#ネタバレ 映画「青くて痛くて脆い」
「青くて痛くて脆い」
2020年作品
たこ焼きのキモはタコである
2020/9/1 8:41 by さくらんぼ
( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )
これは、おじさんの鑑賞にも違和感のない硬派の青春ドラマです。
内向的な大学生の主人公・田端楓(吉沢亮さん)は、まるで自画像(外見は違いますよ)を見ているように身につまされました。
そして、外交的で空気の読めないヒロイン・秋好寿乃(杉咲花さん)のファンだったことを、改めて自覚した一本になりました。
秋好寿乃が口をとんがらせて田端楓に不満を言うシーンはずっと見ていたいです。もしかしたらマゾっ気があるかも。
★★★★
追記 ( 「ゴジラ」も成長のために形態が変わる )
2020/9/1 9:10 by さくらんぼ
主人公たちは「モアイ」と名づけた「秘密結社」みたいなサークルを作りました。
( 私も青春時代に職場でサークルを作った経験があります。活動資金として毎月会費を集めていましたが、「お金(会員の期待)がたまると容易に解散できなくなる」との助言を先輩から受け、行事を一回するごとに残金は会員に還付するようにしていました。)
映画の「秘密結社」は自己増殖を続け、当初とは違った形態になっていきました。
私の知人もサークルを作りましたが、10年ぐらいで意図せぬ形態を示したので、苦労の末、解散させました。
そんな身近な事例も、映画の中の話をリアルに感じさせたのです。
追記Ⅱ ( たこ焼きのキモはタコである )
2020/9/1 9:28 by さくらんぼ
屋台でメンバーがたこ焼きを作ったら、うまくできずに形が壊れてしました。それを見た秋好寿乃が、飛び出したタコだけを爪楊枝にさし、通りがかった別のメンバーに食べさせるエピソードがありました。メンバーは美味しいと喜んでくれました。
たこ焼きの「タコ」は、ものごとの「目的」の記号だったのでしょう。
「目的」達成のためには色々な「手段」があるはずです。
秋好寿乃はそれを知っていましたが、田端楓は「手段」に重きを置いていました。
追記Ⅲ ( たこ焼きのキモはタコである② )
2020/9/1 9:42 by さくらんぼ
この映画「青くて痛くて脆い」は、(核兵器の映画)映画「ジョーンの秘密」にも繋がっていきます。
あちらの私のレビューにも「目的」と「手段」の話が書いてありますので、ぜひご覧ください。
秋好寿乃の終着駅は、映画「ジョーンの秘密」だとも言えるのかもしれません。
追記Ⅳ ( 大人は利用する存在 )
2020/9/1 11:09 by さくらんぼ
学生の頃、「原稿用紙10枚でなにか論文を書け」という宿題が出され、当時、大きな問題だった「公害」について書いたことがあります。
とりあえず本を一冊読んで書きましたが、若かった私は「注意しても公害を出す会社はつぶせばよい」と書いた覚えがあります。
当時は真顔でしたが、すぐに、「社員が失業して生活に困る」とか、「その会社が作っている工業製品がなくなったら、社員以外にも困る人が出てくる可能性がある」などと、少しは高い視点で考えられるようになりました。しかし、「つぶせばよい」はあまりにも青く、短絡的で恥ずかしい答えですね。
秋好寿乃は大学の講義で「戦争をなくすには、皆が『せ~の』でいっせいに武器を下ろせば良い」と、真顔で言いました。
先生は苦笑いしながら「…それは理想論です」と。
私はあのシーンから「つぶせばよい」を思い出し苦笑いしました。
そんな秋好寿乃が作った「秘密結社・モアイ」は、やがて企業戦士たちも先生として迎え、自分たちの疑問をぶつけて、討論する場を作るようになりました。
「机上の空論 」 → 「現実的な議論」への進化ですね。
しかし、それは「就職活動のため」だと誤解され、周囲から軽蔑されることになったのです。
その昔、フォークソングの全盛期、ぼそぼそと歌っている分には神様あつかいされても、商業的に音楽を売り出そうとする気配を見せると、「堕落だ」とファンにそっぽを向かれた時代があったことを思い出しました。
しかし、本当に良い歌なら、ぼそぼそ歌っているのはもったいないのです。その歌を世界の人が欲しがっているはずですから。
社会人の知恵、大人の知恵も、悪いことばかりではありません。
大きなことを成し遂げようとするならば、大勢の人を巻き込まないと。
追記Ⅴ ( 政(まつりごと) )
2020/9/1 16:05 by さくらんぼ
「政治・政局」のことを良く知らない私が言うのもなんですが、「戦争を無くす」というセリフとか、とって付けたような万国旗のシーンが出てきて「日の丸と中国の国旗が並んでいたり」するさまからは、その言葉が連想されたのも確かです。
追記Ⅵ ( たこ焼きのキモはタコである③ )
2020/9/2 8:20 by さくらんぼ
チラシを見ると「青くて丸いもの」が見えました。
何かと思ったら田端楓のシルエットですね。「青くて痛くて脆い」というのは彼の事なのでしょう。
そして脆い「タコ焼き」も。
しかし、脆くてもキモであるタコがしっかりしていれば、爪楊枝にさして移植もできるわけです。
このタコは秋好寿乃の思想であり、恋する田端楓にとっては秋好寿乃自身でもあるのでしょう。
映画のラスト、崩れたたこ焼きである田端楓が、再生のためタコを求めて走っていきましたね。
追記Ⅶ ( 「引き分け」か )
2020/9/3 8:51 by さくらんぼ
秋好寿乃が田端楓に食堂で急接近するエピソード。
内気な田端楓から見れば秋好寿乃の「目的」は恋愛で、「手段」が秘密結社・モアイだと思っても不思議はありません。きっと私でも勘違いします。
しかし、モアイが出来上がると間もなく、秋好寿乃は別の会員の男と付き合うようになったのです(一年で別れましたが)。
実は、秋好寿乃の目的はモアイで、手段が同志を作ることだったのです。だから「同志」として田端楓に急接近し、恋愛は別の男としたのです。
でも、目的と手段を誤解していた田端楓は裏切り行為だと激怒し、引き留める秋好寿乃を振り切ってモアイを去っていきました。
よくあると言えば、ありそうな男女の勘違いですが、後日、田端楓が自分に惚れていたことを知った秋好寿乃は、田端楓に「…気持ち悪い」と言い放ったのです。
「気持ち悪い」は言いすぎだと思いました。まるで自分が言われたように刺さりました。同じ断るにしてももっと穏便な表現があると思うのです。別の惑星に移住するわけではないですし、これからもどこですれ違うかもしれないのですから。
しかし、よく考えると「気持ち悪い」の真意は別にあり、あれは告白に対する単純な返事ではなく、モアイをつぶそうと田端楓がネットに情報を流したことへの返礼でもあったのでしょう。確かにあれは褒められた行為ではありませんから。
( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)