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質疑応答で手があがらないときの緊迫感は対面のイベントと変わらない|7/26〜7/31

コロナ禍の日々の記録。平日の仕事を中心に。土日祝は休みます(例外あり)。2020年の1回目の緊急事態宣言の最中にはじめた日記はこちらから。3回目の緊急事態宣言解除の日から再開。しばらく続けたい。

2021年7月26日(月) 市ヶ谷

4連休中はテレビでオリンピックを観戦する。こんなにテレビを見続けるのは、いつぶりだろうか。開会式は翌日アーカイブ映像で見る。難民選手団がギリシアに続いて入場していた(リオではじめて結成されたらしい)。Solidality(結束、団結)という言葉が何度も使われていた。橋本聖子組織委員会会長の挨拶は自身もオリンピアンであることを想起させるアスリートへの呼びかけの言葉だった。IOCのバッハ会長もオリンピアンなのだとはじめて知った。大会運営のあらゆる場面にオリンピアン/アスリートの姿がある。そして、メダルを獲った選手のインタビューは「こんな状況で」の開催を支える人たちへの感謝の言葉からはじまる。その肉声や肉体を映像越しで見続けてしまうのは「ライブ感」への飢えがあるからなんだろうかと思う。同時に、さまざまな分野でその舞台を失った人たちがいることも考えてしまう。
朝のニュースもメダルの話題。市ヶ谷のオフィスに出社する。Tokyo Art Research Lab(TARL)ディスカッションの締切が明後日に迫る。もう一押しするため、noteの記事を書く。あとは細々とメッセージのやりとりと書類の作成や確認を繰り返す。
明日は台風が関東か東北に上陸しそう。東北では計画運休があり、熱海では自主的に避難勧告を出すのだという。財団の事務局発信で明日の出社や各施設の対応など台風対策の確認がはいる。こうした連絡もお馴染みになった。終業時間近くの不穏なメールにやや気が重くなる。状況は明日確認しよう。
「黒い雨」訴訟で政府は上告しないことを決めた。これで広島に原爆投下後の「黒い雨」で健康被害を受けたと訴える人たちに被爆者健康手帳が交付される。相模原障害者殺傷事件から5年。例年ほど報道が多くないように感じるのは気のせいだろうか。東京都の新規感染者数は1429人。月曜最多を記録する。「医療ひっ迫の危機」というニュースを見かける。

2021年7月27日(火)  市ヶ谷→自宅

朝起きると地面が濡れている。晴間に突然ざぁっと雨が降る。風は強い。朝のニュースはオリンピックに出場しているテニス選手の暑さへの苦言について。海外選手が高温に加えて、湿度の高さを嘆いている。
出社早々に係会(注:東京アートポイント計画スタッフの定例会)。感染者数増加に伴う現場への影響を議論する。とはいえ、すでに緊急事態宣言下。この1年の経験で感染対策も基本的なことは行なっている状態。検温、消毒、マスク、ディスタンス。あとは少人数の固定メンバーが、対面で活動を行うときに、定期的な検温とPCR検査を導入するかが話題にあがる。
夕方になって「東京3000人超え」がニュース速報で飛び込んでくる。結果は2848人だった。一気に伸びた数字でトップニュースはオリンピックからコロナに切り替わる。

2021年7月28日(水) 自宅

台風は通り過ぎたようで、朝は快晴。夜中にばたばたと音はしていた。
終日在宅勤務。朝から細々とした連絡を重ねる。そういえば仕事のことを書くと「細々と」という形容詞をよく使う。メールよりメッセンジャーやSlackでのコミュニケーションが増えたことで「細々」度合いは高まった。その分、スピード感は上がった……とは、それほど思えないのは、なぜだろう。
17時でTARLディスカッションの申込受付を終了。週末の初回に向けて、進め方と自分が話すパートの構成を考える。何気に時間がない。
直前に案内をいただいたZoomでの研究会に画面オフ/音声ミュートで参加する。オンラインだと急でも参加できるメリットはある。質疑応答で手があがらないときの緊迫感は対面のイベントと変わらない。むしろ、画面に名前が表示されているだけに、いつもより高まっている気がする。週末のディスカッションの進行のことが頭のなかで重なってくる。
東京の新規感染者数は3177人で、初の3000人超え。全国は9583人で初の9000人超え(第3波の1月8日の7958人から最多更新)。政府は埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府を「まん延防止等重点措置」から緊急事態宣言に切り替え検討。30日にも正式決定の方向。繰り返し、医療ひっ迫のニュースが流れる。

2021年7月29日(木) 府中→秋葉原→市ヶ谷

ACF(Artist Collective Fuchu)のミーティング。具体的にやるべきこと、決めるべきことが見えてきて、アイディアを交わしながら詰めていく。終わりがけは、ひとつのテーブルを囲みながら、複数の話題が、あっちこっちで立ち上がっている。話題に参加するために声をかける、目線を向ける、会話をしている人たちの近くに移動する。隣の話題に参加している人たちの声が聞こえてくる。ざわざわ。Zoomのブレイクアウトルームにはない共在感覚。
秋葉原に移動し、STUDIO302で講習会。講師の岩沢兄弟の卓さんにオンラインイベントで「相談できる人」がいる事例をきく。何か困ったら、こちらへどうぞ! という相手か、場所をつくっておくということ。たしかにオンラインイベントでは全体に対してコメントを出すには忍びない困りごとも多い。今年度のTARLの手話レクチャーは収録配信型。担当の嘉原妙さんが収録で起こった話を共有する。ライブ配信のアーカイブと違い、事前のつくりこみがある。でも、繰り返して慣れるとライブ感が減って、台本を読んでいる感が増してしまう。いい塩梅を探るなかで、現場では「半生」という言葉も出ていたのだという。

