おばあちゃん
おばあちゃんの絵を描きました。
おばあちゃんは父方の祖母で、ぼくが物心ついたときには右半身不随でした。よく動かない右手を左手で体に引きつけていました。片手でお米を洗ったりしているのを見ると器用なものだなと思っていました。利き手が動かなくなっても左手で上手に箸を使っていました。文字はほとんど見た記憶がないです。中学生の時に亡くなってしまいましたが、ぼくには最も尊敬できる大人の人でした。
見栄を張ったりする考えがないようで、自慢話を聞いたことがなく、バスの運転手さんが歩きの遅い祖母が席に着くのを待ってくれたとか、タクシーの運転手さんがおぶって階段を登ってくれたとか、ささやかなできごとばかり覚えているようでした。
どこに行ってどんな景色を見たという話がなかったなと今思います。
小さな籐籠に手紙をしまって、いつも自分の椅子の下に置いていて。時々その中にある写真を見せてくれました。
小さいもの、ことを大事にしていて、そんなところが他の大人と違っていいなあと思っていました。
最近祖母の若い頃(戦時中に女子高生だった)の写真を見返すことがあり、祖母の字を発見しました。とてもきれいな字で、服装もこの時代にこんなおしゃれをしていたんだなと思いました。
写真を見ていて、ぼくが一緒に過ごしていた間に感じた、祖母の謙虚さというか引け目のような後ろめたさみたいなもの。障害によるものかと思っていたけど、生来備わっていたものである気がしました。
こどもながらに顔をほころばせるでもなく、どこか遠慮気味な表情をしていたからです。昔はシャッタースピード遅かったから退屈だったのかなとも思うのですが。
若い頃どんなことを考えていたのか、おしゃれな服や家のつくりや当時の生活道具について聞いてみたかったなーと思います。