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#ネタバレ TV「花子とアン」

「花子とアン」
祖父の非識字と、花子をめぐっての三角関係
2024.1.7

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

(2018.11.6)

「赤毛のアン」の翻訳者の半生をモチーフとした、NHK朝ドラ「花子とアン」のお話です。

花子の祖父(石橋蓮司さん)は非識字者に近い状態でした。昔の田舎ですから、食っていくのに精いっぱいで、学問などさせてもらえなかったのでしょう。だから、祖父は家長の威厳を保つために、それを悟られないようにし、何か話しかけられても「そうさなぁ~」と言うばかりで、あまり自分の意見は言わないようになったのだと思います。

ところが、養子に来た花子の父(伊原剛志さん)は、普通に読み書きができる男でした。祖父はその養子にも、非識字者の秘密を守ろうと距離を置きました。それを、自分が嫌われていると誤解した養子は、同居が辛くて行商に出るようになったのだと思います。そうして、ますます見聞を広めた。

そのせいもあってか、養子は娘の花子については、教育を惜しみませんでした。そして全寮制の女学校に入れたのです。

でも、全寮制の女学校に入れたのは、かわいい娘をめぐっての、祖父と養子の三角関係で、祖父から花子を引き離すためでもあったのでしょうか。そんな気持ちが一滴ぐらい混ざっていても、おかしくない様な気もします。

(2021.2.18)

余談ですが、大人になって振り返ると、両親は私にだけ教育熱心でした。

両親は口にこそ出しませんが、「花子とアン」のような時代(つまり、貧乏人の子だくさんで、子ども全員に教育を施すことが難しいので、誰か一人だけに施し、ファミリーのリーダーとしての責任を与え、育てようとした時代)がまだ頭の中に残っていて、自分たちもそうしようとしていた節があります。口に出さなかったのは隠していたのではなく、両親の中では言うまでもない常識だったからでしょう。

でも、子どもの私はそんな常識を知りませんし、時代も変わりつつありました。だから、私にはまったくリーダーとしての自覚はなく、それ以前に、勉強嫌いで、成績も良くありませんでした。

だから両親は私に対して不機嫌だったのだと(養子にもいかず、逆にリーダーの自覚もないと)、大人になって「花子とアン」みたいなドラマを観て、なんとなく感じているのです。

(これは2018.11.6以降のパレット記事を、抜粋して加筆再掲したものです。)

追記 2024.8.22 ( 映画「きみの瞳(め)が問いかけている」の追記に余談として書いてあったので移記 )

内容が本文と重複する部分もありますが、とりあえず、そのまま移記しました。ご容赦ください。

追記Ⅸ ( NHK・朝ドラ「花子とアン」 )
2021/1/14 9:26 by さくらんぼ

(  以下、「花子とアン」のネタバレです。 )

ヒロイン・安東はな(吉高由里子さん)さんが、当時は難しかった「女性の学問」を、周囲の尽力もあって修め、出世していく様を描いた作品です。

しかし、ここには隠れた哀しき戦いがあって、安東はなの父・安東吉平(伊原剛志さん)と、祖父・安東周造(石橋蓮司さん)の、「学の差」による確執です。

安東周造は文盲のようです。他の朝ドラにも出てくるように、昔の田舎では珍しくなかったのです。

そんな彼は、普通に読み書きができる(確か婿養子)の安東吉平を、己の威厳を強めて精神的に遠ざけようとしたようです。自分が文盲であることを知られてバカにされまいとしたのだと思います。

安東周造の口癖である「そうさなぁ」。彼が何を話しかけられても、否定とも肯定ともつかないこの微妙な相づちで返すのは、「赤毛のアン」の中にも似たようなセリフがあって、オマージュの記号だと言われているようですが、「花子とアン」では、安東周造が己の無学を知られたくないために出した、苦肉の策の意味もあるのでしょう。

そんな事情がわからぬ安東吉平は、嫌われていると思い、失意の中、家に居づらくなって行商の世界に飛び出します。そして日本中を行脚し、ますます見聞を深めていきます。

家に残った幼き日のヒロイン・安東はなは、おじいちゃん子になり安東周造が溺愛します。

ここに、安東はなをめぐって、祖父と父との、静かで過激な三角関係の戦いが起こってしまうのです。一件落着とはいきませんでした。

遠くからその嫉妬に耐えられなくなった安東吉平は、才能ある安東はなに学問を修めさせるという口実で、安東はなを安東周造から隔離し、全寮制の都会の学校に入れるのです。もちろん安東はなは才女であり、その価値があるのは言うまでもありませんが。

