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#ネタバレ 映画 「ストックホルムでワルツを」

「ストックホルムでワルツを」
要件がないと電話もかけられない
2015-01-06 21:40byさくらんぼ

( 引用している他の作品も含め、私のレビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

ブログでも、映画レビューでもそうですが、今日は気分爽快で、書く気満々だと言っても、ネタがないと書けませんね。

有名な作家先生でも、ネタ切れには頭をかきむしって苦労される、はず。

もちろん、恋人たちなどで、つながっているだけでも嬉しい人、もいるでしょうが、それも立派な要件です。

ところで映画「ストックホルムでワルツを」に出てくる、電話交換手のモニカは、沢山の回線をつないでいるうちに、自分もこの回線の先にある夢を見に行ってみたいと思いだしたんですね。

ラジオを聴いている人が、レコードを聴いている人が、自分の目でも見てみたいと思うのと同じ。

それでモニカは、ネタ(オリジナリティー)がないのに、書きに(歌いに)行っちゃったんです。

当然に書けませんし、向こう様はモノマネは求めていません。だから、受け入れてもらえなかった。

さらには、黒人白人の逆差別的なものもあったみたい。

でもモニカは一念発起して再チャレンジします。

当時はタブーだった母国語を武器にして。

そんなモニカの目的地はビル・エヴァンス。

この目的地選びのセンスも大事。

モニカはそれにも秀でていた。

ラストの結婚式では、新婦なのに式を仕切ってやり直しの号令をかけていたけれど、たいしたものです。

ところで私も、ビルと言う、あまりにも有名なジャズピアニストのことは以前から知っていました。

CDも買い、良く聴いていました。

しかし、正直解らなかった。

彼のアドリブが理解できない(面白くない)のです。

当時の私は、ぶっ飛んだ作品も好きできしたが、ことジャズピアノについては、保守的で、いわゆるカクテルピアノ系のムーディーな音が好きでした。

しかし、ビルのアドリブ(モード奏法)は、ゴツゴツとして、又、間合いに富み、色はブルー。まるで青い炎がチロチロと静かに燃えている様にクールな音楽なのです。写真に例えるとネガフィルムを見ている様な、すべてを裏切っていきながら、しかし、すべてが完成されているという「どや顔」的な感じ。ある意味、異様、異彩。そこに媚びた愛想笑いはありません。マイルスも一部、似たような事を言っていたらしいですが。コピペではありません。

私には、そのオリジナリティーが受け入れられなかった。

でも、一年間リスニングを中断してから、再び聴き始めたら、これが良いのです、解るのです、沁みるのですよ。

やはりビルはクールな天才でした。

彼のピアノにはクラシックの素養があることは良く知られていますが、クラシックとジャズの融合が高度な次元で行われた音なのかもしれません。

私はクラシック音楽も好きです。あの音には、おおむねサラダの味がします。ドレッシングも何もかけていないレタスの、わずかにほろ苦く、青臭い風味がします。

この味わいからアクを取り除き、さらにクールにするとビルに近づく。もちろん、その音陰には優しさもある。

どなたかがビルの音を、ハードボイルドだとも評していましたが、今は、私にもそう思えます。

北欧生まれのモニカがオリジナリティーを出したとき、それは白人同士でもあるビルのサウンドにもマッチしたのでしょう。

そして音色的には寒色系のビルのサウンドに、暖色系のモニカの歌声をのせることで、さらに苺大福的美味になったのでしょう。

このセンスは、映画「冬の華」で、ブルー系のクロード・チアリのサウンドを背景に使い、さらに、上から人物に見立てた赤いチャイコフスキーの音を乗せることで、一幅のシャガールの絵画を描いたことにも似ています。

だから、モニカはビルを、ビルはモニカを受け入れました。幸福な相思相愛。一流は一流を知るのでしょう。

ただ、このモニカという歌手の歌声は、私の好みではないので(好みはダイナショア様)今ひとつ、映画に心が動かされなかったのが残念でした。

「ダイナの生涯」、今度は、そんな映画も観たいです。

★★★☆


(  最後までお読みいただき、ありがとうございました。

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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