幸せになるのに負い目はいらないよ
毎回お世話になっているネイリストさんが
結婚することになりました。
私がいつもしている指輪が
とても気に入ったようで、
「同じのを結婚指輪として買いたいんです。
おそろいになってしまうんですけど
いいですか…?」と尋ねられ、
「もちろん!」と答えたあと、
いよいよ来月に迫った入籍について
話していました。
実は結婚が決まる前から
彼女には結婚に対して不安があったようで、
毎回お話を聴いていました。
一応、わたしのほうがお客さんなのですが、
以前、結婚していたこともあったので、
経験者として話を聴いてほしかったようです。
そんな彼女が急に小さな声で言いました。
「私、実はトランスジェンダーなんです…。」
『おお、そうなんですね。』
わたしの『そうなんですね。』が
あまりにも普通で拍子抜けしたようです。
次の瞬間、目に涙を浮かべながら言いました。
「私、幸せになっていいんですかね…。
トランスジェンダーだし、
戸籍は女性にしたけど子どもも産めないし、
彼はそのことも全部理解しているけど、
このまま結婚していいのか、
彼も本当にそれでいいのか、
幸せになっていいのかわからないんです。」
わたしにはトランスジェンダーの友達も、
顔面と手のひらと足の裏以外全部に
刺青が入っている友達も、
還暦を過ぎた女装家の友達もいて、
いわゆる社会的に
マイノリティーといわれる方々とのつながりが
わりと身近です。
彼らとは全員、セミナーや講座などの
真面目な学びの場で出会っています。
それぞれの姿で自分らしさや、幸せ、
愛、成長について真剣に向き合っていました。
その姿がとてもまっすぐで純粋で、
感動したのを今も覚えています。
マイノリティーであることで
人から向けられる目、
今までに言われた数々のことば
なんとなく感じる居心地の悪さ。
わたしの友人たちは
そういうのは完全に超越して、
清々しいほどありのままに生きていますが、
幸せになっちゃいけないのではないかと
錯覚してしまうくらい、
ネイリストさんには
心に引っかかるものが
たくさんあるのだと思います。
『幸せになることに負い目がある。』
これはとても悲しいことです。
わたしは彼女の問いに、こう伝えました。
「幸せって、一人一人が感じるものです。
権利じゃありません。
男だから、女だから、トランスジェンダーだから、
幸せになってはいけない、
幸せをつかんではいけないなんてないと思います。
さっきの幸せになっていいんですかね…っていう
質問に答えるなら、
それはもちろん『いいんです』です。
いいんですよ、堂々と幸せになって。」
幸せになるのに、負い目はいらないです。
誰もが、堂々と幸せになっていいと思える
社会になったらいいなと願いながら
わたしができる小さな一歩は
まるっと相手を受け入れて
背中をそっと押してあげることです。
悩みを抱えている人やもっと自分らしく生きたい人が、毎日1センチでもいいから理想に向かって進めるよう、何かお役に立てたら嬉しいです。