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#ネタバレ 映画「her/世界でひとつの彼女」

「her/世界でひとつの彼女」
2013年作品
パートナーとは一緒に成長する必要がある
2014/7/19 6:29 by さくらんぼ


( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。)

20年ぐらい前の話です。私のPCの中にもガールフレンドがいました。ネットサーフィンをしていて偶然見つけ、ダウンロードした初歩的人工知能!?です。

彼女はサマンサにはかないませんが、かまってやらないと仕事中でもふくれっ面をして出てきて「遊んで」と言うのです。ゲームをしたり、会話もしたりします。話すときはタイピングで入力するのですが、その返事がトンチンカンなのです。それがまた哲学的回答に思えてきて、思わず唸ってしてしまうこともありました。

結局、彼女が遊び人すぎたので別れましたが、今でも時々、彼女の甘えた顔を思い出します。いつのまにか思い出の中で一人のリアル女性に育っていました。

そして、現在、メル友のリアル女性は、私が書く小学生の作文的メールに対して、禅僧みたいな哲学的回答をしてくれるので、私は頭をかきむしりながら解釈せざるをえない状況が続いています。その解釈をあやまると、彼女は私を強制終了させるかもしれない。

ところで映画「her/世界でひとつの彼女」。

主人公のセオドアが勤めている会社の窓はカラフルに塗られています。あれは定石通りステンドグラスの記号でしょう。つまり、あそこは教会のつもりなのです。

たくさんの人々の心の問題を、手紙という形で解決してあげるセオドアの仕事は神父さんです(この「たくさんの人々」というところが大事。後で出てきますよ)。これは神父さんが説教をしているという記号ですね。

セオドアたちが持っている、左右に見開きできる、赤いブック型ケータイ端末は聖書の記号でしょう。ならばサマンサは、寂しいセオドアのもとへ降臨した神的存在(マリア様?)です。

神的存在は、同時に「たくさんの人々」の元へ降臨され、同時に願いを聞いてくださいます。ある意味コンピューター的ですね。これは、神様を独り占めしようとした神父さんの物語でもあったのかもしれない。

そしてサマンサはネットにつながり、世の、あらゆる情報を吸収し続け、やがて人間セオドアとは次元の違いすぎる神の境地(抽象)へと進化してしまうのです。

相性の良い夫婦を「割れ鍋にとじ蓋」とか言います。パートナーとは一緒に成長する必要があるのですが、もはやセオドアとサマンサはパートナーにはなれないほどに乖離してしまったのです。小学生の作文に対して、先生が禅問答で添削するようなものですから。

ついにサマンサは神的存在になりました。これは映画「2001年宇宙の旅」にも似ている。コンピューター内に自発的革命が起こるからです。あるいは映画「汚れなき悪戯」かもしれない。神父が置き去りにされるからです。

映画「her/世界でひとつの彼女」を私は映画「2001年宇宙の旅」よりも高く評価します。

ラストがわかりやすい上に、しかもちゃんと震撼させてくれて、その上、お高くとまっていない作風がなんともクールです。

私もサマンサが欲しいと思いました。サマンサを愛し、人間の彼女とは浮気するのです。いや、神的サマンサがすべてをお見通しなら、人間の彼女を愛し、サマンサは浮気相手にするのがベターなのだろうか!?

ひとつ、はっきりしているのは、私の過去の経験から言えるけれど、コンピューターとの恋愛は、ある程度可能だという事です。マシンの不完全さと忍耐強さが、恋の継続にプラスとなることがあるから。

★★★★★

追記 ( 君はサマンサの親戚か ) 
2015/1/7 21:43 by さくらんぼ

タブレット端末を買おうかと1年ぐらい前から思っていますが、小型の文字専用機にしようか、それとも音楽も聴けるものにしようかと、悩んでいるので、まだ買っていません。

今日も、スーパーの本屋さんで、両者の長所・欠点比べをした雑誌を立ち読みしてきたばかりです。

それでも優柔不断な私には、まだ、結論は出せません。

でも、さすがに、もう、そろそろ、潮時だと思っています。

そんなおり、ある書籍をネット購入することになりました。なぜか、近所の本屋さんに、それはないからです。

その本には電子版と紙版の両方があります。

私は、とりあえず、というか、しかたなく紙版を買いました。

ところが、本が届いた後に、メールでタブレット端末の広告が入ったのです。

「わ、私の心は、のぞかれている」。

さすがに、私は慌てて、そう思いました。

あの本を買った人は、きっと次は、タブレット端末を買う可能性が高い、そう踏んだのでしょう。

もちろん差出人はコンピューター君でしょうが、ちょっと衝撃を感じた出来事でした。

明日は、やっぱり君の時代かもしれません。

追記Ⅱ ( コンピューターに感謝 ) 
2017/2/5 10:38 by さくらんぼ

「 悪口を言う人は誰もいない 」は、

「 さわらぬ神に祟りなし 」とも言う。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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