これが、おそらく安東吉平自身も気づいていない三角関係の戦いなのです。

再放送をご覧になる時には、その辺りを注視するのも面白いかもしれませんね。

追記

ヒロイン・安東はなをめぐる、父・安東吉平と祖父・安東周造の、秘められた三角関係のワンピースは、きっと、それだけにとどまらず、(定石から言えば)相似形であろう全体像へと進んでいくような気がします。気がすると書いたのは細部を忘れたからです。

ここで、以前から気になっていた本名「はな」と、通名「花子」の謎が解けたような気がしました。

安東はなをめぐって「はな」と「花子」は三角関係だったのです。

追記2

それは、どこかで「赤毛のアン」にもつながっているのでしょう。

そして、なぜ今この作品が選ばれたのかと言えば、当然私の知らない事情もあるはずですが、ふと、コロナ過でのハンマー&ダンスと、人との三角関係を連想したことも確かです。

追記11 ( NHK・朝ドラ「花子とアン」② )
2021/2/20 10:21 by さくらんぼ

(  映画「ブラザーフッド」のネタバレにも触れています。 )

NHK朝ドラ「花子とアン」、先日の回では、花子が何年かぶりに里帰りするエピソードがありました。それは、上流階級の子女が集まる学校で長く異分子あつかいされた花子にとって、久しぶりの喜びのはずでした。

しかし、実家では、家族は相変わらずボロを着て極貧生活をしていました。そこに降り立った、すっかり良家のお嬢様に変身して、きれいな着物を着た花子。

花子には、学校どころか実家に帰っても、居場所が消えていたのです。

さらに妹が、進学どころか(恥ずかしかったのでしょうか、花子には内緒で)女工として働きに出ることを知ります。当時の女工は「女工哀史」という言葉もあるほど過酷で、現在の工場従業員とは別のものです。

やっと、「無学な極貧家族は恥ずべき存在ではなく、その家族の大きな犠牲の上に自分がある」ことを知った花子は、世間知らずな自分を恥じ、「学校をやめて働く」と言い出します。

しかし、それを止めたのは、妹も含めた家族全員でした。

花子は「家族の希望」なのです。

今でこそ子供たち全員に大学教育を受けさせることは珍しくありません。あまり成績の良くない子供でも、奨学金という名の多額の借金を背負わせ、有名ではない大学に通わせるのは普通の事でしょう。

しかし昔は、少なくとも、私の子供のころぐらいまでは、経済的な問題で「子だくさんでも大学教育は一家に一人」という家庭もあったと思います。

そして、その一人は一家の希望になるのです。だから勉学に励みます。

そして、生涯にわたって、リーダーとして家族の悩みごとの相談に乗るのです。そんな優秀な者が一人でもいると、家族は外部からバカにされたり騙されたりする心配も少なくなるはずです。

さらに、花子が仕事で大成功し、お金をたくさん儲ければ、家族のめんどうも可能な限り見たはずです。貧しい諸外国でもそのような構図はあるはずです。

その使命のために「家族で一人は成功しなければいけなかった」のでしょう。日本だけでなく、韓国映画の良作「ブラザーフッド」にも、そんな兄弟が描かれていましたね。

「ブラザーフッド」は、まだその自覚がない秀才の弟と、自覚がある凡人の兄が、文字通り戦って、理解しあうまでの物語でした。

追記12 ( NHK・朝ドラ「花子とアン」③ )
2021/2/20 10:24 by さくらんぼ

ある日のこと、花子は後輩の葉山蓮子(仲間由紀恵さん)から薬だと騙されてワインをご馳走になります。

それが酒だとは知らず、酔っぱらって騒いでしまった花子は、校長たちに見つかり、重い校則違反をしたとして退学させられようとしています。

しかし、葉山蓮子は「花子が盗み飲みした」と、校長たちの前で裏切りの証言をしたのです。

噂で花子が退学させられそうだと知った父・安東吉平(伊原剛志さん)は、駆けつけて花子をぶちます。生れてはじめてぶったのです。そして泣きます。それぐらいの一家の危機です。

そして、二人で校長に土下座をして許しを請いました。

校長はどう処分するか、しばらく考えるようです。

すでに花子はあきらめかけていました。

そこへ届いたのは妹・安東かよ(黒木華さん)からの手紙です。

女工として働いているかよは、朝から晩まで働いて、「寝ることが一番の楽しみ」だという生活の中、「お姉さんの事を考えると元気が出る」と、相変わらず花子を一家の希望と信じ頑張っているのです。

それを知った花子は「(私一人の問題ではない)このまま退学になるわけにはいかない」と、葉山蓮子の部屋を訪ねて裏切り行為への抗議をするのです。

ここにも、花子が「一家の希望」としての責任を全うしようとする姿が描かれていましたね。


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。
更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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