【3分で解説】「サンショウウオの四十九日」のあらすじ&感想まとめ【芥川賞受賞作品】
今回は芥川賞受賞作品「サンショウウオの四十九日」をご紹介します。
作品概要
ネタばれありの解説をご紹介しますので、これから見るよって方や気になった方は一度そこで読むのをやめてぜひ作品をご覧ください!
タイトル:サンショウウオの四十九日 作者 :朝比奈秋
出版社: 新潮社
価格 :1,870円
ページ数 :144ページ
発売日: 2024/07/12
「サンショウウオの四十九日」は第171回芥川賞受賞作品です。作者は朝比奈秋、医師として勤務しながら小説を執筆し、2021年「塩の道」でデビューしています。2023年、第36回三島由紀夫賞を「植物少女」で受賞。主な作品には「あなたの燃える左手で」、「受け手のいない祈り」などがあります。
主な登場人物
濱岸杏:結合双生児。戸籍上の姉(左半身)。
濱岸瞬:結合双生児。戸籍上の妹(右半身)。
濱岸若彦:杏と瞬の父。若彦の胎児内胎児として生まれる
勝彦:若彦の兄。愛称は「かっちゃん」。
「サンショウウオの四十九日」あらすじ
双子の姉妹の杏と瞬は、数カ月ぶりに実家に帰省します。何気ない会話の中で、10年前に話をした「父の境遇」についての話を思いだします。というのも、父は兄である勝彦の体内で成育する「胎児内胎児」として生まれ、手術で取り出されたという。自身も一つの体を2人で共有して生きている「結合双生児」という形で生まれてきたため、父と伯父の関係性は唯一自分たちと同じ境遇だと考えていました。しかし、ある日勝彦の訃報が届き、自身の存在について改めて考える―。
「サンショウウオの四十九日」の解説&感想(※ネタばれあり)
「存在しないのではないか」ー杏と瞬の苦悩ー
「なぜ私は生まれてきたんだ?」
そう自分の存在意義を考えたことがある人は少なくないはずです。
そんな私たちと同じような悩みを杏と瞬の姉妹も抱えていました。しかし、彼女たちが特別なのは一つの体を二人で共有して生きている「結合双生児」ということでした。
ある日叔父である勝彦が亡くなってことで、より一層深いものに変わります。「自分は本当に存在しているのか。」や自身の「死」について考え始めます。
という恐怖を抱きます。
その恐怖を打ち消そうと同じ結合双生児のアビー&ブリタニー姉妹や宗教、哲学書に救いを求めました。しかし、結局のところアビー&ブリタニー姉妹も同じ結合双生児といっても一部は「別れた部分」つまり自身の体を持っています。宗教や哲学書は自我を消滅させるような話ばかりで、読めば読むほどより恐怖が増すばかり―。誰かに理解してもらえない孤独な悩みと苦しみが増えていくばかりの日々でした。
「サンショウウオの四十九日」最大の見どころ
しかし、そんな悩みもある日くしゃみ一つで簡単に吹き飛んでしまいます。
杏と瞬がこの苦難を超えるシーンがこの作品の最大の見どころです。
当の本人たちでさえ「このくしゃみをしたのが姉がしたものか妹がしたものなのか」と理解できないのに、父である若彦はどっちがくしゃみをしたのか分かっていました。自身の「存在」の悩みを持っている二人にとっては自分の存在が自分以外の人に認めてられている。そして二人が存在していることの証明になる。
そして彼女たちは今まで持っていた悩みも恐怖も、結局のところ自分たち姉妹以外、理解することのできない特有の悩みだと考えていたものは、誰しもが持つ普遍的な悩みでしかない。誰しも自分の感情や記憶は誰かと共有しているので、自分だけで独占しているものはないとの理解した所は私が一番好きな場面です。姉妹たちが悩んでいたものはくしゃみ一つで乗り越えることのできるそんな簡単な悩みだったと理解した場面はとても心に残りました。
能ある鷹たちへ
いかがだったでしょうか?この作品は朝比奈秋先生の医師として経験や考えが色濃く出ている作品×誰しもが通る 「自分の存在意義」についてというテーマで、もうすぐ大人になる19歳というタイミングの結合双生児姉妹を主人公にすることでとても共感しやく、たくさんの学びがある作品でした。
この記事を読んで、「サンショウウオの四十九日」を読んでみたいと思った方は是非ご購入ください!
ご精読ありがとうございました!