表現すること
もうかなり以前のことだったが、たまたま見ていた番組で、ある女優さんがインタビューを受けていた。
「あなたの子どもにこれだけは身につけさせたいことは何ですか?」という質問に、
その女優さんは「表現力」と答えていた。
当時の私は、この人はいわゆる芸能人で、演じることを仕事としているので、表現することを大事に思っているのだなとなんとなく思っていた。
そして、もし私だったら、勤勉さや思いやり、協調性をあげるなぁと思った。
それから時は過ぎ、誰でも自分のことを発信できる時代になった今、あの女優さんが言っていた表現力という言葉が気になるようになってきた。
そう、表現力が大事というのは本当かもしれないと思うようになってきた。
表現力とは自分の感情や思考を、他者にわかりやすく伝える力のことをいう。
表現する方法は、演劇、絵画、演奏、文学に代表される芸術だけではなく、
普段の生活の中のでも、話す、文章を書く、動作、声、表情、モノづくりが表現することになる。
そして表現するということは、必ず自分以外の他者が存在する。その他者に自分が意図していることが伝わるかが重要になる。
私たちは、日常の生活で当たり前のように、たくさんの人と話したり、文章などの言葉やしぐさや表情などの行動で伝え、表現をしている。
表現する場も対面だったり、書類上だったり、オンラインだったり様々だ。
そこで分かることは、完全に表現することは本当に難しいことだ。
「あれっ?言ったよね」ということがよくあるし、文脈や行間の解釈の仕方が人によって違うことによるトラブルもある。
一生懸命に話して、相手も頷いたにも関わらず伝わっていないこともある。
もともと言葉ではないものを、言葉に置き換えそれでも言葉で表現しきれないものを行間を埋めるようにしぐさや表情などの行動で示すのだ。
その上、表現する人やそれを受けとる人の背景や環境、体調、性格によっても異なる。
それが表現することの難しいところであり、美しいところでもある。
表現力は人を動かす力だと思う。