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#ネタバレ 映画「幸福なラザロ」
「幸福なラザロ」
2018年作品
情報格差
2019/4/29 10:34 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
この映画「幸福なラザロ」は、リンゴを食べてエデンの園から追放された、人間たちの狼狽を描いていたのかもしれません。
映画の前半にある、ケータイが出てこなければ50年以上昔?と思うような田舎生活。農業をしているというツッコミは無しで、あれがエデンの園でしょう。仕事はきついけど、いきなりプロポーズのシーン(記号)から始まるぐらいに幸福でした。
そして、後半にある、都会に出てきた素朴な農民たちが、仕事を失い、文明にもついていけず、食うに困って(不幸な労働である)泥棒になってしまう顛末が、狼狽ですね。
そして主人公ラザロに至っては、あまりにも聖でありすぎて、一番俗に同化できず…。
リンゴはどこに出てきたのかと言えば、前半に村人たちが見つけた、森の向こうで怪しく光る「赤い光」がそうでしょう。あれはケータイなどの電波塔の光だったのです。そして、ケータイで警察を呼んだことで、すべてのエデンの均衡が壊れてしまいました。もちろん、領主による搾取は、映画にも描かれている通り、何十年も前に法律で禁止されましたが。
情報通信技術の発展が、時に人々を不幸にするという構図は、映画「モンタナの風に抱かれて」にも似ていました。
★★★☆
追記 ( 聖人ラザロ )
2019/4/29 22:37 by さくらんぼ
映画の中頃でしょうか。ラザロは足を滑らせ、崖から数十メートルも落下するのです。下は地面ですから、どう考えても即死のはず。
でも、気絶しただけで、しばらくすると無傷で起き上がります。あれは聖ラザロの死と復活ですね。
その後のラザロは歳を取りませんし、食事もしません。もう並みの人間ではないのですから。
はずかしながら、聖ラザロの事は、この映画を観るまで知りませんでした。事前にウィキペディアなどで学んでおくと、キリスト教世界の人に近い視点で、この作品が楽しめるのかもしれません。
追記Ⅱ ( 開放という名の追放 )
2019/4/30 9:51 by さくらんぼ
>リンゴはどこに出てきたのかと言えば、前半に村人たちが見つけた、森の向こうで怪しく光る「赤い光」がそうでしょう。あれはケータイなどの電波塔の光だったのです。そして、ケータイで警察を呼んだことで、すべてのエデンの均衡が壊れてしまいました。もちろん、領主による搾取は、映画にも描かれている通り、何十年も前に法律で禁止されましたが。
警察が農民たちを開放しようと、村はずれの川を渡そうとしますが、恐れて渡りません。足首ほどの深さしかないのに、(かつて洪水があったらしく)溺れると恐れているのです。彼らにとっては、ある意味、結界なのでしょう。
すると女性警察官が、「ほら、だいじょうぶでしょ!」と言って渡ってみせます。
それを見て、恐る恐る渡りだした農民たち。
ヘビとイブはどこにいたのかと言うと、川がヘビであり、女性警察官がイブだったのでしょう。
そして禁断の果実(善悪の知識の木の果実)は、(領主による搾取が違法になった事を知ること)へ、繋がっているのかもしれません。
追記Ⅲ ( 女は電気をつけました。)
2019/4/30 10:00 by さくらんぼ
リンゴ(光)は冒頭にも出てきました。
夜、窓の外で、求愛の歌を歌う男に応えるため、(ちょうど切れているみたいで)女は隣家から電球を借ります。
電気をつけなければ、きっとNO(門前払い)のサインなんでしょうね。
でも、女は電気をつけました。
これも、「女が男にリンゴを食べさせた」という記号なのでしょう。
追記Ⅳ ( 映画「チャンス」 )
2019/5/2 17:48 by さくらんぼ
この映画「幸福なラザロ」を観ると、「映画「チャンス」への理解も深まりそうです。よろしければ、あちらのレビューもご覧ください。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)