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中国の寝台列車で孙吴(孫呉・ソンゴ)へ

2023年9月3日の5時を過ぎた頃、私はちょうどハルビン駅から寝台列車に乗り込もうとしていた。あたりはまだ明るく、私と同じように大きなスーツケースを車両に持ち込む乗客で賑わっている。9月に大学に入学する子どもを送り届けた親たちが観光を楽しんでから帰路に着くこの時期、寝台列車は毎年混むらしい。自分の客室に入ると左右に2段ベッドがあり、正面には大きな窓があった。窓のガラスに貼られた砂埃だらけのマトリョーシカが、初めて寝台列車に乗る私の不安を和らげてくれた。窓から見える開けた景色は、夕陽が遠く地平線に沈むまでずっと見ていられる。

荷物を持ち込むとすぐに車両を探検した。洋式トイレ、カップ麺を食べる乗客に向けて用意された給湯室、そして小さな洗面台が3つ並んだ洗面所があった。今夜はここで11時間を過ごし、明日の朝4時には孫呉に辿り着けるのだ。客室から狭い廊下に出ると、窓のそばに設置された心地のいい折りたたみ椅子に座って景色を眺める乗客が多数、中には電話をしている人もいる。ドアの開いた隣の客室からは酒の匂いが漂い、ベッドの上でくつろぐ乗客達の談笑が聞こえた。

発車時刻になり列車がガタゴト動き出した頃、私は客室のテーブルでお土産にもらったスイカを頬張っていた(中国ではスイカが激安で超うまいのだ。この旅行中に5年分くらいのスイカを食べていた)。そこに、一人のおじさんが入ってきた。自分の向かいのベッドに腰掛けていた私に、「ああ、いいよいいよ。私は寝る時だけそのベッド使うから、それまでは好きに使ってくれて構わないよ」と言いながらまた隣の部屋に帰っていった。このベッドはあの人のベッドだったのか・・そりゃそうか、こんなに混んでいるのだから同室に他の客がいない方が変だ。後で聞いたら、彼はこの列車の終点、黒河まで行くらしい。私は歯磨きなどして寝る準備を済ませると、2階の自分のべッドにあがり、ずっと景色を眺めていた。列車はまるで自転車のような速さでゆっくり進んでいる。陽がだんだんと落ちて、薄暗くなっていく。もう景色は見えなくて、高く茂る真っ黒な木の影が窓を覆うように流れていくだけだ。気づけば眠りに落ちていた。

<あぽりんメモ>
カップ麺は車内でも買える。販売人が廊下を通るので、声をかけて購入する。2023年10月から、ハルビン⇄孫呉を3時間で行き来できる線が開通すると聞いた。いずれこの寝台列車も消えてしまうのだろうか。過渡期を迎えるこの列車に乗れてよかった。寝台列車の予約は「中国铁路12306」を利用。

孫呉に到着してからの話に進む


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