2429万人と減り始めており、2022年12月~2023年12月の1年で56万人が減少しています。また、2050年には9515万人まで減少するという推計もあります。
特に地方部の人口減少のスピードは都市部と比較して大きなものになっています。無形の文化財は「人から人に受け継がれるもの」なので、人口減少と共に消えてなくなる、そういう運命なのかもしれません。

◆日本は無形文化財の宝庫、外国人からも注目されている?


この無形の文化財ですが、既に世界の多くの国々では戦争や民族移動、また宗教などの影響により多くが失われています。日本のようにこれほどの種類、数で多様な無形の文化財が何百年にもわたり保存継承されてきたことは世界的に見ても珍しいケースと言えます。
また、コロナ後、訪日外国人客は大幅に増えました。外国人の体験してみたい日本の文化体験として祭りや伝統芸能は「訪日旅行で体験したいこと」として注目されていますが、「訪日旅行で体験したこと」の割合は極めて低い状況です。これも良く捉えれば、地方独自のそこに行かなければ体験できない経験として、無形の文化財には今後、大きな可能性があるとも言えます。

◆MOTTAINAI(もったいない)


無形の文化財が消えてなくなっていくことはもったいない、というとまた多くの各方面の方から「文化財に対してもったいないとは何事か!」とお𠮟りを頂くように思います。
ただ、私は極めて尊敬の念をもって、「もったいない」と伝えていきたいと思っています。無形の文化財、特に民俗文化財は日本全国、その地域に住む「庶民」が担い手となり、生活文化として保存継承されてきたもので、私たち現代の日本人の「考え方」や「価値観」を作る原点のようなものです。それが失われていくことは、やはりとても悲しいことだと思うからです。何か新たな価値を創造していくことが重要だと思います。

◆みんなで、わっしょい!


このように無形の文化財は難しい状況に置がれていますが、わたしは、無形の文化財の明るい未来を信じています。今の日本の状況を考えれば、正直に「明るい!」という根拠を示すことはとても難しいと理解しています。ただ、わたしが信じなければ、誰も信じてくれないと思いますので、信じてみようと決めてみました。少々強引ですが、みんなで信じて行動すれば、オモシロい未来になるのではないかと思っています。楽しい未来を作る仲間がたくさん増えれば、もしかしたら無形の文化財の「明るい未来」が見えてくるかもしれません。これから楽しく無形の文化財の話をご紹介したいと思います。応援よろしくお願いします。

 ※次回は、民俗文化財の抱える問題点について考えてみたいと思います。

参考資料等
未来に伝えよう文化財(文化庁)
「人口推計」(総務省統計局)
DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 2023年度版(日本交通公社)



著者プロフィール
後藤伸一

公益財団法人日本交通公社 主任研究員

着地型旅行商品の企画開発・流通販売の専門家。2002年近畿日本ツーリスト入社後、千葉県にて公立高校を中心とした教育旅行の企画営業に取組む。
沖縄においては草創期におけるホームステイ型民泊事業の企画販売に携わる。2008年よりKADOKAWAと合弁により着地型旅行商品の企画やWEB上で流通販売する新会社に出向し、地域と連携したニューツーリズム商品やアニメやゲームコンテンツを活用した商品企画を手掛ける。近畿日本ツーリスト帰任後は、観光庁や文化庁、環境省を中心に調査・実証事業及び、インバウンド関連事業に携わる。特に文化庁の日本遺産事業については制度開始時より各種事業を実施。
2020年クラブツーリズムに出向し、自治体・DMOと連携した旅行商品・イベントの企画実施を推進する。2023年より同職。その他、大学での講義や中央省庁、自治体事業における有識者・アドバイザー等を多数歴任。

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