講習会の後は市ヶ谷のオフィスに移動。「多摩の未来の地勢図を描く」のチラシ再校を確認する。いよいよ、参加者の募集がはじまる。
東京都の新規感染者数は3865人。全国は10110人で初の10000人超え。政府は神奈川、千葉、埼玉に緊急事態宣言を出す方針を固める。東京と沖縄の緊急事態宣言も期間を引き延ばし8月31日まで。「感染爆発」「爆発的な感染拡大」という言葉に煽られる。都知事「ワクチンが行き渡るまでが勝負であり、この夏を最後のステイホームにしていきたい」とのこと。

2021年7月30日(金) 国立→秋葉原

大雨が降っている。傘をさして家を出る。目的の谷保駅に着く頃には、すっかり雨も上がっていた。国立市役所で書類にまつわる打合せをしてから外に出ると、また大雨が降りはじめる。傘をさして歩き出してはみたものの雨足は強まるばかり。雨宿りもかねて目についたハンバーガー店に飛びこむ。少し早めの昼で店内にお客さんは、ほぼいない。しばらくすると雨はさらに強くなり、遠くで雷の音が聞こえる。突然店内の電気が落ちる。停電は久しぶりだ。一緒にいた櫻井駿介さんはSTUDIO302の担当でもあったため、オンラインイベントでの停電をシミュレーションをする。パソコンはバッテリーがあるから大丈夫。問題は、ルーターの電源が落ちて、ネット回線が不通になることか。その場合はデザリングなどで回線を切り替え、参加者と状況共有か、中止のアナウンスをするのはどうか……原因究明に走るより、決めておいた対応フローを粛々と進めるのがよさそう。でも、電気が落ちたらエアコンも動かなくなる。そっちのほうが死活問題かもしれない。
午後はACKT(アクト/アートセンタークニタチ)の事業の動かし方を打合せする。具体的な事業の内容、スケジュール、メディア企画のタイトルなど……細々と議論を重ねる。
打合せ後には秋葉原の3331 Arts Chiyodaに移動し、次の打合せへ。これまでTARLで取り組んできたアーカイブに関する活動のふりかえりと、いまこの状況で議論すべきことの洗い出しのような内容になる。DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を、よく耳にするようになった。アーカイブの文脈では、何が議論されるべきなのか? まず問いの立て方からわからない……だからこそ、いまここを掘り下げよう。話は半歩先に進む。
阪神梅田本店では従業員53人が感染のクラスターが発生し、土日に全館休業。東京都の新規感染者数は3300人。国内感染者数は10743人で3日連続最多更新。首都圏3県と大阪府の緊急事態宣言が正式に決定した。

2021年7月31日(土) 秋葉原

3331 Arts ChiyodaのSTUDIO302で、TARLディスカッションの初回を行う。昼過ぎから運営メンバーが集まり、13時からナビゲーターの高森順子さん宮本匠さんにつなぐ。プレゼンの発表順や進行方法、参加者とのかかわりなど打合せする。Zoomを使うだけとはいえ、参加者全員がオンラインのイベントに緊張感が高まる。経験値の足りなさからの不安なのだろうか。
はじまってしまえば、あっという間の3時間。進行に目配せしながら、濃密なディスカッションを行う。宮本さんの報告では、今回のキーワードである「災間」が、人新世や戦間期、インターコロナという考え方と紐付けられ、語られた。自然現象(地震)と社会現象(震災)という分け方自体が、人新世では無効化するところまでいっている。なるほど、そうか。高森さんからは「渦中に、どう記録をとるのか?」という投げかけがあった。『震災後、地図を片手に歩きはじめる』に行き着くまでの記録の仕方を思い出しつつ、確かにいろいろあるなと思う。ディスカッションを通して、考えるべきことがクリアになり、たんまりと増える。初回から全力。
へとへとになる。高森さんは「あと30分あればよかったですね!」という。まだまだ体力が足りないのだろうか。でも、そこは目指すところではない気もする。届いたばかりのPROJECT ATAMIの令和3年7月豪雨アーティストチャリティーシャツを着て、本番にのぞむ。そのことを誰からも指摘されず、自分でも言いそびれる。たまに仕込むTシャツネタは、いまだかつてヒットしたことがない。それでも、きっとまた試してしまうのだろう。そんなこんなで7月が終わる。
東京都の新規感染者数は4058人で過去最多。各地で記録は更新。全国では12343人。これまた過去最多。秋葉原から足早に帰る。 

(つづく)

▼ 1年前は、どうだった?(2020年の日記から)

▼ Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021「2020年リレー日記」。1年前の7月の書き手は、大吹哲也さん(NPO法人いわて連携復興センター 常務理事/事務局長)→村上 慧さん(アーティスト)→村上しほりさん(都市史・建築史研究者)→きむらとしろうじんじん(美術家)さんでした。