「私と歴史 〜全ては遺伝子から〜」
私の大好きなコミックエッセイ『腐女子のつづ井さん』に出てくる言葉だ。
私のようなオタクは忙しくも充実した日々を過ごしている。
通学中に旧Twitterをチェックし、作品鑑賞。それが終わると鞄から小説(稀に文庫コミック)を取り出し読みふける。
乗り換えの合間や急な石段を登る時は妄想を捏ね、お昼休みはU-NEXTを立ち上げ動画鑑賞をする。
突然ネタが降ってきたり、授業で「使える!」と思ったりしたことはすぐにメモし、文章にまとまれば旧Twitterに投稿。画面の向こうの同志と共有する。
しかしそんな日々が当たり前になると、オタク以前の記憶がスポンと抜けてしまうのだ。「オタクとしての目覚め≒自我の芽生え!?」とつづ井さんは書いているが、私もその通りだと思う。
というのも先日、このような質問をされて私は答えに困ったのだ。
「歴史好きになったキッカケは?」
読んでいるあなたはどう答えるだろうか。
私は何とかこう答えた。
「遺伝子……ですかね」
1.遺伝子レベルで何となく
歴史好きでない時などなかった。そう私は記憶している。だからキッカケはと聞かれれば、「遺伝子」と答えることしかできない。母親譲りの、歴史好きの遺伝子。私がこの21年間でやってきたことは、遺伝子の「開花」である。
恐らく初めて開花を迎えたのは、幼稚園入園前だ。その頃私は、分厚くて大きな図鑑を毎日眺めていた。ジャンルは昆虫と恐竜だ。
特に恐竜は私の心を大変くすぐるものであった。彼らは約6500万年前に絶滅し、ジュラシックパークのような革命が起きなければ出会えないからだ。
だから図鑑に載っている再現像でさえ正解だと断言できない。羽毛の有無や色、走る速さなど、発見があるたびに彼らは姿をコロコロと変える。研究者だって、私自身だって、化石から彼らの世界を想像するしかない。そこに私はロマンを感じていた。
当時のお気に入りは「トロオドン」だった。トロオドンはギリシャ語で「傷つける歯」を意味する。拗らせた少年心をくすぐるネーミングもポイントが高いが、恐竜の中でも最も賢い種の一つとされる点に私は惹かれていた。
絶滅しなければ人間に似た形態へと進化し、「恐竜人間」になっていたかもしれないという説が出てくるくらいだから、彼らの知能の高さは相当だろう(私の持っていた図鑑には濃い緑色の宇宙人みたいなイメージ図が載っていた。最初こそ気持ち悪く感じるが、段々癖になってくる見た目をしている。「ディノサウロイド」とも呼ばれているらしい)。
私にとってトロオドンは、その賢さから憧れの対象であり、歴史のifへの想像をかき立ててくれる存在でもある。それは今も変わらない。
2.覚醒 in TAKARAZUKA
さて、これ以上はあまりにも長くなるため、本稿では幼稚園・小学校時代を割愛させてもらおう。ポケモンや妖怪ウォッチに熱中していた私は、中学に上がって間もなく二度目の開花を迎えた。「宝塚歌劇」である。
チケットが当選し、ヅカヲタであった母親に誘われた。2015年5月のことである。初観劇は月組公演「1789―バスティーユの恋人たち―」だった。
宝塚歌劇といえば「ベルサイユのばら」を思い浮かべる人が多いだろう。輪っかのドレスに、これでもか!というくらい飾り付けられた化粧鬘。華やかな宮廷文化と、埋められぬ心の寂しさ。それ故の許されぬ愛……革命に翻弄されるフランス王妃マリー・アントワネットに代表されるように、宝塚で扱うフランス革命は貴族の印象が強い。
しかし「1789」は違った。主人公は農村出身の青年だ。パリで出会う仲間は第三身分のプチブルジョア達で、王家は敵。「人民に自由を!」と叫ぶ。宝塚では珍しく、民衆の立場からフランス革命を描いた作品である。
幕が上がるとそこに現れるのはバスティーユ牢獄だ。緊迫した演奏をバックに、一人の青年が壁をよじ登って門の鎖を斧で断ち切る。赤い照明と牢獄の存在感や、タカラジェンヌの演技、生オーケストラに圧倒される。
私は開幕してすぐ、宝塚に心を奪われてしまった。歴史を学べるし、衣装も楽しめる。でも何よりもタカラジェンヌが美しい!何石何鳥だろう!
