見出し画像

5代目Foojin'Zの仕様

宇津木です。ようやく開発の着地を迎えた5代目Foojin’Z。やはり最大のトピックはダイレクトに性能に関わるカーボン素材「M40X」と「T1100G」ということになる。ブランクは車に例えるならまさに”エンジン”だ。

脱・4軸カーボン

アピアでは2010年発売の、3代目Foojin’Zから採用していた「4軸カーボン」。10年にわたりアピアのフラッグシップの象徴であったが、今回の5代目Foojin’Zから4軸カーボンは採用していない。
カーボンブランクは高弾性の素材に寄せるとハリが出て軽くすることができるが、曲がった際の追従性に欠け折れやすくなる。中弾性に寄せると追従性が良くなり折れにくくはなるが、それに反してロッド自身が起き上がる反発力も低下する。なにより重くシャープ感も出ない。それぞれ一長一短の特性があるが、俺たちの求めるフラッグシップFoojin’Zには、初代から揺るぎないコンセプトがある。

「圧倒的な飛距離」と「ランカーシーバスにも主導権を与えないパワー」だ。

この2つを実現させるために、高弾性素材のハリを与えながら、中弾性のパワーとしなやかさを核に置いてきた。だがブランクは曲がれば捻れるもの。この捻れはブランク本来のパワーを逃すことになり、何よりもキャスト時のブランクの収束の遅さが、螺旋を描きながら放出されていくラインの抵抗となり、飛距離のロスが生まれた。このブランクの捻れを抑えるためFoojin’ADではバット部を4軸カーボン、ティップからベリー部はクロステープで補強。4代目Foojin’Zは全長を4軸カーボンで捻れを抑えてきた。

TORAYCA 「M40X」 「T1100G」

そして今回、東レから第3世代カーボンの登場により、中弾性(T1100G)、高弾性(M40X)の性能が飛躍的に向上した。MとかMLとかのパワー表記を各社採用しているが、実はこのパワー表記に統一基準はない。アピアのパワー表記は、同クラスではかなり強い方である。場合によっては他社よりも1クラスくらい強く感じる。これは前述の「ランカーシーバスにも主導権を与えないパワー」ということが基準となっているからだ。
オレは東レの勉強会で、改めて第3世代カーボンを紹介された時の衝撃は忘れない。40tの高弾性を維持しつつ、強度を30%引き揚げた「M40X」と、世界最高強度の「T1100G」(33t)は、「シャープで弾き感があり、尚且つタフで軽量」という理想のFoojin’Zを作るためのソリューションになると確信したからだ。
この時から5代目Foojin’Zの設計図から、4軸カーボンという選択肢は消えていた。
アピアでは来年の早い段階から、実際にキャストできる「試投会」を全国各地で開催予定なので、ぜひとも体感していただきたい。
この進化はここ20年ではなかった飛躍的な進化であり、”なんとなくハリがある”とか”軽くなった”とかいうレベルではない。それこそ中級者以上なら”誰でも”性能の違いを体感できるレベルである。

さらにブランク以外にも5代目Foojin’Zでは新しい仕様が詰め込まれている。

ガイドはチタンTORZAITE & SiC-S

Foojin’ADには富士工業製のチタンフレームSiCガイドが搭載されている。 富士工業製のチタンフレームガイドにはSiCよりも軽量なトルザイトというガイドもあるが、トルザイトがメーカー向けにリリースされた当時、テスター陣でテストしたところ”糸鳴り”という問題が浮上したため採用を見送った経緯がある。その後もあるテスターから具体的な症状も報告されたため、当初5代目Foojin’ZでもチタンフレームSiC-S(最後のSは従来のSiCよりも薄く軽量にできている)でテストを進めていた。だがトルザイトリングはSiCよりも軽量で、滑らかな表面は捨てがたいと思っていたので、ラインに角度がつくトップガイドとバットガイドをSiC-Sにし、中間ガイドを全てトルザイトにすることで問題は解決。まさに適材適所という言葉通り、5代目Foojin’Zは全てのモデルがトップとバットガイドがSiC-S、それ以外は全てトルザイトガイドが採用されている。

