馬場道々

今まで順調に進んでいた車が、ちょっと脇道に逸れたりパーキングエリアに寄ったり。僕の人生…

馬場道々

今まで順調に進んでいた車が、ちょっと脇道に逸れたりパーキングエリアに寄ったり。僕の人生、そんな感じです。そんな時に、この世界を知ることができました。もの書き素人の日常をお届けしたり、たまに物語なんかも書いてみようかなと。まだまだ未熟な学生にお付き合いいただけたら幸いです。

最近の記事

退院

 明日はついに退院だ。  待ち望んでいたことではあるけども、少し寂しい気もする。なにしろ1ヶ月弱生活していた場所を離れるのだ。情もわくだろう。  全ての人へ、お世話になりました。

    • 日進月歩

       今日も今日とて、中庭にいる。変わらぬ日常である。昨日と違う点は、少し早めの時間にいる、ということだ。昨日のnote(本末転倒)を読んでくださった方々は分かると思うが、昨日はもう少し遅い時間帯にいた。そして、凍死寸前だった。少し遅い時間に外に出ると、凍え死ぬということを学んだ。だから今日は、1時間ほど早く外に出て、これを書いているのである。    人間は学ぶ生き物である。それを体現している。我ながら自分に感心をしつつも、この時期寒いのは当たり前だという意見が辛辣にも心の耳の

      • 本末転倒

         近頃めっきり寒くなった。1週間前まではパーカーを着たら外に出ても暖かいくらいだったのに、あの秋の陽気はどこへいってしまったのやら。今は、いつもの病院内の数少ない外出場所である中庭でこの文章を綴っているわけだが、どうにもタイピングのし間違いが多い。というのも、指先が寒さで震えるのだ。震えて上手く動かせない。今も読点と句読点を打ち間違え、即座にバツボタンを押して訂正した。そんな寒いなら中に入れと言われるかもしれない。分かっている。分かってはいるが、これが僕の日課なのだ。数少ない

        • 快調な朝

           今日は一日色々あって忙しいので簡単に。  天気は晴れ。昨日の夕刻の重たい雲はどこかへ行き、今は雲ひとつない晴れというやつだ。天気予報士がよく言うセリフな気がする。自分の好きな時間である朝が快晴というのは、気持ちの良いものである。心までもが晴れ渡る。そんな気分だ。  今日の予定の一つに面会がある。どうやら友人が訪れてくれるようだ。久々の病院外の人との交流である。前に面会したのは4、5日前だ。みんな忙しいのだろう。僕としては毎日訪ねてきて欲しいのだが、そんな我儘も言ってられな

          振り回される朝

           5時に目が覚めてしまった。どうにも寝付けないから、頭の位置を変えたり、体を180度回転してみたり。半ば意識のない中でそんなことをしていたら、いつのまにか7時になっていた。  時間というのは不思議である。進んで欲しい時に限って遅く進み、意識していないと勝手に早く進むのである。もう少しこちらの都合に合わせてくれても良いのではないだろうか。もし自分が生まれ変わるなら、時間になりたい。時間になって、進んで欲しい時に遅く進み、遅く進んで欲しい時にはあえて早く進んで皆の困り顔を眺めて

          振り回される朝

          いつもと違う昼下がり

           今日は、電気系統の点検で病院内が停電しているそうだ。実際部屋の電気は一部しかつかないし、冷蔵庫の中のペットボトルも表面に数多の水滴を浮かばせている。さらには、金庫が開かない。これは少々困りものである。買い物をしたくても、財布は停電して動かない金庫の中である。緊急で買いたいものが頭に浮かばず、少しホッとしている。トイレは流れる。トイレの電気もつく。蛇口から水は出ない。配電とか配線とかに疎い僕には、なぜ電気が通っている場所と通っていない場所があるのかよく分からない。分からなくて

          いつもと違う昼下がり

          朝を生きる雲のように

           朝日に照らされた雲が、悠然と流れている。鯨が空を泳いでいるようである。ジオラマのような街並みにも日光が差し込み、人々の生活が息を吹き返していくようだ。  こちらは病室。いつもと変わらぬ朝である。昨日の夜は、少し寝つきが悪かった。薬を飲まされたはずなのだが、2時間、いや3時間ほどベッドの中で冴え渡る意識と格闘していた。だが今は眠気は感じないので、1時間くらいのことだったのかもしれない。治りかけていた病がまた山の勾配を登りはじめたのかとちょっと不安になった。  夜に何不自由

          朝を生きる雲のように

          コーヒーで大人になる

           時間は午後4時になろうとしている。中庭の木々が風に揺れている。雲の流れも速いように感じる。少し肌寒いが、パーカーを羽織っていればなんとかなる涼しさだ。    今日はちょっと失敗をしてしまった。  僕はコーヒーが飲めないのだが、現在進行形、コーヒーを飲んでいる。とあるカフェで季節のイベントをやっており、その商品の一つを飲もうと千円札片手に勇んでカフェまで行ったのだが、運悪く僕のお目当てのドリンクには、sold outのシールが貼られてあった。飲みたかったものがないと分かった

          コーヒーで大人になる

          ショートショート|博士の金庫

          発明家であるK氏の家に泥棒が入った。全身黒ずくめに目出し帽を被った男が、銃を片手に言う。 「おい、金目のものを出すんだ。」 「金目のものなんて、ガラクタばかりでここには何もないですよ。」 K氏は驚いた顔で両手を前に出して振った。 「嘘をつけ、最近発明品が完成したとかで、お前が多額の報酬を受け取ったと小耳に挟んだぞ。」 「そうか…バレてしまったんなら仕方がない。」 K氏は諦めの溜息をつき、両の腕を大きく広げた。 「では、この私の家の中から、報酬の入った金庫を探し出してみてくださ

          ショートショート|博士の金庫

          病室の朝のリアル

           目が覚める。鳥のさえずりは聞こえない。廊下を誰かが歩く音。ベッドが軋む音。シーツとパジャマが擦れる音。    僕はスマホの在処を手で探る。平べったい無機質なスマホが手に当たり、画面を触る。眩い光が目の端に写る。顔の前までスマホを持ってきて、目を細めながら画面を覗くと、7:00と表示されていた。その時初めて、朝日の程よい明るさに気づく。ちょうど7:00の明るさだ。勝手に時間の明度を決めつけ、今日も重たい体を持ち上げる。朝は何もやることがない。いや、訂正しよう。朝は特に、何もや

          病室の朝のリアル

          初めての入院

           入院して1週間。ようやく病棟内からの単独外出許可が下りるくらいまでには回復した。と思う。目に見える傷であったり骨折であったりというわけではなく精神的なものであるため、正直自分が回復しているかなんて分からない。外出許可だって、先生からくれた訳ではなく、こちらからお願いして貰えたものだ。ただ、睡眠は1週間前に比べたら随分とれるようになったし、食欲も湧いてきて病院食が美味しいと感じてしまうまでになってしまった。これが正常なのか異常なのか、ますます分からなくなってしまう。少なくとも

          初めての入院