#ネタバレ 映画「真夏のオリオン」
「真夏のオリオン」
2009年作品
ものの使い道はひとつではない
2009/6/16 17:23 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
20代のころ、星座で書いた恋文を、渡したことがあります。彼女は旅に出るのです。その旅行日の星座を便箋に書いて・・・オリオンも有ったかもしれません。そして、となりに彼女の名前も星座にデザインして・・・。
いきなり話が脱線してすみません。兄貴をダシにして、愛しい人に五線譜の恋文を渡した娘。兄貴は充分ダシに使えるのです。
兄貴だけではありません。ハーモニカはモールス信号の電鍵に、瀕死の友軍は重要情報の収集に、軍医は通訳に、そして遺体は、敵のかく乱に、また、恋文は敵味方・双方が人間性をなくさずに戦うための聖書に。遺体のボタンは、哀悼の気持ちを表すために、そして、かく乱を見破るために。人間魚雷は酸素ボンベに、敵のかく乱に・・・。
人間魚雷の乗組員の多くは人間魚雷の運転のみしか考えず、船長からの命令を待っていました。こんなことを書くと、また、何かの映画の時のように「不謹慎」だと言われそうですが、この映画はここへ行き着くのだと思います。企業では時々、与えられたことしかやらず、すんだら、新しい指示をしてくれないと動かない「指示待ち族」とかいう新人が居るようです。
しかし、それが船長の言うように一番もったいない。船、潜水艦は資金力の乏しい零細企業。その企業同士が知力をつくして戦います。ものの使い道はひとつではない、と知っている方が勝つのです。
二酸化炭素濃度が高い非常事態の中でも、炭酸ガスが入ったサイダーが気分をリフレッシュしてくれます。食事は気分をリラックスする薬にも使えます。
人間魚雷の乗組員は生きて日本に戻り、文字通り、死ぬ気で日本再建に精を出す道が待っていたのでした。
大変優れた映画だと思いました。潜水艦は二度ほど海底に落ち、そこから浮上します。さすが、ダブル・ボトムで上昇とは、御見それしました。
★★★★☆
追記
2009/6/17 8:31 by さくらんぼ
船長からの命令待ちは、別に人間魚雷の乗組員に限ったことではなく、兵士全員に言えることです。炊事係もそうですね。
しかし、この映画では出撃命令を求める人間魚雷の乗組員のシーンが複数回挿入され(死をひきのばされている彼らの憔悴も想像できる気がしますが)、ラストには拳銃で船長を脅してまで特攻を要求します。
これらから、この映画では「ものの使い道はひとつではない」という主題が「人間魚雷批判」へと向かっていたのだと感じられます。
そしてこの映画が現代の企業戦争を語っているのならば、人間魚雷を発射するということは、リストラを意味していると思われ、人間魚雷批判派はリストラ批判へと帰結するのです。
昨日NHKで、不況をビジネス・チャンスととらえ、従業員をリストラするどころか定期昇給までする中小企業が紹介されていました。好景気の時には、むやみに設備投資をするのではなく、逆に内部留保を増やし、そして不景気のときに吐き出すのだそうです。
松下幸之助氏の本などがバイブルの様でした。
この映画はCGだけでなく、往年の特撮ファンなら嬉しい、ミニチュアを使った撮影が行われているようでした。CGと違い、味わいのある特撮のぎこちなさは、もっと観たいと思いました。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)