APIAパームグリップシステム

画像3

Foojin’ADではコルクグリップを採用していたが、今回の5代目Foojin’Zでは再びEVAグリップを採用している。俺個人としては、コルクグリップの使い込んだ経年変化による自分だけの”味わい”が好きなのだが、近年良質のコルクが本当に手に入らなくなっている。天然素材であるコルク樫は地中海西側沿岸にしか群生しておらず、良質のコルク素材となると、加工技術の高いポルトガル産にほぼ限られる。だがAAAクラスとなると安定的な入手はほぼ不可能となっているのが現状。そういう事情もあり、品質の安定性、海水でも劣化のないEVAを採用した。また素材以外にも形状の変化に注目して欲しい。ストレートグリップの場合、握り込むと掌に隙間ができる。掌の大きな人ほどこの隙間が大きくなるのだが、5代目Foojin’Zはグリップの背部を少し盛り上がらせることで、程よいフィット感が得られるような形状となっている。
またリールシートフードにはシュリンクラバーを巻いているので、ソリッドな感度を指先で感じることができる。

新設計「NANO JOINT」

画像4

アピアでは2ピースのフラッグシップモデルは、基本的に印籠継(Spigot Joint)になっている。理由は#1(ティップ側)と#2(グリップ側)のテーパー(太さの角度)を延長線上に設計することで、強度が向上し、よりナチュラルなベンディングカーブを描くことができるからである。だが印籠芯で継いでいる以上、どうしても1ピースと同様というわけにはいかない。そこで継部の突っ張りを解消するために、「NANO JOINT」という新設計の印籠継を導入した。印籠芯にナノアロイ技術を採用することにより、より1ピースに近いベンディングカーブの実現が可能となった。
更に特筆すべきは継部の精度である。この部分はセンターレスという特殊な機械で研磨するのだが、5代目Foojin’Zの合わせの精度は群を抜いている。ジョイント部の緩みは多節ロッドの宿命ではあるが、新しいNANO JOINTの精度は大幅な進化を体感できるだろう。

5代目Foojin’Zのラインナップ

画像4

前回予告した通り、5代目Foojin’Zの全ラインナップを紹介したい。

・Foojin’Z NATURAL SEVEN 77MH
Length:7’7” Lure:10-45g Line:MAX PE#2 

・Foojin’Z TESTAMATTA 88MH
Length:8’8” Lure:8-56g Line:MAX PE#2.5 

・Foojin’Z URBAN DINO 90ML
Length:9’0” Lure:5-32g Line:MAX PE#1.5

・Foojin’Z LAST RESORT 90H
Length:9’0” Lure:10-63g Line:MAX PE#3

・Foojin’Z BEAST BRAWL 93MH [BORON]
Length:9’3” Lure:10-56g Line:MAX PE#2.5

・Foojin’Z GENEROUS 94M
Length:9’4” Lure:8-42g Line:MAX PE#2

・Foojin’Z MONSTER BREAK 98H
Length:9’8” Lure:12-63g Line:MAX PE#3

・Foojin’Z HIGH ROLLER 103ML
Length:10’3” Lure:7-45g Line:MAX PE#2

・Foojin’Z CRAZY CARRY 108MH
Length:10’8” Lure:12-56g Line:MAX PE#2.5

5代目Foojin’Zは以上の全9機種をラインナップする。
ちなみに価格、発売時期の発表はもう少し先になるのでご了承いただきたい。

このブログを書いている今、ここに紹介する全ラインナップの開発はほぼ着地している。次のフェーズは量産体制を整えることになるのだが、現在世界的に釣具の生産はパンク状態にあり、多くの分野で大幅な遅れが生じている。ガイドやパーツ類の納期遅れ以外にも、5th Foojin'Zはブランク、ジョイントなど高い生産技術が要される箇所が多く、生産体制も今までよりはスローになると予想されるだけに、まだまだ課題は多い。

次回は各アイテムの詳細を紹介したいと思う。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?