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そこに歴史があるから、好きになる。

ある日車に乗ると、おやじさんが曲をかけた。

「その曲、好きなん?」
「まあな」

僕は知っている。
おやじさんは、その人が好きなのだ。その曲じゃあない。
でも、それは僕も同じだ。

僕にも好きな人がいる。
その人が書いたから読もうと思うし、その人が歌うからいいんだ。
別にどんな歌でもいい。

そういうことなのだ。
そしてたいていの場合、その人と自分の間には何か歴史があるものだ。

おやじさんもたぶんある。

思い出を聞いているのだ。
おやじさんは。


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