そうして始まったヅカヲタ歴は来年で10年目を迎える。
3.刀と付喪神
ここからは高校生編だ。フランスやオーストリアなど西欧に行っていた私の意識は、とあるアニメをきっかけに帰国することになる。題でピンときた人もいるだろう。そのアニメとは「刀剣乱舞」だ。
時は2205年、歴史を目論む「歴史修正主義者」が過去へと攻撃を始める。それと対峙するのが、刀剣より顕現せし付喪神「刀剣男士」である。
刀剣乱舞は、そんな刀剣男士を育成し歴史を守るゲームから始まったコンテンツの総称だ。
私が高校生時代を捧げる程熱中した理由としては、刀剣男士がヒトの身を得ることで苦悩することが挙げられる。
ここでは「鬼の副長」と呼ばれた新撰組副長、土方歳三の刀を例にしよう。刀剣乱舞に実装されている彼の刀は二振りある。和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)と堀川国広だ。
彼らをゲーム内で「維新の記憶 函館」へと出陣させると、特別な会話を見ることができる。抜粋すると以下のようなものだ。
函館は戊辰戦争において旧幕府軍と新政府軍が最後に戦った地であり、土方歳三が戦死した地でもある。
しかし歴史修正主義者は、旧幕府軍、つまり土方歳三らが勝利するよう歴史を改変しようとする。そこで正史を守るべく刀剣男士が出陣するのだが、和泉守兼定と堀川国広は前の持ち主の死と再び向き合うことになる。
ヒトの身を得た今、前の主を助けようと思えば助けられる。だが、今の主は審神者だ。正史を守らなければいけない。これは見殺しではなく、前の主の尊厳を守るための戦いだ!彼ら刀剣男士は、このように心の中に葛藤を生じさせながら戦う。そこに私は深く感銘を受けたのだ。
このように、刀剣乱舞は本当に恐ろしい(褒め言葉)コンテンツだ。キャラクターが好きになるとモデルとなった日本刀や関係する歴史について調べずにはいられなくなるし、「果たして彼らは(ヒトの身を得て)幸せなのだろうか……」と哲学っぽいことを考えてしまう。
擬人化コンテンツは本当に奥が深い。これは大学生になってからハマったものにも関係してくる。
4.イギリス旅行計画中
最後に、現在の私について。
大学1年生の春休みのことだ。NetflixからU-NEXTへ乗り換えたことで私の人生は変わった。マイリストに入れていた刀剣乱舞と同じ「擬人化コンテンツ」として、U-NEXTにとあるアニメを勧められた。名前と設定を知っていて元々興味があった私は、勧められるがまま見始めてすぐ、本当にすぐに沼に落ちた。一週間もしないうちに100話以上もあるそれを見終えてしまうくらいに(1話約5分ではあるが)。
そして新たな夢ができた。それが題にあるように「イギリス旅行」である。
そう、私の現在のジャンルは「ヘタリア」、国の擬人化コンテンツだ。
「国」というかなりセンシティブなものを扱っているため詳細は省かせて頂くが、国の化身として様々なキャラクターが登場する。例えば、私の好きなキャラクターである日本さんやイギリスさんだ。
特にイギリスさんは、高校生の時に日本史選択であった私にイギリス史への扉を開けてくれた。そして、宝塚で履修したフランス史やオーストリア史と繋げることで、横の歴史を知ることの面白さを教えてくれた。
また、元々コーヒーより紅茶好きであったのがさらに高じることになったり、自分のファッションの方向がクラシックへと定まったり、小説を読むようになったりした。
ヘタリアに出会ったことで、現在進行形で私の人生は変わっている。
このように、私の歴史は「歴史」と切り離せないものになっている。だから本当に遺伝子レベルで歴史が好きなのかもしれない。3200字書いて自分でも驚いてしまった。
本当はもっと語りたいこともあるが、ダラダラと続きそうなため、ここで一旦終わりということにする。時間があれば(微妙なところではあるが)また記事を上げたい。
次はそうだな……好きなファッションで、王妃のドレスや軍服、モガとか?とても面白そう。
歴史チームの仲間たちによる他の「私と歴史」投稿もお楽しみに。それではまた。
先日投稿されたチーニさんの記事はこちらから↓
byカヌレ
参考文献等
つづ井,2016,『腐女子のつづ井さん』株式会社KADOKAWA.
DMM GAMES,「【公式】刀剣乱舞 ONLINE(とうらぶ)」
(https://games.dmm.com/detail/tohken,2023年11月16日アクセス).
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