119番通報📱〜市民と消防の認識のギャップ①

2023年8月11日 16:22

１１９通報は、火災や救急、救助等の対応を要請するため、市民が消防機関に通報する際の緊急用電話番号です。

救急車の出動件数は年々増加する一方、「不要」「不急」の通報が絶えない現状に頭を抱えています。

ここで活躍するのは、１１９通報を受信する役割を担う通信指令員です。彼らの技術向上は不可欠です。その上で、市民が状況に応じて適切に１１９通報を行うことができれば、１１９番通報の効率が飛躍的に高まり、救命率の向上が期待できる可能性があります。

119番通報における市民の心理的要因に関する探索的検討　木村昌紀他

X（Twitter）で、１１９通報の問題を投稿しました。666名の方に回答いただきましたので、今回は１問目から３問目まで答え合わせをしていきます👩‍🚒👍

解答は「１１９番通報　する」です。

「しない」と回答された方の多くは、「勘違いだったら申し訳ない」「煙の出る防虫剤かも知れないし・・・」と考えたのではないかと思います。

このような通報は、実際に多くあります。
煙は見えるけど、火事？火事じゃない？？のような。

私の所属する消防では、これを「怪煙（かいえん）」と表現します。

「怪煙」の通報が入った場合は、火災かどうか疑わしいという状況なので、サイレンは鳴らさず、様子を見に行く形で現場へ向かいます。私の所属では赤色灯も使用しません。

もちろん本当に火災の時もあるので、空気呼吸器は装備しますし防火衣も着て現場に向かいます。

現場を確認して、火災じゃなければすぐに帰ります。

建物から煙が出ている場合は、火災である場合が多い印象です。もしくは火災になる一歩手前。

僕の体験した事例は、窓からうっすら白煙が出ているという通報でした。
玄関を叩いて呼びかけてみると、中からお婆さんが出てこられました。煙のことを説明すると「しまった！！」という顔をして、台所に走って向かわれ、コンロの火を消したという事案です。

どうやら料理中に、眠ってしまったとの事でした。

「建物から煙が上がっているように見える。火は見えない。火事かどうか分からない。」場合は１１９通報をしましょう。

解答は「１１９番通報　しない」です。

「する」と解答された方は、道路に動物がいると、自動車が避けようとして交通事故を起こすかも知れない。と考えたからだと思います。※ここでは猫のような小動物を想定しています。

よくニュースで、穴に落ちた猫を消防が救出したりするシーンが放送されますが、この印象も強いのかも知れませんね。

例えばこの通報者が、「道路に猫がいます。飼い主の方が助けに行こうとしているんですけど、交通量が多いので引き止めているんです！。」という内容であれば消防が出動する可能性があります。※各市町村の消防力により対応が異なります。

ここでの出動は、「ペットを助けるために、人命が危険な状態に陥る可能性が高い。」というのが理由です。

ペットの命ではなくて、人命をターゲットにしているところに注意が必要です。

今回のケースでは、単に「消防で動物を助けてくれないか」という通報ですので、回答としては「１１９番通報　しない」になります。

解答は「１１９番通報　しない」です。

道路の維持管理は、消防の業務ではありません。国道であれば国土交通省、県道は県土整備事務所、市道であれば市町村です。

「する」と解答された方は、第２問と同様に、それによって被害が発生するかもしれない。と考えたからだと思います。また、どこに電話して良いか分からないから１１９番通報する。という方もいらっしゃるかも知れませんね。

消防にこのような通報が入った場合は、「けが人がいるか」確認を行います。人的被害が発生していないようであれば、道路通行規制が必要な可能性があるので警察に通報します。そして道路管理者に連絡する。ところまで行います。

道路を直すような機材も消防署は保有していませんので、解答は、「１１９通報　しない」です。

実際には適切な通報理由を市民が不適切と認識してしまうと、通報を控えてしまい、本来助けられる命を助けられず、最小限に止められたはずの被害が大きくなる可能性があります。

反対に、実際は不適切な通報理由を市民が適切だと認識してしまうと、適用外の通報をすることにつながり、通信指令員が余計な対応に追われ、現場の負担が増えることになります。

このバランスは非常に難しいところです。
僕たち消防士がメディアやSNS等を通じて積極的に広報活動を行うことが必要だと改めて感じました。

それでは次回、第４問目から解説していきますね👩‍🚒📱！

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